PROGRAM
プログラム
東京・春・音楽祭
Spring Festival in Tokyo
東京春祭マラソン・コンサート vol.13
Tokyo-HARUSAI Marathon Concert vol.13
Tokyo-HARUSAI Marathon Concert vol.13
ヨーロッパ流〈集いの楽しみ〉――音楽・公園・博覧会
The European Style of Gathering : Music, Parks, Exhibitions
The European Style of Gathering : Music, Parks, Exhibitions
上野公園 開園150年に寄せて
Celebrating the 150th Anniversary of Ueno Park
Celebrating the 150th Anniversary of Ueno Park
プログラム詳細
Detail
※この公演は終了しました。
日時・会場
2023年3月25日 [土]
第I部 13:00(12:30開場)
第II部 16:00(15:30開場)
第III部 19:00(18:30開場)
[各回約90分]
企画構成/お話:小宮正安(ヨーロッパ文化史研究家/横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授)
【第Ⅰ部】13:00開演(12:30開場)
モーツァルトが楽しんだ庭園ライフ:解放される〈庭園〉
出演
ヴァイオリン:白井 圭、西野ゆか、北見春菜
ヴィオラ:吉田有紀子
チェロ:辻󠄀本 玲、夏秋裕一
コントラバス:渡邉玲雄
フルート:竹山 愛
オーボエ:本多啓佑、阿部友紀
クラリネット:西澤いずみ、尾上昌弘
ファゴット:中田小弥香、大内秀介
ホルン:嵯峨郁恵、梁川笑里
ソプラノ:阿部早希子
ピアノ:岡田 奏、天日悠記子
※当初予定しておりました出演者より変更となりました。
曲目
モーツァルト(フンメル編):交響曲 第39番 変ホ長調 K.543 より 第1楽章
フックス:歌劇《堅固と不屈》より 「その刃は死の炎に包まれ」
サリエリ:セレナーデ 変ロ長調
ヴァンハル:《ヨーゼフ2世への追悼歌》より 第2部
グルック(ヴェント編):歌劇《メッカの巡礼》より
「あなたの考えが分からない」
「流れ注ぐ小川を」
「マホメットよ このうすのろは」
ハイドン(ボーヴァルレ=シャルパンティエ編):交響曲 第83番 ト短調 Hob.I:83《めんどり》より 第1楽章
メストリーノ(シュテルン編):ヴァイオリン協奏曲 第8番 より ロマンツェ
ベートーヴェン(ラハナ―編):ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 op.15 より 第3楽章
※すべての曲目を室内楽版にて演奏いたします。
【第II部】16:00開演(15:30開場)
公園に流れるワーグナーのオペラ:庭園から〈公園〉へ
出演
曲目
ワーグナー(ヘルマン編):歌劇《ローエングリン》より 「エルザの大聖堂への行進」
ピッチュ:「神よ、フランツを護りたまえ」によるフーガ
ディアベリ:10月18日 あるいは 1814年のプラーター軍事祭典
マイアベーア(ザイツ編):歌劇《預言者》より 「戴冠式行進曲」
ツィーラー:オッフェンバックのオペレッタ《青ひげ》の主題によるカドリール
シュット:ヨーゼフ・シュトラウスのワルツ《オーストリアの村燕》に基づく演奏会用パラフレーズ
リスト:交響詩《マゼッパ》
※すべての曲目を室内楽版にて演奏いたします。
【第III部】19:00開演(18:30開場)
シュトラウス風・ウィーンのおもてなし:公園で〈博覧会〉を
出演
ヴァイオリン:西野ゆか、北見春菜
ヴィオラ:吉田有紀子
チェロ:夏秋裕一
ソプラノ:阿部早希子
テノール:金山京介
二期会合唱団
ソプラノ:近藤幸江、大林優子
アルト:喜田美紀、小林紗季子
テノール:高柳 圭、伊藤 潤
バス:大井哲也、吉原裕作
ピアノ:黒岩航紀、實川 風、天日悠記子
曲目
J.シュトラウス2世:ワルツ《わが家で》(男声合唱版)
ヘンデル(クリュザンダー編):オラトリオ《ユダ・マカベウス》より
「見よ勇者は帰る」
「行進曲」
「喜べユダよ!」
「ハレルヤ、アーメン」
ブルックナー(シュマルナウアー編):交響曲 第2番 より 第3楽章
サン=サーンス:マズルカ 第1番 ト短調 op.21
シューベルト(クライスラー編):劇付随音楽《キプロスの女王ロザムンデ》D797より バレエ音楽
ブラームス:セレナード 第1番 ニ長調 op.11 より 第1楽章
スメタナ(カーン=アルベスト編):歌劇《売られた花嫁》より 第1幕 第1場
※すべての曲目を室内楽版にて演奏いたします。
Date/Place
March 25 [Sat.], 2023
Part I at 13:00
Part II at 16:00
Part III at 19:00
[about 90 min.]
