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続・ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

追悼・公式フォトグラファー青柳さん 安らかにお眠りください

追悼・公式フォトグラファー青柳さん 安らかにお眠りください

東京・春・音楽祭2022の開幕まであとおよそ1ヶ月。コロナ禍の困難な状況はいまだ予断を許しませんが、最高の音楽を一人でも多くのみなさまと分かち合えるよう、スタッフ一丸となって開幕に向かってまいります。その舞台裏を、昨年に続いて東京・千代田区富士見の実行委員会事務局からお届けします。

 開幕へ向けての準備に拍車がかかる東京・春・音楽祭。各公演の制作と並行して、音楽祭を盛り上げるための広報活動も大事な仕事です。新聞・雑誌など各メディアへのプロモーションや取材対応。ちらし・ポスターやバナーなど広告資材の作成。分厚い公式プログラムの編集。ホームページやSNSの更新。メールニュースの配信……。時節柄、リモートも駆使しながら、毎日何本もの打ち合わせが続いています。

 その多くの場面でフル活用されるのが、過去の公演の記録写真です。東京・春・音楽祭では、すべての公演の様子を数人の公式フォトグラファーが手分けして撮影しています。前身である「東京のオペラの森」が「東京・春・音楽祭」として新たなスタートを切った2009年以来、ずっと音楽祭を撮り続けてくれたカメラマンが青柳聡さんでした。昨年末、その青柳さんの突然の訃報が届きました。

 青柳さんは、コンサートの舞台写真や音楽家のポートレイト、新聞・雑誌の取材写真などで活躍した、クラシック音楽専門のカメラマン。最初の数年の東京・春・音楽祭では、ほぼすべての公演を青柳さん一人で撮ってもらっていました。午後に文化会館の小ホールでリサイタルを撮り、街に出て「桜の街の音楽会」でシャッターを切ってから大ホールに戻ってワーグナーをカメラに収める。その頃を振り返って、「若いからできたんだよね」と笑っていたものです。最近では、新たに仲間に加わったカメラマンさんに撮影位置のアドバイスをしたり、公式写真班をまとめてくれる頼もしい存在でした。

2021年4月22日リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ/©︎青柳 聡

 多くのクラシック音楽カメラマンさんは写真の世界からこの仕事に入っているのですが、青柳さんはもともとが音楽ファンで、大好きな「音楽」の瞬間を切り取るために写真の世界に入っていった人です。若い頃には音楽プロデューサーや音楽学者が集う音楽サークルに出入りして、かなり本格的に聴く耳を磨いた青柳さん。音楽をよく知っているからこそなのでしょう、客席の間近で撮影しなければならないミュージアム・コンサートなどでも、絶妙に気配を消してカメラを構える姿が印象的でした。

 もちろん音楽家の皆さんからの信頼も絶大でした。いまにも音が聴こえてきそうな緊張感のある演奏写真。被写体の人柄や信念まで伝わるようなポートレイト。マエストロ・ムーティも、全幅の信頼を寄せていました。

 2021年12月30日。青柳さんはくも膜下出血のため急逝しました。まだ53歳の早い旅立ちでした。

 酒席では陽気すぎるぐらいに弾けた飲みっぷりだった青柳さん。今年の春は一緒に飲むことも叶いませんけれど、空の上から上野の桜を見下ろしながら、ゆっくり静かにお酒を楽しんでくださいね。寂しいです。

東京・春・音楽祭のあゆみと共に、是非、青柳さんの写真を探してみてください。
・2021年はこちら
・2020年はこちら
・2019年以前はこちら



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