リコーダー三重奏のために1955年に書かれた組曲。この作品は、とあるアクシデントから生まれた。ブリテンは友人で画家のメアリー・ポッターらとともにツェルマットへスキーに行っていたが、そこでメアリーが足首を痛めてしまう。しばらく動けなくなった彼女のために、ブリテンはこの組曲を書いて、彼女の気を紛らわせようとしたのだった。

　イングランド中東部ノーサンプトンにある聖マシュー教会の聖名祝日（聖マタイの日）のために、1946年にわずか3日で作曲された。5分半ほどのオルガン曲で、主題は、スペインを代表するルネサンス音楽の作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリア（しばしばイタリア風に「da Vittoria」と綴られる）の4声のモテット《エクチェ・サチェルドス・マグヌス》（1585）から採られている。

　1947年にイギリスの様々な詩人に付曲した、全5曲からなる《子守歌のお守り》は、ブリテンの歌劇《ルクレティアの凌辱》でタイトルロールを務めた英国のメゾ・ソプラノ歌手ナンシー・エヴァンスのために書かれた。
　第2曲「ハイランドのバロー」は、18世紀スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩による。ハイランドとはスコットランド北部の山岳地方を指している。堂々とした明るい歌で、やんちゃな子どもへの母親の愛が感じられる。第3曲「セフェスティアの子守歌」は、シェイクスピアと同時代の作家ロバート・グリーンの詩による。父の不在を嘆く母の悲しみに満ちた曲。セフェスティアとは、グリーンのロマンス『メナフォン』に登場するヒロインの名前。第4曲「お守り」は、17世紀初頭のイギリスの詩人・劇作家トマス・ランドルフの詩による。すぐに寝ないと恐ろしいことになるよ、という歌。

　オールドバラ音楽祭に出演するバリトン歌手のディートリヒ・フィッシャー＝ディースカウのために1965年に書かれた連作歌曲。歌の前にそれぞれ短い格言が付き、格言と歌が一対になったものが7篇、全14曲で構成されている。 　本日は、格言2「牢獄は法律という石によって建てられ」と「煙突掃除の子」、格言5「怒っている虎は教育のある馬よりも賢い」と「ハエ」をお届けする。詩句は18～19世紀のイギリスの画家・詩人ウィリアム・ブレイクから採られている。

　《ジミーのために》は、ティンパニとピアノのための小品。1955年、イスタンブール滞在中に書かれ、イギリスの打楽器奏者ジェイムス・ブレイズに捧げられた。大きく3つの部分に分けられ、旋律はほのかに異国情緒を感じさせる。

　1933年の暮れから34年にかけて作曲され、ブリテンのヴィオラの先生だったオードリー・オールストンに捧げられた。神童だったブリテンは、少年の頃からすでにいくつかのジャンルにおいて作曲をしていた。そして本作は9～12歳までのそうした若書きの楽想を素材としている。タイトルの頭文字がすべて韻を踏んでいるところにも、少年らしい遊び心が表れている。4楽章からなる弦楽オーケストラまたは弦楽四重奏のための作品で、弦楽オーケストラで演奏する場合は、弦楽四重奏の各パートを増員して、コントラバスを加える。
　第1楽章「騒々しいブーレ」はソナタ形式。第1主題は自作の組曲第1番（1925）のブーレ、第2主題は歌曲（1923）から採られている。第2楽章「遊び好きのピチカート」は三部形式で、ピチカートのみで演奏される。自作のスケルツォ（1924）と、中間部のトリオは歌曲（1924）による。第3楽章「感傷的なサラバンド」も三部形式で、組曲第3番（1925）からの憂愁を湛えた調べが朗々と歌う。中間部の穏やかな旋律はワルツ（1923）による。第4楽章「浮かれ気分の終曲」はソナタ形式で、第1主題がピアノ・ソナタ第9番（1926）、第2主題が歌曲（1925）から採られている。小休止を挟み、ピチカートで始まる短いコーダは、次第にテンポを上げて、最強奏で堂々と終わる。