Tokyo Bunka Kaikan Recital Hall
Program Planner/Navigator:Masayasu Komiya(Cultural historian of Europe / Professor at Institute of Urban Innovation, Yokohama National University)
【Part I】at 13:00(Door Open at 12:30)
Garden Life Mozart Enjoyed: Liberation 〈Garden〉
Cast
Violin:Kei Shirai, Yuka Nishino, Haruna Kitami
Viola:Yukiko Yoshida
Cello:Rei Tsujimoto, Hirokazu Natsuaki
Contrabass:Reo Watanabe
Flute:Ai Takeyama
Oboe:Keisuke Honda, Yuki Abe
Clarinet:Izumi Nishizawa, Masahiro Onoue
Bassoon(Fagott):Sayaka Nakata, Shusuke Ouchi
Horn:Ikue Saga, Eri Yanagawa
Soprano:Sakiko Abe
Piano:Kana Okada, Yukiko Tennichi
/etc.
*The artist has been changed from the initial announcement.
Program
Mozart(arr. by Johann Nepomuk Hummel):Symphony No.39 in E-flat major K.543 – I. Adagio – Allegro
Johann Joseph Fux:”Costanza e fortezza” – ‘Cambia in fulmine mortale il suo strale’
Salieri:Serenade in B-flat major
Jan Křtitel Vaňhal:”Trauergesang bei dem Tode Joseph II” – Second part
Gluck(arr. by Johann Went):”Die pilger von Mekka”(Excerpts)
’Ich Weiß nicht, was Sie jetzt dachten’
’… einen Bach, der fließt und sich erießt’
’Mahomet dieser dumme Tropf’
Haydn(arr. by Jean-Jacques Beauvarlet-Charpentier):Symphony No.83 in G minor Hob.I:83 “La poule” – I. Allegro spiritoso
Nicolò Mestrino(arr. by Julius Gustav Stern):Violin Concerto No.8 – Romanze
Beethoven(arr. by Vinzenz Lachner):Piano Concerto No.1 in C major op.15 – III. Rondo:Allegro
※All program will be performed in chamber version.
【Part II】at 16:00(Door Open at 15:30)
Wagner’s Opera in the Park:From the Garden to the 〈Park〉
Cast
Violin:Kei Shirai
Piano:Koki Kuroiwa, Kaoru Jitsukawa
Program
Wagner(arr. by Friedrich Hermann):”Lohengrin” – ‘Elsa’s Procession to the Cathedral’
Karel František Pitsch:Fugue on ‘Gott erhalte Franz den Kaiser’
Diabelli:Der achtzehnte Oktober oder das grosse militärische Prater-Fest in Wien (anno 1814)
Meyerbeer(arr. by Friedrich Seitz):”Le prophète” – ‘Coronation March’
Carl Michael Ziehrer:Quadrille on a theme from Offenbach’s Operetta “Barbe-bleue”
Eduard Schütt:Paraphrase on waltz motifs by Josef Strauss “Dorfschwalben aus Öesterreich”
Liszt:Symphonic Poem “Mazeppa”
※All program will be performed in chamber version.
