JOURNAL

ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

外国人出演者の入国──コロナ禍の来日実現まで(2/3)

桜の季節があっという間に駆け抜けていった上野公園。今は鮮やかな新緑に包まれて初夏のような清々しさです。中盤戦の東京・春・音楽祭。のこり期間の公演を充実した内容でお贈りできるよう、今できることに全力で取り組んでまいります。どうかご声援ください! 「ふじみダイアリー」では、ハルサイにまつわるさまざまな話題をピックアップしてお伝えしています。

 外国人出演者の入国許諾申請について、関係省庁とやりとりを始めた私たち東京・春・音楽祭。

「関係省庁に申請するので、協議依頼を提出せよ」

 3月19日(金)に文化庁から届いた書式にしたがって、週末に大急ぎで協議依頼の書類を作成して文化庁へ提出しました。これが通って、4月15日初日のプッチーニ・シリーズ《ラ・ボエーム》がぎりぎり開催できることを祈って。1都3県の緊急事態宣言が解除された翌日の3月22日(月)です。しかし期待はあっさりと砕け散りました。

 このとき初めて、入国は4月1日以降という日程が示されたのです。愕然としました。申請が通れば、3月22日の週にでも入国できるようなニュアンスだったのに。2週間の隔離を計算すると、それでは《ラ・ボエーム》もイタリア・オペラ・アカデミーも間に合いません。

 さらに、提出した《ラ・ボエーム》の指揮者・歌手の経歴では条件を満たせないという見解も示されました。「条件」といっても明確な指針があるわけではないのですが、審査の目安のひとつとして、世界トップクラスの演奏家であることが必要だとは示されていました。では何をもってトップクラスと判断するのか。協議依頼の書式には数行の経歴記入スペースしかなく、そこにはいわゆるプロフィールではなく、国際的な受賞歴を記すようにということでした。文化庁から関係省庁に申請するにあたって、演奏家としての価値を端的に示すのは受賞歴しかないというのがご意見です。

《ラ・ボエーム》はもともと若手中心の上演というのがコンセプトの企画だったので、出演者には「国際的な受賞歴」はほとんどありません。とくに、歌唱時の飛沫感染の危険性が取り沙汰されている声楽家陣については、より慎重に判断したいという意向もあるようでした。協議依頼を出したとしてもたいへん時間がかかるうえ、結果がどうなるかわからないと言われ、泣く泣く開催中止を決断せざるを得ませんでした(3月26日公式発表)。

 

 このやりとりのなかで、窓口になってくれている文化庁の担当者の方から、ちょっと気になる発言がありました。ムーティだけだったら、招致の必要性を立証しやすいので、許可が出やすいというのです。

 私たちの窮状を見て助け舟を出してくれたのかもしれません。だとしたら気持ちはありがたいのですが、それでは意味がありません。ムーティの目下のライフワークである「イタリア・オペラ・アカデミー」の中核をなすのは、若い指揮受講生たちがマエストロのレッスンを受けるマスタークラスです。そして公演では若い歌手たちが歌います。それによってムーティはイタリア・オペラの真髄を継承しようとしているのです。

 私たちは、くれぐれもムーティだけを優遇せず、受講生や若手歌手たちも含めて、パッケージで審査してほしいとお願いしました。上述のように《ラ・ボエーム》の若手歌手たちの入国は認められなかったわけですから、大いに不安はありました。しかしそれなしでは成立しないプロジェクトなのです。すべてかゼロかに賭けるような気持ちでした。

(つづく)

 


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