1848年12月29日から翌年にかけてひと月ほどで書かれた《森の情景》は、全9曲からなる幻想的なピアノ小品集。ドイツ・ロマン主義にとって非常に重要な要素である「森」がテーマになっている。作曲当初はそれぞれに詩が付されていたが、出版の際、第4曲以外の詩は削除された。第7曲「予言の鳥」は「ゆっくりと、とてもやさしく」との指示があり、曲集の中で最も有名な曲。

　1876年の初演でセンセーションを巻き起こしたサン＝サーンスのオラトリオ《ノアの洪水》は、『旧約聖書』創世記の「ノアの箱舟」伝説に材を採ったもの。前奏曲と3部からなるが、特にこの前奏曲は、半ばで独奏ヴァイオリンによって奏される主題の美しさから、様々に編曲されて人気曲となっている。

　「シャコンヌ」は《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番》の終楽章（第5楽章）に置かれた大曲で、バッハの無伴奏作品のなかでも屈指の名曲とされ、単独で取り上げられる機会も多い。冒頭で呈示される8小節の主題が、4小節ずつ前後半に分かれて同じ和声進行を繰り返し、その8小節の主題がさらに30回にわたって変奏されていく。

　一時期はイザイの門下にいたこともあるスイス出身のユダヤ人作曲家エルネスト・ブロッホは、ユダヤ民族主義をはっきりと前面に打ち出した作風で知られる。全3楽章からなるこのヴァイオリン・ソナタ第1番は、第一次世界大戦後にアメリカに渡り、クリーブランド音楽学校の校長をしていた頃の1920年に書かれ、ほのかな東洋の香りと神秘的な色合い、濃厚な民族色に彩られている。強いインパクトをもたらす攻撃的で情熱的なパッセージと、ともすれば寡黙になりがちな抒情的な部分との、振幅の大きさがドラマティックな効果を生んでいる。

　本曲は、第二次世界大戦中の1940年、メシアンがゲルリッツの捕虜収容所に収容されていたときに書かれたことから、「世界」の終末を描いた悲劇的な作品と捉えられがちだが、タイトルの「世」はむしろ「時間」の意味である。敬虔なカトリック信者だったメシアンは、「ヨハネの黙示録 第10章」の「もはや時がない。第7の天使がラッパを吹くとき、神の秘められた計画が成就する」という箇所から霊感を受け、救世主の不滅と再来を賛美する、祈りに満ちた本作を作曲した。全体は8曲から構成されるが、これは「天地創造の7日間の後に永遠の平安が訪れる」という意図にもとづく。また、収容所内の限られた楽器奏者を想定した作品だったため、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ピアノという珍しい編成を採用している。