1778年にパリで書かれた2楽章からなる作品。プファルツの選帝候妃に捧げられた6曲（K301～K306）の中の1つ。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタではめずらしく短調で、表現も劇的であるところから人気が高い。モーツァルトの母アンナがパリで亡くなった時期にあたり、とくに第2楽章テンポ・ディ・メヌエットには痛切な悲しみが表われている。

　ハープの名手アッセルマンに師事し、その後任としてパリ音楽院ハープ科教授となったマルセル・トゥルニエは、近代フランスのハープ音楽に多大な貢献を果たした。ハープ独奏のための《映像》（全4組曲）は彼の代表的な作品集。3曲を収めた第4組曲は、ハープの繊細な音色の美しさによって、各標題のイメージがふくらむ幻想的な作品となっている。

　全6曲の《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》は、ケーテン宮廷楽長時代（1717-23）前半の所産とされる。うち3曲あるパルティータには、楽章の大半に舞曲の名称が見てとれ、このパルティータ第3番には、軽快で明るい印象の舞曲が並ぶ。とくに第3楽章ガヴォット・アン・ロンドーは有名な曲で、単独で奏される機会も多い。

　ロッシーニやベッリーニと同時代の代表的なイタリア・オペラの作曲家ガエターノ・ドニゼッティの知られざる室内楽曲の一つ。5分にも満たない短い曲で、オペラのアリアのような名旋律を聴かせるラルゲットと、ベートーヴェンの恋敵ガレンベルク伯爵の名を付した快活な舞曲風のアレグロ・ガレンベルクの2つの部分からなる。

　ルイジ・マウリツィオ・テデスキはイタリアの作曲家。2つの世界大戦を含む激動の時代を生きたが、音楽は優しさに満ちたものだった。本曲は、1902年に作曲されたハープとヴァイオリンのための作品。甘くささやきかけるようなセレナードである。

　軽妙洒脱な作風で知られる20世紀フランスの作曲家ジャック・イベール。彼の作品のなかでも人気の高い本曲は、1935年に自身が作曲した付随音楽中の一曲であったが、37年にフルート（またはヴァイオリン）とギター（またはハープ）のための作品として出版された。濃厚なスペインの香り漂う旋律が繰り返され、眩惑されるような効果を生む。

　1877年初演の歌劇《サムソンとデリラ》（全3幕）はサン＝サーンスの歌劇の代表作。旧約聖書「士師記」第13～16章にもとづく、怪力サムソンと、怪力の秘密を探ろうと誘惑するペリシテの美女デリラの物語。「あなたの声に心は開く」は、その第2幕第3場で、デリラが歌う美しいアリア。
　長命を得たサン＝サーンスが1907年、72歳で作曲した「ヴァイオリンとハープのための幻想曲」。全体は大きく5つの部分に分けられる。第1部では即興的な下降音型の主題が示され、第2部は自由に羽ばたくのびのびとした旋律が歌う。第3部は5拍子主体でヴァイオリンの急速な32連符が特徴的。第4部はハープが繰り返す2小節の主題に乗ってヴァイオリンが変奏を展開する。第5部は冒頭の回想に続いて、ポコ・アダージョのコーダで静かに曲を閉じる。