本日のプログラムはすべてチェロ四重奏にて演奏される。

　チェリストにとっては今や定番中の定番だが、筆写譜が発見されたのは1961年で、翌年チェコの名チェリスト、ミロシュ・サードロにより蘇演された。作曲時期は1765～67年頃で、ハンガリーの名門貴族エステルハージ侯に仕えていたハイドンが、同じくエステルハージ家に仕えていたチェリストのヨーゼフ・ヴァイグルのために書いたとされる。全3楽章からなり、リトルネロ形式などバロック音楽の名残も見られるが、両端楽章はソナタ形式で書かれており、バロックと古典派が融合したかたちになっている。ハイドンならではの優雅な旋律美を堪能できる初期の傑作である。

　「ロココの主題」とあるが、チャイコフスキーのオリジナル。序奏に続いて主題と7つの変奏が展開する。1876～77年にかけて、親交のあったドイツ人チェリスト、ヴィルヘルム・フィッツェンハーゲンのために作曲され、彼に献呈された。チェロ独奏と管弦楽という編成だが、タイトルに「協奏曲」の名は与えられていない。単一楽章構成で、本来は変奏が8つあった。フィッツェンハーゲンが初演時に第8変奏をカットし、曲順も変えてしまったが、作曲者もそれを黙認したことから、現行のバージョンとなった（近年は原典版が演奏されることもある）。

　サン＝サーンス37歳、1872年の作。同時期には歌劇《サムソンとデリラ》等も書かれた。3部構成だが、間断なく演奏される。第1部はソナタ形式。インパクトのあるオーケストラの一打で始まり、痺れるような魅力ある第1主題、緩やかに歌う第2主題が続く。第2部は愛らしい主題の短いスケルツォ。第3部には再び第1部の第1主題が回帰して朗々と歌い、全体の統一が図られている。

　シューマン唯一のチェロ協奏曲。交響曲第3番《ライン》等も生まれた1850年の作で、シューマンのデュッセルドルフ時代を代表する秀作。初演は没後10年を経た1860年。3楽章構成だが、切れ目なく演奏される。チェロは管弦楽と対立するのではなく、管弦楽と調和する一楽器として扱われているため、存在感を示すには高度な技術が必要とされる。第1楽章はソナタ形式。弦のピチカートで始まり、すぐにチェロがロマンティシズムあふれる第1主題を奏する。さらに夢見るような第2主題が続き、非常に短い第2楽章を経て、第3楽章は自由なソナタ形式。冒頭から伴奏の和音と対話するようにチェロの主題が始まり、最後には伴奏付きのカデンツァが置かれている。