エストニア生まれの作曲家アルヴォ・ペルトが1977年、母国の古楽団体から委嘱され、作曲した室内アンサンブル作品。「フラトレス」とは、ラテン語で「兄弟」の意味。作曲者自身による、様々な編成の版が存在する（特にG.クレーメルのためにつくられたヴァイオリンとピアノ版は人気が高い）。

　1932年に最初の妻への結婚の贈り物として書かれたヴァイオリンとピアノのための作品。静かな主題とそれに続く5つの変奏から構成され、各変奏は切れ目なくアタッカで奏される。20世紀フランス音楽を牽引したメシアンだが、室内楽作品は最初期に書かれた本曲も含めてごくわずかである。

　1920年、音楽誌「ルヴュー・ミュジカル」のドビュッシー追悼号には、ラヴェル、ストラヴィンスキー、バルトーク、ファリャといった作曲家が小品を寄せた。その時にラヴェルが書いた「ドビュッシーへのトンボー（墓碑）」を第1楽章とし、残り3つの楽章を加筆して22年に完成したのが、この4楽章構成の「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」。粗削りな魅力あふれる旋律線、強いコントラスト、ぶつかり合うリズムのエネルギー、無調や多調さえ感じさせる響きなど、のちにラヴェル自身がひとつの転換点だったと述懐しているように、新しく生み出された音楽の感覚が凝縮されている。

　「夜想曲」（1947）は、ヴァイオリンとピアノのための4分ほどの作品。ヴァイオリンのフラジオレット奏法が硬質な夜の雰囲気を醸し出す。1950年に作曲された「ヴァイオリンと鍵盤のための6つのメロディ」は、それぞれ1、2分の6つの小品からなり、サステインの短いピアノに応えるように、ヴァイオリンが弓圧をかけない乾いた音を出す。どこか素朴な古代風の響きがする6つの美しいタペストリーとなっている。

　1983年、日本演奏連盟の委嘱により第2回日本国際音楽コンクールの課題曲として作曲され、同コンクールにて初演された。作曲者によれば、12音のうち6音を主要な素材として用い、残りの6音は「影のように」扱われているという。この実体と影が、頻繁に入れ替わり、表情を変化させていく。

　《神話》（1915）は、ポーランドの作曲家シマノフスキがギリシア神話をもとに書いた3篇の音楽詩。第1曲「アレトゥーサの泉」は、流れる水音を表現したピアノ伴奏に乗せて、神秘的な情景が色彩豊かに描かれる。第2曲「ナルキッソス」は、ナルシシズムの語源ともなった美少年の物語になぞらえて、少年の顔を映して揺らめく水面が表現される。第3曲「ドリュアデスとパン」は、ドリュアデス（樹の精）とパン（牧神）を描写しており、森のざわめきの中にパンの笛が響く。