【Part III】at 19:00(Door Open at 18:30)
Straussian Viennese Hospitality: An 〈Exhibition〉 in the Park
Cast
Violin:Yuka Nishino, Haruna Kitami
Viola:Yukiko Yoshida
Cello:Hirokazu Natsuaki
Soprano:Sakiko Abe
Tenor:Kyosuke Kanayama
Nikikai Chorus Group
Piano:Koki Kuroiwa, Kaoru Jitsukawa, Yukiko Tennichi
Program
Johann Strauss II:Bei uns z’haus
Handel(arr. by Friedrich Chrysander):”Judas Maccabaeus”
’Seht, er kommt’
’March’
’Frohlock’, o Juda!’
’Helleluja, amen’
Bruckner(arr. by Josef Schmalnauer):Symphony No.2 – III. Scherzo
Saint-Saëns:Mazurka No.1 in G minor op.21
Schubert(arr. by Kreisler):Ballet Music from “Rosamunde, Fürstin von Zypern” D797
Brahms:Serenade No.1 in D major op.11 – I. Allegro molto
Smetana(arr. by Kàan-Albést):”Prodaná nevěsta” – Act 1, Scene 1
※All program will be performed in chamber version.
チケット情報
Ticket
料金(税込)
3公演通し券 | 各回券 | U-25 | ライブ・ストリーミング配信 |
---|---|---|---|
¥8,500 | ¥4,000 | ¥2,000(各回) | ¥1,200(各回) |
※来場チケットは全席指定
Price
3 Concerts | 1 Concert | U-25 | Live Streaming |
---|---|---|---|
¥8,500 | ¥4,000 | ¥2,000(1 Concert) | ¥1,200(1 Concert) |
※All admission tickets are reserved seat.
来場チケット
発売スケジュール
2023年1月22日 [日] 10:00
- ※
- 先行発売はございません。
- ※
- U-25は2023年2月16日 [木] 12:00より発売します。
- ※
- 「新型コロナウイルス感染拡大予防への取組みとお客様へのお願い」をお読みいただき、内容をご確認・ご同意いただいた上でチケットをお申込みください。
ネット席
発売スケジュール
- 2023年2月25日 [土] 12:00
ライブ配信のみとなります。会場で開催する公演と同時刻に、ご自身のPC・スマホ・タブレット画面にてご鑑賞いただけます。公演終了後のアーカイブ配信はございません。
Admission ticket
Release Schedule
January 22 [Sun.], 2023 at 10:00
- ※
- Before you reserve your ticket, please make sure to read through and understand the “Coronavirus Prevention Measures and Visitor Rules”.
Streaming ticket
Release Schedule
- February 25 [Sat.], 2023 at 12:00
Only Live-Streaming is available. You can enjoy the concert through your devices (e.g. computer). There is no archive streaming.
曲目解説
Song Commentary
曲目解説PDFダウンロード第1部 モーツァルトが楽しんだ庭園ライフ:解放される〈庭園〉
