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続・ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

大トリを飾るブリン・ターフェル! バーディー・ラッシュでフィニッシュ!?

大トリを飾るブリン・ターフェル! バーディー・ラッシュでフィニッシュ!?


※この公演は中止になりました。詳細はこちら

 寒かったり暑かったりが極端な今年の東京の春。上野公園の木々は日ごとに鮮やかな緑に変わり、東京・春・音楽祭も終盤戦に突入しています。

 さまざまな理由によるいくつかの中止公演はありましたが、水際対策の緩和もあってほとんどの海外演奏家の皆さんが無事に公演を行なうことができました。感染状況はまだまだ楽観できませんが、コロナ前の音楽祭の形が少しずつ戻ってきていることを、うれしく噛み締めています。
 今年の東京・春・音楽祭のフィナーレを飾るのは、オペラ界のスター、ブリン・ターフェルさんです。4月16日(土)のリサイタルでドイツと英国の歌曲を歌ったあと、音楽祭最終日の「Opera Night」では、沼尻竜典さん指揮の東京交響楽団とともに、ワーグナーからミュージカルまで、ターフェルさんらしい華やかなプログラムを披露してくれます。
 このプログラム、変化に富んでいかにも楽しげなのですが、私たちにとっては、オーケストラといろいろ相談が必要なプログラムでもあります。
 ひとつはオーケストラの編成です。たとえばワーグナーで8本のホルンが必要だったり、クルト・ヴァイルだけにサクソフォンのパートがあったり。曲目が決まるのが予定より遅れたこともあって、東響さんに急いで手配をお願いしました。
 もうひとつは楽譜の入手です。定番のオーケストラ曲なら東響さんが持っているアーカイブもあるのですが、オペラやミュージカルだとそうはいきません。なかには入手困難だったり、著作権の関係で有料のレンタルが義務付けられている作品もあります。これも東響さんのお力を借りながら、慌てて手配を進めました。ところが! そこへターフェルさんのマネージャーから連絡が。
「楽譜ならあるよ」
 えー! 早く言ってよ~。心の中で松重豊さんのCMばりに愚痴をこぼしながら詳しく聞いてみると……。
 ブリン・ターフェルさんは名門ドイツ・グラモフォンから、何枚ものアルバムをリリースしています。今回のプログラムも、これまでのアルバムに含まれている曲目が大半なのですが、そのレコーディングや、ほかのライヴで使った楽譜を管理しているライブラリアンがロンドンにいるのだそうです。その楽譜は、一般的な編成のオーケストラで演奏できるようにアレンジされているもので、8本のホルンは要らないし、サックスのパートも他の楽器に置き換えられているとのこと。レコーディングは、必ずしもオリジナルの編成で演奏していないのですね。
 通常、ライブラリアンというのはオーケストラや劇場に所属する仕事ですが、ターフェルさんのライブラリアンは独立した存在で、ターフェルさんだけでなく、他のアーティストの仕事もしているのだそうです。そういうやり方があるのですね。初めて聞きました。私たちも今度相談してみようっと。
 これで編成の問題も楽譜の問題も解決!と胸を撫でおろしているところへ、再びマネージャー氏。
「でも、そのライブラリアン、明後日から休暇を取るって言ってたから、早く連絡したほうがいいよ」
 早く言ってよ~。
 そんな小さなバタバタを経て、楽譜も無事に到着。公演が待ち遠しいです。
 ターフェルさんといえば、2019年の東京春祭ワーグナー・シリーズ《さまよえるオランダ人》での圧倒的な歌声も忘れられませんが、その来日時のエピソードをひとつ。
 英国ウェールズ出身のターフェルさんは、大のゴルフ好きです。《オランダ人》の時にも、本番の合間に実行委員長の鈴木と東京のコースでラウンドを楽しんでいました。実はその来日の際、ヒースロー空港から電話があったのです。
「シューズを忘れた!」
 190センチを超える巨躯のターフェルさんだけに、足のサイズも大きくて、イギリス表記でUK13。日本サイズで言うとおよそ32センチです。日本ではなかなか手に入りません。スタッフ総出で専門店に何軒も電話してようやくゲット。なんとかプレイ日に間に合いました。
 今回はスケジュールの都合でゴルフはできないそうですが、日本では売ってないので、今度来る時は靴も忘れないでね。ブリン!
 楽しいことを考えるのが大好きなターフェルさん。このコンサートもフィナーレらしい華やかな雰囲気にしたいと、どんな演出が可能か、現在各方面と相談中です。厄除けになりそうなぐらいのパワーと人間味あふれるターフェルさんの歌を聴いて、今年の春を締めくくりましょう!

©︎Mitch Jenkins/DG



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