フォーレがヴェルレーヌの詩に集中的に付曲するきっかけとなった曲で、1887年に作曲された歌曲集《2つの歌》所収。編曲者はフランスの女性作曲家メラニー・ボニスで、「メル・ボニス」名義で多くの作品を残した。久しく忘れられた存在だったが、近年、作曲家として再発見されつつある。

　ドビュッシーの《前奏曲集》は全2巻（各12曲）からなり、第1巻は1909～10年、第2巻は1911～13年にかけて作曲された。小品集でありながら、作曲語法の先駆的な試みや美しさの点で、ドビュッシー後期の重要作品と見なされている。「ヒースの茂る荒れ地」（第2巻）は、薄紫色のヒース咲く荒れ地のように、優しい牧歌的な旋律が流れる。「雪の上の足跡」（第1巻）は、足を引きずるような重たいリズムに寂寥感がにじむ。「ヴィーノの門」（第2巻）は、グラナダのアルハンブラ宮殿にある門。ハバネラのリズムがスペイン情緒へ誘う。

　「マ・メール・ロワ」は、フランス語で「マザー・グース」のこと。全5曲からなるピアノの連弾組曲で、1908～10年にかけて作曲された。シャルル・ペローの童話などを素材としており、「親指小僧」は神秘的な森をさ迷う親指小僧の不安を描き、「妖精の園」はゆったりとしたワルツに乗ってこの世ならざる壮麗な世界へ至る。

　「バルカローレ（舟歌）」は、水の都ヴェニスのゴンドラの歌に由来する歌曲・器楽曲で、漕ぎゆく舟と波のように揺れるゆるやかなリズムが特徴。フォーレの舟歌は13曲あり、作曲家としての活動期を通じて書き継がれた。第3番は1885年の作で、変ト長調というフラットの多い調で書かれている。

　ドビュッシーの《映像》は、ピアノ曲の第1集（1904～05）と第2集（1907）、管弦楽曲の第3集、さらに生前には出版されなかった《忘れられた映像》を加えると、全部で4集（各3曲）を数える。第1集冒頭を飾る「水の反映」は、水面に映る風物がさまざまに姿を変えていく。第2集の最後に置かれた「金色の魚」は、ドビュッシーが持っていた日本の蒔絵に描かれた錦鯉にインスピレーションを得たという。

　1899年にラヴェルが書いた傑作。「亡き王女」のモデルは17世紀のスペイン王女マルガリータと言われているが、葬送曲というわけではなく、「昔のスペイン宮廷で小さな王女が踊ったパヴァーヌ」といった意味。パリのルーヴル美術館にはベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画があるが、ラヴェルもそれを見たという。

　「アナカプリの丘」（第1巻）は、見晴らしの良いナポリの丘を連想させる心地よい音楽。「亜麻色の髪の乙女」（第1巻）は、ルコント・ド・リールの詩に想を得た曲で、親しみやすい楽想から単独で演奏されることも多い。「風変わりな“ラヴィーヌ将軍”」（第2巻）では、軽妙なケークウォーク（黒人のダンス音楽）のリズムが用いられている。