バッハの鍵盤作品 BWV974として知られる本曲だが、原曲はヴィヴァルディと同時代のイタリアの作曲家アレッサンドロ・マルチェッロのオーボエ協奏曲(1716年出版)。バッハの編曲はワイマール時代（1708-17）に行なわれたと推定されている。3楽章からなるが、特に中間楽章はモダンで、1970年のイタリア映画『ベニスの愛』で使われて有名になった。

　バッハは1726年からパルティータを個別に出版していき、1731年に全6曲をまとめて出版した。第１番冒頭の短い「プレリュード」は、3声へと発展する。それに続くのは、イタリア風の陽気な「アルマンド」。さらに、3連符のリズムで突っ走るイタリア式の「クーラント」、旋律の豊かな装飾性が際立つ「サラバンド」と来て、軽やかな2声の「メヌエットⅠ」と、ミュゼット風に凝った4声の「メヌエットⅡ」が交錯する。終楽章の「ジーグ」はイタリア式で、D.スカルラッティの特技だった、腕の交差テクニックをはじめて披露した楽曲。

　本曲は、1735年に出版された《クラヴィーア練習曲集 第2部》に収められており、バッハのクラヴィーア曲のなかでも特に親しまれている。3楽章構成（急／緩／急）という、典型的なイタリアの独奏協奏曲の楽章配置となっている。

　《フランス組曲》は1720～22年頃、ケーテン時代の作。明朗な雰囲気に満ちた第5番は全7楽章からなり、《フランス組曲》のなかでも最も演奏頻度が高い。冒頭を飾るのは、溢れんばかりの歌が魅力の「アルマンド」。そのあと、力強く疾走する「コレンテ」、優美な「サラバンド」、非常に短いがよく知られた「ガヴォット」、軽快な「ブーレ」、古拙の味わいが光る「ルール」が続き、歓喜が爆発する「ジーグ」で曲を閉じる。

　ライプツィヒ時代の1725年頃に書かれたとされる。美しい旋律が際立つ古風な幻想曲（ファンタジア）に、対照的な2つの主題が組み合わされた4声の二重フーガが続く。小曲ながら力強い作品で、バッハの隠れた名作として愛されている。

　「シャコンヌ」は、J.S.バッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番》の終楽章（第5楽章）に置かれている。バッハの無伴奏作品のなかでも屈指の名曲であり、単独で取り上げられる機会も多い。イタリア出身で、ドイツを中心に多方面で活動したフェルッチョ・ブゾーニは、バッハの楽譜校訂者としても知られ、本曲を含めバッハ作品の編曲を多数手がけている。