ようこそハルサイ!
何を聴く?どこを観る?
〜ハルサイビギナーのためのガイドマップ2025〜ようこそハルサイ!
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何を聴く?どこを観る?
〜ハルサイビギナーのためのガイドマップ2025〜 東京・春・音楽祭
SPRING FESTIVAL IN TOKYO
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〜ハルサイビギナーのためのガイドマップ2025〜 東京・春・音楽祭 SPRING FESTIVAL IN TOKYO
ようこそハルサイ!
何を聴く?どこを観る?
〜ハルサイビギナーのためのガイドマップ2025〜

こんにちは、東京・春・音楽祭実行委員会 事務局長の芦田です。 東京・春・音楽祭、通称ハルサイは、2005年に始まった、国内最大級のクラシック音楽のお祭りです。 桜が咲き、春が訪れる時期を素晴らしい音楽と一緒に楽しみたいという思いのもと、毎年3月~4月に上野公園一帯で開催しています。

こんにちは芦田さん! どうぞよろしくお願いします。 私、今回初めて、ハルサイに行ってみようかなって思ってるんです。 それでウェブサイトを見に来たんですが、正直、びっくりするぐらい公演数が多いのに驚いていて、いったい何を基準に選べばいいんだろう…って、悩んでいます。助けていただけますか?

「全部の公演を聴きに来てください」と言いたいところですが、さすがにそれは難しいですからね。いくつかのテーマに沿って、おススメの2025年の公演をご紹介したいと思います。
大迫力・大音量!
東京文化会館大ホール公演

ハルサイは、上野にある東京文化会館という、日本を代表する音楽ホールを拠点に開催しています。その中にある、約2000席を有する大ホールで開催する公演は、ステージも大きいため、オーケストラやオペラ公演の会場となっています。2025年のハルサイも、ここで6演目を公演します。

オーケストラやオペラって、王道のクラシック音楽っていう感じがしますね。ハルサイならではのプログラムとかは、あるんですか?

ハルサイは長く、ワーグナーというドイツの作曲家の作品を毎年上演してきました。2025年は16回目になり、ワーグナーが残した最期の大作《パルジファル》を演奏します。

なんか、ワーグナーって、めっちゃ長いって聞いたことがある気がするんですが…。

そうですね。休憩をはさんでの時間になりますが、大体5~6時間の公演が多いですね。

は、半日…!


はい、ただこれがびっくり、飽きないんですよ。 もちろんワーグナーの作品が素晴らしいのが大前提なのですが、演奏する指揮者、歌手、オーケストラの腕によるところも大きいです。2025年はマレク・ヤノフスキという当代きっての名指揮者が、NHK交響楽団を率いて、世界的な歌手の皆様と《パルジファル》を演奏します。ワーグナーの熱心なファンのことを“ワグネリアン”と呼ぶのですが、もしかしたらあなたもそうなるかもしれませんよ。

5~6時間というのは挑戦ですが、これは一生のうちになかなかできない体験にもなりそうですね。ほかにはどんな公演があるんですか?

大ホール公演は、やっぱり大編成のオーケストラと大迫力の音が魅力です。「迫力がすごい!」と聞くと、楽器の音が大きいから?等想像するかもしれませんが、実は”人の声“に勝るものはないと思っています。

人の声、ですか?

そうです。その魅力を最大限に感じていただけるのが、2025年に12回目を迎える「合唱の芸術シリーズ」です。 東京オペラシンガーズという、日本でも指折りの合唱団が、ベートーヴェンのミサ曲《ミサ・ソレムニス》をマレク・ヤノフスキ指揮、NHK交響楽団で演奏します。ミサ曲というもの自体にはピンと来なくても、100人単位の人が歌う大迫力の合唱を浴びる経験は、それはそれは気持ちのいいものです。ぜひ一度、ホールで味わっていただきたいですね。


はい、どちらもとても有名なオペラで、一度聴いたら耳から離れない、素晴らしい旋律がたくさんちりばめられている作品です。ハルサイは、これらのオペラを“演奏会形式”で毎年演奏しているんですよ。

演奏会形式って、なんですか?