モーツァルトが生きた18世紀後半。それは、王侯貴族等の特権階級が所有する私的な、そして閉ざされた庭園が、進歩的な君主によって、一般の人々にも解放されていった時代だった。またそのような解放された庭園を舞台に、やはり特権階級の独占物だった様々な形の音楽の楽しみが、一般の人々のものとなってゆく……。
モーツァルト(1756-91)の「交響曲第39番」も、こうした「解放された庭園」の1つ、ウィーンのアウガルテンでおこなわれた夏の野外演奏会で初演されたのではないか、という説がある。時は1788年。ちょうどモーツァルト晩年の困窮が顕在化し始めた頃で、この交響曲自体、初演の記録がないことから実演で取り上げられなかったのではないか、という見方がかつては一般的だった。だが最近では、当時のウィーンの野外演奏会ではプログラム冊子など、後世に証拠が残るような上演資料が印刷されるのはまれだったこと、またモーツァルトがこの曲を含む「後期三大交響曲」を最後まで完成させていることから、これら3つの交響曲が連続して初演されたのではないか、という考え方が浮上している。
時代は半世紀以上遡り、まだ庭園が特権階級の独占物だった頃のこと。庭園では宴会をはじめとする様々な催しがおこなわれ、結婚式など特別の機会には歌劇が上演されることもあった。ドイツ系音楽家としてはウィーン初の宮廷楽長として活躍したフックス(1660-1741)が、1723年に初演した歌劇《堅固と不屈》もその1つ。また歌劇とまではゆかずとも、宴を彩る野外演奏のために、屋外の演奏でも音量的に充分対応できる、管楽器を中心とした数々の「セレナーデ」が作られた。モーツァルトと同時代にウィーンの宮廷作曲家、宮廷楽長を歴任したサリエリ(1750-1825)の「セレナーデ」も、この流れに属す作品である。
ところで、ウィーンにおける庭園の解放に関して、その中心的存在となったのは、改革派君主として知られるハプスブルク家の皇帝ヨーゼフ2世(1741-90)である。そのヨーゼフが亡くなった際、彼の生前の業績を讃える作品が幾つも作られた。ヴァンハル(1739-1813)による《ヨーゼフ2世への追悼歌》もその典型であり、その第2部では、市民階級を中心とする多くの民衆のために、ヨーゼフが新たな光をもたらしたことが謳われる。
管楽器を主体としたアンサンブルが庭園で活躍する際には、流行りのオペラのヒット・ナンバーが上演されることもしばしばあった(またそれが、普段オペラハウスに行く機会のない一般の人々に、オペラが浸透するきっかけを作った)。オペラ改革者として名を馳せることとなるグルック(1714-87)が1763年に作った喜劇的な歌劇《メッカの巡礼》もその1つ。中近東風の異国情緒に溢れたナンバーも登場する。
18世紀前半、ウィーンの中心街の外側に建てられたベルヴェデーレ宮殿でも、この世紀の後半になると庭園が一般に解放され、野外演奏会がおこなわれるようになった。そうした中で、当時話題を呼んでいた多くの音楽家の作品が次々と上演されてゆく。ハイドン(1732-1809)の「交響曲第83番」をはじめとする、いわゆる「パリ交響曲」しかり。現在では忘れられてしまった存在だが、当時は名ヴァイオリニストとして有名だったメストリーノ(1748-89)の作品も、ベルヴェデーレの庭園演奏会で人気を博した。本日はそんな彼の作品の中から《ロマンツェ》をお聞きいただく。
ベートーヴェン(1770-1827)も、庭園での演奏会と因縁浅からぬ関係にあった。たとえば1800年にウィーンの宮廷劇場で初演され、人気を博した「ピアノ協奏曲第1番」は、アウガルテンの庭園内に造られたホール兼レストランでも1806年に取り上げられ、この時は彼の弟子であり名ピアノ教師としても知られるチェルニー(1791-1857)がピアノ独奏を務めた。
(小宮正安)
第2部 公園に流れるワーグナーのオペラ:庭園から〈公園〉へ
ワーグナーが生きた19世紀のヨーロッパは、地域的な差こそあれ、市民階級が台頭を遂げた時代である。そうした状況の中で、市民が主体の街づくりがおこなわれてゆくにあたり、誰もが集うことのできる「公園」が発明されてゆく。しかも公園こそは、誰もが様々な音楽に触れられる集いの場として、音楽史にも重要な役割を果たしていった……。
「未来の音楽」を標榜する斬新なオペラだけでなく、私生活においても社会現象をまき起こし続けたワーグナー(1813-83)。ただし彼の音楽は、オペラハウスだけで上演されていたわけではない。特にウィーンでは、むしろ野外演奏会を通じて、普段オペラに接する機会のない人々の耳にその音楽が届き、ワーグナーの知名度が確実に上がってゆくこととなった。1850年に初演された歌劇《ローエングリン》も、その数々の名ナンバーとともに、野外で演奏されて広く知名度を得ていった作品の一つである。
