JOURNAL

続・ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

どうなる?水際対策──ムーティは「心配するな」と力強く

どうなる?水際対策──ムーティは「心配するな」と力強く


東京・春・音楽祭2022の開幕まであとおよそ2ヶ月。準備作業もいよいよ本格化し始めました。暦のうえでもまだまだ冬真っ盛りなのに、毎年この時期は仕事が急速にあわただしくなり、音楽祭の春が一日ずつ近づいてくる実感にソワソワする季節です。コロナ禍の困難な状況はいまだ予断を許しませんが、最高の音楽を一人でも多くのみなさまと分かち合えるよう、スタッフ一丸となって開幕に向かってまいります。その舞台裏を、昨年に続いて東京・千代田区富士見の実行委員会事務局からお届けします。

 1月中旬現在、最も気がかりなのは、2月末まで延長されている外国人の新規入国停止措置がいつまで続くのかという問題です。昨年、マエストロ・リッカルド・ムーティの入国がぎりぎりの綱渡りで実現した経緯については、この「ダイアリー」でもお伝えしました。当初はどの機関が交渉窓口なのかさえも判然としなかったそのときに比べると、昨年の秋以降、政府側のシステムがかなり構築されつつあるような気がしています。一方、ホールやオーケストラなど興行側も、互いに情報を共有しながら一体となって担当省庁と協議する態勢が整ってきており、そんな仲間の存在を心強く感じます。

 しかし、今年の音楽祭で最初にお迎えする予定の外国人演奏家は、3月18、19日の開幕公演で東京春祭オーケストラを指揮する、そのマエストロ・ムーティなのです。万が一を考えるとたいへん不安にならざるを得ませんが、マエストロからは「わたしは絶対に東京に行く!」と頼もしい宣言がありました。

 もちろんマエストロ自身が決められることでありませんけれども、昨年、「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 ヴェルディ《マクベス》」とオーケストラ公演を、2度目と3度目の緊急事態宣言の谷間にすっぽりとはまるように無事にやり切っていったマエストロだけに、なにか「持っている」ことを信じたいと思います。

 昨年11月にはウィーン・フィルに同行して再度来日したマエストロ・ムーティ。じつはその時点で東京春祭オーケストラとの曲目は決まっていませんでした。開催概要の発表も迫っていましたし、曲目によってはオーケストラの編成も変わってきますから、メンバー確保のためにも、一日も早く曲を決めてもらわなければなりません。

 しかしウィーン・フィルは「バブル方式」での特別措置による入国だったため、14日以上経たなければ直接面会することはできません。こちらとしてはオンライン・ミーティングでも構わなかったのですが、連日の公演のお疲れもあったようで、結局「東京では、細かい打ち合わせはできない。12月にミラノへ来なさい」と言われてしまいました。この年は、本国イタリアでの「イタリア・オペラ・アカデミー」が、本拠地のラヴェンナでなくミラノでの開催だったのです。

ミラノで開催されたリッカルド・ムーティ、イタリア・オペラ・アカデミー

 11月半ばといえば日本では感染状況が比較的落ち着いていた時期。直接会えるのならばと、事務局長が仕事の予定を調整してミラノへ飛ぶことを決めました。すぐに飛行機やホテルを予約し、文化庁に申請して、帰国後の隔離待機期間を3日間に短縮してもらう許諾も得て、11月29日(月)の朝にはその証明書がメールで送られてきたのです。ところが──。

 海外でのオミクロン株の感染拡大を受けて、政府が水際対策の強化を発表したのがまさにその日。全世界からの外国人の入国停止と併せて、日本人帰国者の隔離措置も厳格化され、待機期間の短縮は認めないというルールが、翌日からすぐに適用されることになってしまいました。

 文化庁も大慌てだったのでしょう。同じ日の午後に「今朝送った証明書は無効です」という知らせが届きました。まさしく朝令暮改ですが、仕方ありません。

 結局イタリアには行けず、ミラノ在住の田口道子さんに仲立ちしてもらって必要なことを決めることになりました。田口さんは、東京・春・音楽祭もいつもたいへんお世話になっている、マエストロの信頼も絶大な頼もしい存在です。

 その際にマエストロ・ムーティが力強く宣言してくれたのが「絶対に行く!」でした。
「東京春祭オーケストラと演奏することは、わたしの中でも非常にプライオリティが高い仕事だ。日本には絶対に行く。心配するな」

 昨年末に発表したとおり、曲目もモーツァルト&シューベルトの理想的なプログラムに決定。残念ながら今年は「イタリア・オペラ・アカデミー」の開催はありませんが、シンフォニーの分野でのマエストロ・ムーティの二大主要レパートリーであるモーツァルト&シューベルトを、安心安全にたっぷりとお楽しみいただけるよう、慎重に準備を進めているところです。ご期待ください。



東京・春・音楽祭を応援しませんか

Copyrighted Image