オペラと聞くと、大きな舞台セットがあって、歌手の人は衣装やカツラをつけて、演技をしながら歌い、オーケストラはオーケストラピットの中で演奏する…というイメージがあるかもしれませんが、演奏会形式では、いわゆる“演出”という部分をそぎ落として、シンプルな形で演奏しています。オーケストラもステージの上で演奏し、指揮者や歌手といった全員が、客席からしっかりと見えます。オペラは総合芸術ともいわれ、目から入ってくる刺激や情報も面白いですが、演奏会形式ではその要素が無い分、音楽そのものに集中してお楽しみいただけるんです。


そういった楽しみ方もあるんですね! なんだか楽しみ方が少しずつ分かってきたような気がします。

2025年の大ホール公演で忘れてはならないものが、あと2つあります。イタリアの大指揮者、リッカルド・ムーティが指揮するオール・イタリア・プログラムと、アンサンブル・アンテルコンタンポラン通称EICという、現代音楽を得意とするアンサンブルによる公演です。 ムーティは、イタリアの作品を指揮したら右に出るものはいない、現代最高の指揮者だと思います。他ではなかなか聴くことができない、聴きごたえのあるプログラムとなっています。東京春祭オーケストラという、日本のプロの実力派若手奏者たちで結成されるオーケストラもとても良いです。これは初心者の人にも楽しんでいただけるプログラムだと感じています。 また、EICは前回もハルサイで演奏したのですが、その公演も大変素晴らしいものでした。ともすると理解しづらい音楽かと思うかもしれませんが、玄人集団ならではの技巧が光り、ステージ上での演奏を見ているだけでも楽しいです。ぜひ双眼鏡をもって会場にお越しいただきたいですね。特に2025年は、EICを創ったフランス人作曲家、ピエール・ブーレーズの生誕100年にあたるアニバーサリー・イヤーということもあり、公演に対する気合も相当なものがあると思います。聴き逃せませんよ。


なんだか興味が湧いてきました! 大ホール公演、どれか一つは行ってみたいと思います。



はい、ぜひお待ちしています。
関連公演
- 《パルジファル》(演奏会形式)
- ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》
- アンサンブル・アンテルコンタンポラン I
- 《蝶々夫人》(演奏会形式)
- リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ
- 《こうもり》(演奏会形式)
世界中から“一流”が集まる
贅沢な一ヶ月

プログラムを見ていると、海外からの出演者も多くみられますね。

ハルサイは “世界で活躍している一流の音楽家”を日本の皆様に紹介することも大切に続けてきました。2025年も粒ぞろいのラインナップとなっています。

どのプログラムも魅力的ですが、芦田さんのイチオシ公演を教えてください!

どの公演もそれぞれ魅力があってオススメしたいのですが、 私が個人的に推したい公演を3つほどご紹介させていただきますね。

ピアノがお好きな方にはそれぞれ複数公演を予定しているキリル・ゲルシュタインとルドルフ・ブッフビンダーの公演がオススメです。ゲルシュタインはいま最も忙しいピアニストと言っても過言ではない、世界中で大人気のピアニストです。そんな彼が、ソロで1公演、室内楽で1公演を行います。ソロ公演のプログラムは、元々ジャズを学んできたゲルシュタインならではの、幅広い選曲が楽しみ。室内楽公演の方では、重厚感のあるブラームス2曲をカルテット・アマービレと演奏します。これはクラシックに馴染みの薄い方でも、難しいことは何も考えずにお楽しみいただける公演になると思いますよ。 ブッフビンダーは、78歳を迎えられたピアノ界の巨匠。年齢を重ねてきたからこその円熟味溢れる演奏を、昨年も披露してくださいました。ハルサイへは2年連続の出演となるのですが、今年、ブッフビンダーが3公演にわたって演奏するのはシューベルト。ソロと室内楽で聴かせてくれます。どんなジャンルでもそうですが、大御所の演奏が、実は一番、入門編には合ってるんですよね。やはりキャリアを重ねてきた分、懐が広く、どんなお客さんでも虜にする力を持っている。「初めてのクラシック・コンサ―トには敷居が高いかも…」と物おじせず、ぜひ足を運んでみていただきたいです。