オーストリアでは20世紀初頭まで帝政が続いていたため、市民の社会進出は比較的遅れていたものの、例えば、オーストリア皇帝フランツ1世(1768-1835)は、ナポレオン(1769-1821)の軍事侵攻で壊された王宮脇の土塁の跡地に庭園(「フォルクスガルテン」)を造営。それを解放し、以降は市民が主導する形で公園としての活用が進められていった。そんなフランツを讃えるべく、元々ハイドンが作った皇帝賛歌を1831年にアレンジしたのが、ピッチュ(1786-1858)の「〈神よ、フランツを護りたまえ〉によるフーガ」。いっぽう、フランツにとってのみならず、最終的にはウィーン市民の宿敵となったナポレオンが失脚した際に、それを祝う大祭典が、この街の「解放された〈庭園〉」の象徴的存在でもあるプラーターで開かれた。当日そこに鳴り響いたであろう音楽をも交えて、その様子を描写したのが、楽譜出版者としても名高いディアベリ(1781-1858)の「10月18日あるいは1814年のプラーター軍事祭典」である。
フォルクスガルテンの演奏会では、先ほどのワーグナーをはじめ、若き日の彼が憧れたフランスのオペラ作曲家マイアベーア(1791-1864)のオペラの名ナンバーも上演された。1849年にパリで初演された歌劇《預言者》も、「戴冠式行進曲」をはじめとして大人気だった。またマイアベーアとほぼ同時代のパリを生きたオッフェンバック(1819-80)の作品も、フォルクスガルテンの演奏会では花形だった。しかもオッフェンバックの場合は、荘重かつ長大な「歌劇」ではなく、肩の凝らない楽しい内容の「喜歌劇」のエキスパートだったため、庭園の演奏会にはうってつけだった。本日は、1866年に初演された喜歌劇《青ひげ》の名旋律を、ウィーンのダンス音楽家として名高いツィーラー(1843-1922)が、カドリールの形でまとめたものをお聞きいただく。
ツィーラーのいわばライヴァルであり、当時のウィーンのダンス音楽界のスターの1人だったのが、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世の弟のヨーゼフ・シュトラウス(1827-70)である。しかも彼は、自身や兄弟の作ったダンス音楽を舞踏会で指揮するだけでなく、自らの楽団を率いてフォルクスガルテンで演奏会を開き、同時代の作曲家(それこそワーグナーやマイアベーアやオッフェンバック)の最新作を次々と取り上げた。そんなヨーゼフが、これら最新作の影響を受けつつ1864年に作曲し、フォルクスガルテンで初演したワルツ《オーストリアの村燕》を、ピアニストのシュット(1856-1933)が超絶技巧のパラフレーズとして編み直した作品を、今回は取り上げる。
ヨーゼフが注目し、フォルクスガルテンの演奏会で広めた作曲家の1人が、ワーグナーと並び「未来の音楽」の象徴的存在と見なされていたリスト(1811-86)。超絶技巧を誇る自作のピアノ曲を基に1851年に交響詩として改訂した《マゼッパ》も、フォルクスガルテンの演奏会で、ヨーゼフの指揮によって鳴り響いた作品の1つだった。
(小宮正安)
第3部 シュトラウス風・ウィーンのおもてなし:公園で〈博覧会〉を
「公園」が19世紀ヨーロッパ市民社会の発明品であったように、市民が主役となった都市や国家がその力を世界に向けて示すことを目的に生まれた「万国博覧会」も、19世紀に発明された。1873年、ウィーンのプラーターでもロンドンやパリに次いで、ついに万博が開かれる。またその中でも重要な役割を果たしていたのが、「音楽」だった……。
ウィーン万博の開催にあたっては、現在で言う「万博ソング」あるいは「万博ナンバー」が何曲も登場する。その1つこそ、ウィーンが世界に誇る「ワルツ王」として有名なヨハン・シュトラウス2世(1825-99)が1873年に書き下ろしたワルツ《わが家で》だ。今回は、オリジナルの男声合唱版での上演となるが、「我が家にいるように、どうぞくつろいで我らがウィーンをお楽しみください」という内容。このようにシュトラウスのワルツは、踊りのためだけでなく、聴くためのジャンルとなりつつあった。
ウィーン万博では、ヨーロッパ諸国の中でも特にオーストリアが長年にわたって展開してきた文化政策の結晶の数々、特に音楽が、展示やイヴェントにおいて重要な位置を占めていた。開幕に際して、これまたウィーンの代表的音楽家であるブラームス(1833-97)が、自ら芸術監督を務めるウィーン楽友協会の管弦楽と合唱団を指揮し、1747年にロンドンで初演されたヘンデル(1685-1759)の祝典的なオラトリオ《ユダ・マカベウス》の一部を上演したのもその1つ。また、ブラームスのライヴァルと見なされていたブルックナー(1824-96)も、万博の閉幕関連事業の一環としてウィーン楽友協会大ホールで催された演奏会で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、自作の「交響曲第2番」を演奏して、好評を博している。
