幼少期から父とともにヨーロッパ各地への演奏旅行に明け暮れたモーツァルトが、3回目のウィーン旅行からザルツブルクに帰った翌年の1774年（18歳の時）に作曲。前年の第25番（ト短調）とともに、若きモーツァルトの傑作交響曲として愛聴されている。真綿が水を含むように吸収してきたイタリア様式の流れを汲むシンフォニアと、ウィーンで学んだ新しい室内楽様式を融合し、それらをさらに細部にわたって磨き上げた音楽は、モーツァルトにしか到達し得なかった境地と言えよう。管楽器の使用を抑えた弦楽器主体の交響曲だが、各声部が独立して主旋律を彩る綿密な和声の展開がひと際見事である。

　《魔笛》（全2幕）は1781年に書かれたジングシュピールの傑作。「おいらは鳥刺し」は、パパゲーノが第1幕で登場する際のアリア。「うっとりするほど美しいこの絵姿」は、第1幕で王子タミーノが夜の女王の娘パミーナの肖像画を眺めながら歌う愛の歌。「娘っ子か、かわいい奥さんをひとり、パパゲーノ様はお望みだ！」は第2幕でパパゲーノが歌う、グロッケンシュピールの合いの手も楽しいアリア。「恋すりゃ誰でもうれしいさ」は、第2幕でパミーナにちょっかいを出す奴隷頭のムーア人モノスタトスが歌う。
　《ドン・ジョヴァンニ》（全2幕）は、1787年に作曲されたダ・ポンテ三部作の1つ。「さあ、窓辺においで」は、第2幕第3場で従者レポレッロに扮したドン・ジョヴァンニが、ドンナ・エルヴィーラの美しい小間使いを口説くために歌うセレナード。「私に言わないでください 私の美しいあこがれの人よ」は、第2幕第13場でドンナ・アンナがオッターヴィオへの真実の愛を歌う。

　長らく「フルート協奏曲 第2番」とされてきたが、20世紀になって関連資料の発見が相次ぎ、オーボエ協奏曲が原曲で、フルート協奏曲はその編曲だったことが判明。1777年、モーツァルトがザルツブルクを出立する前に、当地の宮廷楽団にいたオーボエ奏者ジュゼッペ・フェルレンディスのために作曲されたと考えられている。
　3楽章からなり、第1楽章は、協奏風ソナタ形式。軽やかな音楽の喜びにあふれた楽章。第2楽章は簡略化されたソナタ形式で、堂々とした導入部に続いて、美の極致のような息の長い旋律をオーボエが歌う。第3楽章は愉しげなロンド風ソナタ形式で、全楽章の終わりにカデンツァが付けられる。

　原曲はショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番（1960）。ショスタコーヴィチの署名である「DSCH」の4音動機が用いられており、自身の過去を振り返るかのように、自作からの複数の引用が初めて取り入れられた作品である。弦楽合奏版への編曲を行なったのは、ショスタコーヴィチとも親交があったロシアの指揮者ルドルフ・バルシャイで、彼は他にもショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を編曲しているが、本曲はショスタコーヴィチ自身がとくにその出来栄えを気に入って「室内交響曲」と命名した。
　全て短調からなる全5楽章は、間断なく演奏される。第1、4、5楽章がラルゴ、あいだに挟まれた第2、3楽章がアレグロ系という構成。死神の嘲笑的な踊り、突き刺すような苦痛、終わりのない嘆きの歌が、鋭く、そしてシニカルに描かれる。