大御所だからこその懐の深さ、いいですね! なんだか安心しました。

今年のハルサイは、前出したEICに加えもう一つ、現代音楽を得意とする団体が出演します。室内楽オーケストラの、クラングフォルム・ウィーンです。 その名の通り、ウィーンで結成された団体で、現代音楽をメインに演奏してきました。今年は、ピエール・ブーレーズとルチアーノ・ベリオという、現代音楽の作曲家として著名な二人の生誕100年イヤーなのですが、それを記念した公演がひとつ。そして、生誕250年となるウィーン出身の大作曲家ヨハン・シュトラウス2世を記念した公演をひとつ、予定しています。 実は“現代音楽”と聴くだけで、嫌煙してしまうクラシック音楽ファンは少なくありません。だからこそ、まだクラシック音楽自体にあまり馴染みのない方々には、受け入れられるかもしれません。若い方の中には、配信サービスの“オススメ”などで出てくる知らない曲を聴いて「面白い!好き!」と思う人も少なくない、と聞きました。自分が知っている音楽を聴きに行くのももちろん楽しい経験ですが、そうではなく、「なんだこれ!?」という衝撃を受ける経験というのも大切だと思います。知らないこと、新しいことに触れてみたいという方には、とてもオススメの2公演です。

最後にご紹介したいのは、「シューマンの室内楽I」と「II」です。ドイツの作曲家シューマンの作品ばかりを演奏するプログラムなのですが、まさに、いま日本で旬の音楽家たちがたくさん出演されます。シューマンならではのロマンチックな旋律を、極上のメンバーによる演奏でお楽しみいただけること間違いありません。

ありがとうございます! どの公演も興味が出てきました。 公演に行くにあたって、気を付けるべきことなどありますか?

やはり“音”を聴きに来るところなので、“音が出るもの”については、気をつけていただきたいです。公演中は携帯の音・振動が出ないようにするのは当たり前ですが、擦れるたびにシャカシャカいう洋服だったり、音が出るキーホルダー、ビニール袋などは避けていただけるとベターですね。 大きなお荷物があっても、たいていのホールは荷物預かりがありますので、そちらのサービスをご利用いただけます。
関連公演
- シューマンの室内楽 I
- シューマンの室内楽 II
- クラングフォルム・ウィーン I
- クラングフォルム・ウィーン II
- キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)の世界 I ー solo
- キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)の世界 II ー 室内楽
- ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)シューベルトの世界 I
- ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)シューベルトの世界 II
- ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)シューベルトの世界 III
楽器演奏…だけじゃない!
“学べる”公演や声楽もたくさん

クラシック音楽の公演と聞くと、楽器の演奏を思い浮かべる人が多いかと思いますが、ハルサイではそれに加えて、“リート”と呼ばれる歌の公演だったり、トークを交えたレクチャー形式の公演も行っているんですよ。

歌って、クラシック音楽の公演ではあんまり聴きに行くイメージがありませんでした。例えばどんなプログラムがあるんですか?

ハルサイはもともと、指揮者の小澤征爾さんが中心となり、2005年に“東京のオペラの森”として始まりました。2009年に現在の名称となりましたが、“東京のオペラの森”の時代からずっと音楽祭を続けてきたのが、音楽祭実行委員長を務めている鈴木幸一です。 鈴木はクラシックを心から愛している実業家なのですが、この鈴木が大好きな公演の一つが、“リート”(ドイツ語で歌という意味)なんです。そういう理由もあり、ハルサイを始めたころから、地道にリート公演を続けてきました。最近はファンも定着し始めていて、嬉しい限りです。リートは、歌手とピアノ奏者がペアとなって演奏するもので、それはそれは美しい世界です。基本的にはドイツ語で書かれた詩を歌うの多く、詩が持つ豊かな世界に我々を誘ってくれます。有名なところではミュラーの詩にシューベルトが音楽をつけた《水車屋の娘》という作品があり、今年はマウロ・ペーターさんが歌います。水車小屋で働く美しい娘に恋した青年の悲恋を詠った一作です。


ドイツ語…言葉がわからなくても、楽しめるものですか?