このように、ウィーンを代表する音楽組織である楽友協会やウィーン・フィルの協力の下、ウィーン万博ではこれまでの万博にはない、音楽万博としての特徴が前面に押し出された。それをさらに継承拡大したのが、ウィーン万博の際にプラーターに造られた巨大なパヴィリオンをメイン会場として、1892年に開催された「ウィーン国際音楽演劇博覧会」である。この博覧会を取り仕切ったのは、外交官夫人としてヨーロッパのそこかしこにコネクションを築いていたメッテルニヒ侯爵夫人(1836-1921)。名門貴族の一員であった彼女は、音楽文化に造詣が深く、数々の音楽家とも交流を深め、場合によっては経済的、社会的支援を惜しまなかった。フランスのサン=サーンス(1835-1921)も夫人の知遇を得た一人であり、1862年に作られた「マズルカ 第1番」は、彼女に捧げられている。
いずれにしても、1892年にウィーンで開かれた、音楽と演劇をテーマにした世にも珍しい国際博覧会では、「音楽の都ウィーン/音楽国家オーストリア」を象徴する様々な展示や、屋内屋外で数多くの演奏会が催された。ウィーンゆかりのシューベルト(1797-1828)の劇付随音楽《キプロスの女王ロザムンデ》(1823年)や、やはりこの街を代表するブラームスが若き日(1857〜60年)に作曲した「セレナード第1番」は、親しみやすく肩の凝らない作品として、この国際博覧会のいわば定番だった。
この博覧会では、スメタナ(1824-84)が1866年に完成・初演した歌劇《売られた花嫁》も上演されている。スメタナは、オーストリアに支配されていたチェコの独立運動に掉さした音楽家として有名であり、この歌劇もその一環として作られた。そうした社会状況を背景に、ウィーンでもチェコ人に対する反感や排斥が起こりつつある中で、その流れを作った作曲家の歌劇が、しかもチェコ語で上演される。まさに音楽が、政治的民族的対立を超える重要な存在として用いられた1つの大きな証に他ならない。
(小宮正安)
主催:東京・春・音楽祭実行委員会
協力:オットー・ビーバ(Dr. Dr. h.c. Otto Biba)/イングリード・フックス(Prof. Dr. Ingrid Fuchs)
Organizer:Spring Festival in Tokyo Executive Committee
Co-operation:Dr. Dr. h.c. Otto Biba/Prof. Dr. Ingrid Fuchs
●記載の曲目は、当日の演奏順と異なる可能性がございます。
● 一部のイベントを除き、未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
● ご来場の際、車椅子をご利用のお客様は東京・春・音楽祭実行委員会(03-5205-6443)までお問合せください。
● 急遽、公演内容や実施方法を変更、または公演を中止する可能性がございます。
最新情報を音楽祭公式サイトやSNSにてご確認ください。
出演者・曲目変更による払戻しは致しませんので、あらかじめご了承願います。
● チケット代金のお支払い後、お客様のご事情による変更・キャンセルは承りません。
● 公演中止以外の理由での払戻しはいたしません。
お客様ご自身または近しい方の体調不良や新型コロナウイルス感染などの事由は、払戻しの対象外となります。
事前の購入に不安や躊躇いを感じるお客様は、ご購入のタイミングを慎重にご検討ください。
東京・春・音楽祭オンライン・チケットサービスでは残席がある限り、公演当日までチケットを販売いたします。
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Tickets will be available on Spring Festival in Tokyo Online Ticket Service until the day of each concert as long as there are remaining seats.
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