光崎検校は、19世紀前半の京都の音楽家で、地歌や箏曲の作品を残しており、なかでも箏の二重奏曲である本曲は有名。「砧（きぬた）」とは、衣板（きぬいた）の略。その昔、秋の夜長に布を叩いて皺を伸ばしたり、艶をつけたりしていたことを言い、その音は秋らしい詩情を表わすものだった。全曲は5つの部分（段）からなる。

　ジョン・ケージは、アメリカ現代音楽の作曲家。『4分33秒』などの実験的な作品によって、前衛芸術に大きな影響を及ぼした。ピアノあるいはハープのための本曲は、鈴木大拙に禅を学び、東洋思想への関心を深めていた頃の作品で、ダンサーのルイーズ・リッポルドに捧げられている。

　「4つのデュエット」BWV802～805は、1739年出版の《クラヴィーア練習曲集 第3巻》所収。第3巻は基本的にオルガン曲用だが、本作は何の楽器のために作曲されたのか定説はない（内容的にクラヴィーア曲と思われる）。「デュエット」とは、すなわち2声のインヴェンションのことであり、4曲とも2声部の鍵盤楽曲である。今回はその中から第1番と第4番をお届けする。

　藤倉大は、大阪出身の現代音楽の作曲家で、邦楽器のための作品も多い。本曲はLEOの委嘱により2019年に作曲、初演された箏のためのソロ作品。特徴的な変拍子、邦楽器ならではの間（ま）やアンビエント感、華やかな和音など、独特なグルーヴ感に満ちており、この作品をもとに翌年には、箏協奏曲も書かれている。

　坂東祐大は、大阪出身の新進気鋭の作曲家。2021年に書かれた琴独奏のための《間（ま）の観察》では、邦楽独自の時間感覚である間（ま）が、メトロノームによって刻まれる機械的な時間と対峙させられていたが、本曲はそれを改訂した言わば「メトロノームなしのバージョン」。演奏者の間（ま）の感覚のみによって、独特のリズムと空間が作り出される。

　ジャック・ボディは、ニュージーランドの現代音楽の作曲家。民族音楽・文化の影響を強く受けているのが特徴で、2つのギターのための《アフリカン・ストリングス》は、伝統的な民族楽器であるマダガスカルのヴァリ（Valiha）や西アフリカのコラ（Kora）による音楽をもとに作曲されている。今回は抜粋でお届けする。

　スティーヴ・ライヒは「ミニマル・ミュージック」を代表するアメリカの作曲家。本曲はマリンバ二重奏のための作品で、名古屋音楽大学の委嘱により1994年に作曲され、同年こけら落としを迎えたしらかわホールで初演された。繰り返される短いパターンが絡み合いながら徐々に変化していく、5分ほどの曲である。

　沢井忠夫は、愛知県出身の箏曲家・作曲家。邦楽の名家に生まれ、伝統的な筝曲だけでなく、箏の楽器としての可能性を探るような現代的な作品も残している。本曲は1991年に作曲された十七弦のための二重奏曲で、二章からなる。タイトルの「めぐりめぐる」は、第一章に於いて4小節を単位とする和音進行が24回にわたって繰り返されることによる。