原曲は1861年に作曲されたピアノ曲「アルバムの綴り」で、「メッテルニヒ侯爵夫人のアルバムに」という副題が付けられている。メッテルニヒ侯爵夫人は、ワーグナーとも親交があり、当時のウィーンやパリの社交界で花形だった。

　ツェムリンスキーは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオーストリアの指揮者・作曲家。シェーンベルクの師でもあり、義理の兄でもあった。1938年にアメリカに亡命するが、不遇のうちに世を去った。この「セレナーデ」は若い頃の作品で、ブラームスとの出会いに刺激を受けて書かれた。演奏機会は少ないが、全5楽章を通じて若い感性にあふれた喜びに貫かれている。

　ヒンデミットは、オーケストラに用いられるほぼすべての楽器のためのソナタを書いた。本曲は（オーケストラに定位置を持たない）E♭管アルトホルンのために1943年、亡命先のアメリカで書かれた（ホルンまたはアルトサクソフォンでも代替可能）。4楽章構成で、終楽章冒頭には「ポストホルン」と題された作曲家自身による詩句が付されている。

　リヒャルト・シュトラウスの父は、バイエルン国立歌劇場の首席ホルン奏者を長年務めた。本曲は両親の銀婚式のために1888年に書かれた作品で、未完成のソナタの緩徐楽章用に構想されたという説もある。ハ長調だが、どことなく哀愁を感じさせる旋律である。1973年に出版され、以来ホルン曲の定番となった。

　シェイクスピアの戯曲『から騒ぎ』上演のために作曲された劇音楽から4つの小品を選んでアレンジしたもので、1918～19年頃の作品。警吏のヤマリンゴ（ドグベリー）と村役人の桃酒（ヴァージズ）は、劇最大の誤解をとくのに大きな役割を果たす凸凹コンビだが、そのキャラクターが巧みに描写されているほか、それぞれ印象的な場面が表現されている。

　風光明媚な保養地バーデン＝バーデンで1865年に完成。全4楽章からなり、ブラームスが少年時代から愛着を寄せていたナチュラル・ホルンの柔らかな響きを念頭に書かれている。同年2月には最愛の母が他界しており、深い憂愁に彩られた第3楽章には、母への哀悼だろうか、アダージョ・メスト（ゆるやかに、悲しげに）との指示がある。