1947年に作曲されたこの無伴奏ソナタは、本来はヴァイオリンの斉奏（多人数によるユニゾン）のために書かれた。全3楽章で、第1楽章モデラートは、ソナタ形式。伸びやかな旋律の明るい楽章。第2楽章アンダンテ・ドルチェは、民謡旋律による主題と5つの変奏。第3楽章コン・ブリオは、マズルカ風の主題に始まるフィナーレ。ルッジェーロ・リッチによる初演は作者没後の1959年、本来の斉奏による初演は1960年にモスクワ音楽院の学生たちによって行なわれた。

　夏田昌和は、作曲家・夏田鐘甲（しょうこう）を父に持つ東京出身の現代音楽作曲家。「先史時代の歌」はヴァイオリンのためのシリーズとして3作あり、Ⅱは初演者・中山しのぶによる2000年の委嘱作品。奏法やテンポを様々に変えながら繰り返される中心モチーフが、空間的にも時間的にも伸び縮みしていく。

　もとは1920年、音楽誌のドビュッシー追悼号に寄せた「ドビュッシーへのトンボー（墓碑）」という小品。本曲は、これを第1楽章とし、残り3つの楽章を加筆して22年に完成。粗削りな魅力あふれる旋律線、強いコントラスト、ぶつかり合うリズムのエネルギー、無調や多調さえ感じさせる響きなど、のちにラヴェル自身がひとつの転換点だったと述懐しているように、新しく生み出された音楽の感覚が凝縮されている。

　若林千春は長野県出身の現代音楽作曲家で、滋賀大学教育学部教授。2022年に作曲されたヴァイオリンのための作品「風の中の声」、滋賀県発祥の交通安全キャラがモチーフとなってシリーズ化された「飛び出し小僧 Ⅶ」（改訂版）、そして2022年に作曲されたヴァイオリンのための作品「アリオーソ」の3曲を本日はお届けする。

　坂東祐大は、クラシック音楽だけでなく、ドラマから映画、アニメ音楽に至るまで縦横無尽に活躍する大阪出身の現代音楽作曲家。ヴァイオリンのために書かれた本作のタイトルは、妻である詩人・文月悠光（ふづき ゆみ）の詩集から採られている。

　エリーズ・ベルトランは2000年生まれの気鋭のフランス人作曲家で、作曲のみならずヴァイオリニスト、ピアニストとしても活躍する才媛。2018年にヴァイオリンとチェロのために作曲された本作は、10代の頃の室内楽作品を集めたアルバム『愛の手紙』所収。彼女にとっては初めてのヴァイオリン作品で2楽章構成、無調ながらも旋律線がみずみずしい。