ドイツの作曲家マックス・レーガーは、おもにオルガン作品によってその名を知られているが、オペラと交響曲を除くほぼすべてのジャンルに作品を残した、多産な作曲家。軍隊経験で心身ともに衰弱したが、1898年に除隊してから次第に健康と創作意欲を取り戻した。1902年に書かれた原曲はヴァイオリンとピアノのための作品で、ドイツ・ロマン派を受け継ぐ作曲家らしい、ロマンティックな旋律となっている。

　マイニンゲンのクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトとの出会いは、最晩年のブラームスに最後の創作の輝きを与え、1894年夏、バート・イシュルで2つのクラリネット・ソナタを完成した。初演は2曲とも、ミュールフェルトとブラームス自身により、1895年1月7日にウィーンで行なわれた。第1番は4楽章構成で、ひた寄せる寂寞と甘美な追想とが溶け合った名品。ソナタ形式の第1楽章は、ブラームスらしい渋いテーマで綴られる。第2楽章では、陰影に富んだ叙情がゆったりと奏でられる。三部形式の第3楽章では、レントラー風の華やぎが一瞬、顔をのぞかせる。そしてロンド形式の終楽章は、溌剌とした清涼感に一抹の寂寥感を滲ませながら曲を閉じる。

　クラリネットとピアノのための作品だが、他の楽器で演奏されることも多い。作曲は1849年。「繊細に、感情を込めて」と指定のある第1曲は、情熱を秘めた内省的なフレーズで始まる。第2曲「活発に、軽やかに」では、テンポをあげてロマンティックなメロディを聴かせる。第3曲「急速に、燃えるように」は、たびたび現れる、急峻なテンポで上昇するモチーフが印象的。後半は、第1曲・第2曲のテーマを絡ませながら、華やかなフィナーレを築く。

　シューマンの妻クララは、19世紀を通じて天才ピアニストとして名を馳せた。本曲が書かれた1953年は、クララが出産ラッシュから久々に作曲活動に戻って最後の作品群を書きあげ（演奏活動はその後も継続した）、若きブラームスとヴァイオリンの名手ヨーゼフ・ヨアヒムに出会った年だった。原曲はヴァイオリンとピアノのための作品で、ヨアヒムに献呈されている。作品22の冒頭を飾る本曲は小品ながら、伸びやかな夢想の翼を広げるロマン派の真骨頂を示すものである。

　オーストリアの作曲家アルバン・ベルクは、ウェーベルンとともにシェーンベルクに師事し、新ウィーン楽派の一翼を担った。本曲はクラリネットとピアノのために1913年に書かれ、シェーンベルクに献呈された。シェーンベルクやウェーベルンにも見られる警句（アフォリズム）的な極小形式を採用しており、まるで顕微鏡で微生物を覗くように、凝縮された中に息づく音楽が感じられる。

　情熱的なソナタ第1番とは対照的に、ソナタ第2番は終始穏やかな表情を持つ。優美な主題で始まる第1楽章は温かさと優しさに満ちている。第2楽章はスケルツォに近い間奏曲で、哀愁漂う旋律が奏でられる。第3楽章はブラームスが得意とした変奏曲形式で、抒情的な主題に5つの変奏が続く。