ジョセフ・ダッラーバコは、ヴィヴァルディのひと世代下、ボッケリーニとはほぼ同世代の作曲家。宮廷チェリストでチェロ作品も数多く残した父の手ほどきを受け、チェリストとしても活動した。「11の奇想曲」は、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲を想わせる独奏チェロのための作品で、その「第１番」は荘重な中にもイタリアらしい軽やかさや旋律美が感じられる。

　ヴィヴァルディの時代、すでにチェロは独奏楽器としての地位を確立しており、ヴィヴァルディも協奏曲などチェロのための作品を多数書いている。1740年頃にパリで出版された6曲のソナタはいずれも「緩〜急〜緩〜急」の教会ソナタ形式をとっている。本日はその中から3曲をお届けする。
　「ソナタ 第5番 RV40」は、冒頭楽章の同音を繰り返す主題が、何かを物語るように厳かである。第3楽章のラルゴでは、穏やかな詩情にみちた旋律を聴かせる。「ソナタ 第6番 RV46」は、6曲中唯一、楽章に舞曲名がつけられており、形式上は室内ソナタに属する。第1楽章プレリュードでは息の長い優雅な旋律が歌い、躍動的なアルマンドを経て、第3楽章ラルゴには哀切な響きが感じ取れる。最後は技巧的なクーラントで明るく軽快に終わる。「ソナタ 第3番RV43」は、通奏低音とのユニゾンで開始される付点リズムの主題が印象的。第3楽章ラルゴの歌謡性あふれる旋律は、まるで歌詞まで聴こえてきそう。最後は勢いのある主題のアレグロ楽章で曲を閉じる。

　1720年に出版された《ハープシコード組曲 第1集》に含まれる「組曲 第7番 ト短調 HWV 432」（全6楽章）の最後を飾るのが、この「パッサカリア」。単独で演奏される機会も多い曲で、とくにヨハン・ハルヴォルセンによってヴァイオリンとヴィオラの二重奏に編曲されたことで、人気曲となった。

　ブロッホのクリーブランド時代、1924年に作曲されたチェロとピアノのための作品《ユダヤ人の生活より》（全3曲）の第1曲。ブロッホ特有の深い哀しみをたたえたユダヤ的な旋律が、チェロのふくよかな音色で朗々と歌われる。

　「クレズマー」とは、東欧系ユダヤ人の楽師たちが奏でる音楽。ヨーロッパのユダヤ人コミュニティでは、婚礼や葬儀のときに楽師がユダヤの民族音楽を奏でた。悲哀を感じさせる旋律や、賑やかな舞踊の音楽などが特徴で、近年は一つの音楽ジャンルとして認知されつつある。民謡的なこぶしがまわる「スコチネ」、モダンなメロディの「コイレン」、賑やかな「ホラ」、聖なる歌「ニーグン」、アップテンポのダンス音楽「コロメイカ」など、代表的なクレズマーをお届けする。

　全6曲からなるピアノ組曲《ルーマニア民俗舞曲》は、1915年の作品（当時ルーマニアの一部はハンガリー王国に属していた）。各曲は非常に短いが、それぞれに濃厚な民俗性が感じられる。バルトークの小品のなかでも人気が高く、1917年には作曲家自身により管弦楽用にも編曲されたほか、様々な編曲版が存在する。