ヴィチェスラフ・ノヴァークは、プラハ音楽院でドヴォルザークに学んだのち、母校の教授となって後進の育成にあたった。作風は後期ロマン派風で、交響詩《タトラ山にて》が知られている。本作は同交響詩と同じ年の1902年、32歳の時の作品。単一楽章として休みなく演奏されるが、内容的には4つの部分から構成される。バラードというタイトルの通り、交響詩風の、物語的な語り口の音楽だが、R.シュトラウスのように描写的というよりは、ドビュッシーのようにイメージが重視されている。悲劇的な強奏で始まるテーマはリズミックなモラヴィア民謡風。次に雄渾なテーマがアレグロで高揚し、ヒロイックなイメージが喚起される。そしてピアノの下向音型に誘われるように、諧謔的なスケルツォとなり、夢見るような茫洋とした旋律と交錯する。最後は冒頭の悲劇的なアンダンテに回帰し、急速なアレグロで緊張が頂点に達し、静かに、だがドラマティックに葬送の音楽が奏でられ、ピツィカートで消えるように終わる。

　5曲の小品で組まれた本作は、1939年に作曲されたパリ時代の作品。すべてがA-B-Aのスケルツォ風に書かれている。第1曲はアレグロを基調とし、せわしないピアノの伴奏にヴァイオリンが饒舌なメロディを奏でる。トリオでは大らかな旋律と足を踏み鳴らすような音楽が交錯する。第2曲もアレグロで、激しい弦の刻みに乗ってピアノが目まぐるしく駆け抜ける。テンポを落とした中間部では、チェロが憧れに満ちた望郷のメロディを切々と歌う。第3曲はアンダンティーノの緩徐楽章。愁いを帯びた子守唄のようなテーマを経て中間部に入り、ピツィカートの伴奏に可憐に歌うピアノ、憂鬱な歌、そして小刻みに揺れる踊りとなる。第4曲は再びアレグロで、旋回するような爽快な舞曲。中間部は歯切れの良い弦とピアノが小刻みに掛け合う。第5曲は行進曲風のモデラート。快速で勇ましいが、どこか滑稽。中間部はチェロが晴れやかに歌い、ヴァイオリンとの重奏が美しい。

　管弦楽曲的な手法と濃密なメロディが際立つ作品。第1楽章はソナタ形式のアレグロ。ノスタルジックなメロディが静かに曲を始める。第2主題は明朗な舞曲風。ピアノのダイナミクスが強烈で、感情の激しい揺れを表現し、清冽な旋律が不思議と悲劇的なイメージをもたらす。ブラームス的な構築性を採用しつつ、内面的にはシューベルトを想わせる複雑な心情を吐露した楽章とも言える。第2楽章はアレグレットのスケルツォ。冒頭から民謡風の旋律が奏でられ、せわしないポリリズムが登場する。トリオでは甘美なチェロが印象的。第3楽章は悲しみを湛えたアダージョ。優美な旋律をチェロが歌い、それを追いかけるヴァイオリンがメロディを上行させる。ピアノが新たな主題を奏でると、敬虔なムードが悲しみを浄化していく。第4楽章はロンド・ソナタ形式のアレグロ。勇壮さと哀感が衝突するフリアントの民族舞曲だ。そこに忽然として第1楽章のテーマが回想され、崇高さを増しながら急速なコーダへ向かう。