当時は歌曲と並んで舞曲や行進曲なども人気が高く、シューベルトも様々な曲種のピアノ連弾作品を書き、生前に出版されたものも多い。本曲は1818年あるいは1824年に書かれ、1825年に出版。ロ短調の主部に対して、やさしく穏やかなロ長調のトリオではシューベルトの歌謡性があふれ出す。

　レントラーとはドイツ語の Land（田舎）から来ており、ゆったりとした3拍子の田園風舞曲である。本曲は1824年の作で、出版は1869年。どこか懐かしい旋律に心が和む。

　ポロネーズとは「ポーランドの」という意味で、祝祭的な雰囲気を持つ3拍子の舞曲。シューベルトの連弾によるポロネーズ曲集は2つあり、どちらも生前に出版されている。本曲は、作曲・出版ともに1826年。非常に丁寧に書かれており、ポロネーズの特徴的なリズムが生かされた名作。

　作曲年は不明、出版は没後の1829年。打楽器ペダルが大活躍する賑やかな行進曲で、トリオは優雅な舞曲調。

　全3曲からなる《フランス風の主題によるディヴェルティスマン》の作曲時期は不明。この第2番は1827年に出版。ロ短調の主題と4つの変奏からなり、痛切な響きの主題が心を打つ。最終変奏でロ長調に転じて、陽だまりのような暖かさを感じるが、それもつかの間、再び悲しみに閉ざされて終曲する。

　最晩年に書かれた連弾の傑作で、10分を超える大曲ながら、隅々まで優しさが染みわたっている。シューベルトが亡くなる1828年に書かれ、死の1ヵ月後に出版。シューベルトの曲にはめずらしく短調の響きがほとんど聴かれず、穏やかに旋律を紡ぎ、最後は別れを惜しむようにそっと曲を閉じる。

　作曲は1824年で、翌年出版。自作オペラのお蔵入りなどの挫折を乗り越えて、創作意欲を取り戻そうとしていた時期の作品で、シューベルト自身も「幸福と平穏を自分のなかに見つけられるようになっている」と語り、本作の出来には自信を見せている。どこか物憂げな主題に8つの変奏が続く。短調の第5変奏は憂愁に閉ざされ、第7変奏では印象派を先取りしたかのような色彩感のある和声のなかに静かな痛みが感じられる。最終変奏は、それでも再生へ向かわんとする明るい気持ちにあふれている。

　シューベルト最晩年の傑作である本曲は1828年に書かれたが、出版は死後半年経った1829年。シューベルトが好んだヘ短調で書かれ、20分近いボリュームを誇る。ひたひたと思いに沈むような主題が印象的なアレグロ楽章、和音の強打で始まる規格外の緩徐楽章、軽快な主部に優美なトリオが付いたようなスケルツォ楽章、そして冒頭楽章の再現であるフィナーレ楽章といったふうに、《さすらい人幻想曲》（1822）と同じく、大きく4つの楽章に分けることもできる。