1733年頃、ロンドンのジョン・ウォルシュによって出版されたヘンデル《クラヴサン組曲 第2集》所収の第4曲で、1703～06年頃の作とされる。重々しい主音の呈示で幕を開ける前奏曲に、四つの古典舞曲が続く。朴訥に語りかけるようなアルマンド、饒舌なクーラントを経て、「フォリア」の主題によるサラバンドは舞曲というより一篇のアリアを感じさせる。最後は短いジグで終わる。

　1741～49年に出版されたと推定されるこの曲集は《序曲集》というタイトルながら、序曲と緩急2つの舞曲が組み合わされた小組曲のような構成になっている。第1曲のフランス風序曲は、典雅な導入部分、流麗なフーガの中間部、そして冒頭部分の再現という三部からなる。第2曲はポーランド民謡への趣味があらわれた曲想。スケルツァンドとあるように、どこかおどけたチャーミングな表情を持つ。第3曲はイタリア風の急速な楽章。短い三つの楽章のなかに多彩な音楽趣味が取り込まれている。

　ト長調とト短調の二つのメヌエットからなる「2つのメヌエット ト調」は、作曲家名の記載なしに《アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳》に収められていたため、長らくJ.S.バッハのメヌエットとして親しまれてきたが、近年の研究によりペツォールトの作であると判明した。
　5楽章からなる「組曲 変ロ長調」は、1728年以前の作とされる。同組曲は、テレマンが「音楽愛好家に2週間に一度、楽譜を届けるという」企画のもと出版された作品集《忠実な音楽の師》に収められており、本日はその最初の三つの楽章をお届けする。

　「ハレのバッハ」とも呼ばれるヴィルヘルム・フリーデマン・バッハは、J.S.バッハの長男として父から溺愛されていたにもかかわらず、生来の自堕落な性格が災いしたのか、次男エマヌエルのようには才能が開花しなかった。最晩年の作とされる本曲は3楽章からなり、ある種の繊細さや、感情の烈しい起伏、突然の中断など、フリーデマン・バッハの特徴・魅力を聴くことができる。