50曲以上あるハイドンのピアノ・ソナタのなかでも人気のある曲で、1773年の作。第1楽章はソナタ形式。2つの主題にハイドンの軽やかな魅力が詰まっている。第2楽章はシチリアーノ風。二部形式で、ロマン派のような詩情を醸す。フィナーレの第3楽章はソナタ形式で、第1楽章よりも簡潔に書かれている。

　全6曲からなる《楽興の時》の作曲年代は定かではないが、1823～28年のあいだに書かれたとされる。出版は1828年。第1番は三部形式。装飾音のついた素朴な旋律で始められる。中間部では3連符が小川のように穏やかに流れ、冒頭を再現して終わる。第2番はロンド形式。落ち着いた変イ長調の主題と、対照的な嬰ヘ短調のエピソードが強い印象を残す。第3番は、短いながらも広く知られた曲で、ロシア風のメロディは誰しも聞き覚えがあるだろう。第4番は三部形式。右手の無窮動風の動きを低音部がスタッカートの8分音符で支える。中間部のシンコペーションで気分が優しくほどける。第5番は三部形式で、行進曲風の強い打鍵で始まり、中間部で目まぐるしく転調して、即興性を感じさせる。第6番は三部形式。コラール風の重厚な和声進行のなかで、シューベルトならではの転調が頻繁にさり気なく行なわれ、その自在さに驚かされる。

　本曲は「ピアノ五重奏」と言っても、ピアノに4種の弦楽器（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）が加わるという一風変わった編成となっている。作曲は1819年とされ、全5楽章構成。第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェは、ピアノの分散和音で幕を開け、豊かな低音に支えられてヴァイオリンやチェロが主題旋律を優美に歌う。第2楽章アンダンテでは、叙情的な気分にいくぶんメランコリックな影が差すものの、第3楽章プレストで気分を一新して、躍動的なスケルツォとなる。そして最大の聴きどころである第4楽章の主題と変奏によるアンダンティーノは、最も有名な楽章。作品の愛称にもなっている歌曲「ます」D550のメロディが用いられ、最初はゆったりと、そして次第にテンポを上げながら変奏されていく。第5楽章アレグロ・ジュストは、軽やかな民俗舞曲調の主題に明るく歌うメロディが加わって小結尾を迎え、後半は移調してまた清々しい気分の変転を繰り返したのち、曲を閉じる。