公演では歌詞の日本語対訳をお配りしますので、それを読みながらだと歌詞の内容も理解していただけます。 ただ正直なところ、言葉がわからなくても感じることはたくさんあると思います。それほど、作品の本質を伝えることに長けている、一流の歌い手ばかりです。また、事前に歌詞の内容をウェブや参考本で読んでおいて、ある程度理解してから来場するのも一つの楽しみ方です。歌詞の意味を理解し、味わいながら聴く楽しみもありますよね。

たしかにそうですね。

とはいえ、「作品の事前勉強なんて、時間がないよ!」という方もたくさんいらっしゃると思います。そんな方には、レクチャー形式の公演もおすすめです。

レクチャー形式ということは、お話が入るということですか?

はい、その通りです。 ハルサイでは毎年、マラソン・コンサートというのを企画していまして、これは1日3公演、すべて解説付きの公演です。2025年は、生誕200年を迎えるJ.シュトラウス2世を記念して、「ワルツ王と黄昏のウィーン」というテーマのもと、ヨーロッパ文化史研究家の小宮正安さんが、都市ウィーンの栄枯盛衰を、それに紐づく音楽と一緒に紹介します。音楽を楽しみつつ、知識も併せて蓄えることができる特別な公演として人気です。


人に話したくなるような豆知識も増えそうですね!

また2025年からは〈よく解る〉シリーズも始まります。これは、お話と演奏で有名なオペラ作品を紐解いていくもので、初回はプッチーニの《蝶々夫人》を取り上げます。日本が舞台ということでも有名な作品ですが、この作品の誕生背景など、玄人も目からうろこの情報がたくさん入った公演です。お話を交えつつ、日本人歌手たちが歌います。

えー面白そう!これはぜひ、大ホールでの《蝶々夫人》公演の前に見て、学んでから行きたいですね。
関連公演
- マウロ・ペーター(テノール)&村上明美(ピアノ)
- クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ) I
- クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ) II
- アドリアナ・ゴンサレス(ソプラノ)&イニャキ・エンシーナ・オヨン(ピアノ)
- トマシュ・コニエチュニー(バス・バリトン)&レフ・ナピェラワ(ピアノ)
- 《蝶々夫人》
- ワルツ王と黄昏のウィーン
文化の集積地 上野ならでは!
公演会場からチョイス

ハルサイは「上野公園一帯で開催」と言っていますが、これはどういうことなんですか?

ハルサイは東京文化会館をメインに、毎年約10の会場で有料公演を行っています。会場のほとんどが、上野公園に点在する音楽ホールや美術館、博物館で、まさに明治以降、文化の集積地である上野で開催しているからこそ可能なことだと感じています。

美術館や博物館でもコンサートが楽しめるんですか? 素敵!

はい、その名も「ミュージアム・コンサート」と題して、東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館といった場所で、毎年開催しています。中には、化石が取り囲む空間や、現代絵画の作品の展示室で演奏したりなど、いつものコンサートホールとは異なる雰囲気で音楽をお楽しみいただけると、好評なんですよ。



これは初心者にも行きやすそうですね。

はい、その通りだと思います。 国立西洋美術館や東京都美術館では、音楽祭期間中に開催している特別展を記念したコンサートを行います。学芸員さんによるレクチャーといった、興味深いコラボレーションもありますので、音楽ファンのみならず、美術ファンの方にもお楽しみいただける内容です。 また、建物から選ぶという点では、ぜひ「旧東京音楽学校奏楽堂」にも足をお運びいただきたいです。



わ! すごく素敵な建物ですね!


1890年に建てられた建物で、現在の東京藝術大学音楽学部の前身である、東京音楽学校の校舎でした。上野公園の端にひっそりと佇む味のある建物で、外観はもちろんのこと、中もとても素晴らしい。ここで上質な室内楽を楽しむのは、本当に贅沢な時間だと思います。2025年はR.シュトラウスの室内楽に、声楽のコンサート、珍しいミニピアノを扱ったプログラム、そしてマリンバの公演が並んでいます。どれも記憶に残る公演になることは間違いありません。春先はまだちょっと寒いので、暖かくしていらしてください。