ホルベアとは「デンマーク文学の父」と呼ばれるルズヴィ・ホルベア（1684-1754）のこと。グリーグは1884年、同郷（ベルゲン生まれ）の文人の生誕200年記念祭のために、まずピアノ独奏用の《ホルベアの時代より》を作曲し、翌1885年に弦楽合奏用に編曲した。副題に「古い様式による組曲」とあるように、ホルベアが生きたバロック時代のフランス風組曲の形式を援用している。全5曲を構成するそれぞれの舞曲の古典的なリズムと様式を基調としながら、北欧ロマン派のグリーグらしい叙情性と快活な曲想が展開される。

　長らくフルート協奏曲第2番として愛奏されてきたが、20世紀になって関連する資料の発見が相次ぎ、オーボエ協奏曲からの編曲だったという結論に至った（原曲のオーボエ協奏曲はハ長調）。原曲は1777年、モーツァルトがザルツブルクを出立する以前に、当地の宮廷楽団にいたオーボエ奏者ジュゼッペ・フェルレンディスのために作曲されたと考えられている。3楽章からなり、第1楽章は協奏風ソナタ形式。軽やかな音楽の喜びにあふれている。第2楽章は簡略化されたソナタ形式。堂々とした導入部に続いて、美の極致のような息の長い旋律を歌う。第3楽章は愉しげなロンド風のソナタ形式で、明るく曲を閉じる。

　モーツァルトの最後の3つの交響曲は、1788年夏のわずか1カ月半のあいだに作曲された。第41番が完成したのは、前作の第40番から2週間あまりあとの1788年8月10日。「ジュピター」とは、ローマ神話の主神ユピテルの英語読みで、興行師のヨハン・ペーター・ザロモンの命名とされる。
　第１楽章はソナタ形式。第1主題は、16分音符の3連符をともなう決然としたハ音の連打と、一転して優しげな旋律の2要素からなる。半音階の上昇で始まる第2主題は、木管のオブリガートに支えられてふくよかさを増し、やがて迎えるコデッタ（小結尾部）では、オペラ・ブッファ風の旋律が現われ、展開部ではこの主題がおもに用いられる。第2楽章は、弦楽器が弱音器をつけて美麗な旋律を奏でる緩徐楽章。第3楽章は三部形式のメヌエットだが、ここで再び「ジュピター」の壮大な音楽に引き戻される。第4楽章はフガートを取り込んだソナタ形式。モーツァルトが好んだ、通称「ジュピター音型」（C-D-F-E：ド・レ・ファ・ミ）の第1主題で開始される。対位法とポリフォニックな書法により特筆すべき完成度がもたらされており、最後のコーダではすべてのモチーフが登場し、壮麗な大団円を迎える。