JOURNAL

ハルサイ的「世界街歩き」

リガ

プラハ、ウィーン、バイロイト 、ラヴェンナ…。
2005年に「東京のオペラの森」としてスタートし、2009年より「東京・春・音楽祭」として新たな幕開けをした音楽祭。
その16年の歩みの中で縁の生まれた、世界の街の数々をご紹介していきます。さあ、一緒に世界旅行へ。

 写真を見てください。かわいい街ですね~。
 ここはリガ。

 リガ?

ラトヴィア共和国の首都リガ

 「リガ」と聞いて、すぐどこどこの国の首都で場所はこのあたり、とわかる方は相当の通だろうなァ・・・と思います。リガはラトヴィアの首都。ラトヴィアはリトアニア、エストニアとともにバルト三国の1つで、ドイツや北欧、そしてロシアに近いところです。(地図をご参照ください)

 バルト三国というと、ひと昔前は、ひょっとするとロシアの一部と思われていた方々が多いかも。実際ソ連時代はその一部だったのですが。しかし今は3つの国とも独立して、ラトヴィアはむしろドイツの文化圏といってもいい国です。

 さて、そのリガ。音楽ファンにとってはなかなかの場所ですよね。何しろここ出身の名演奏家の多いこと!ヴァイオリンのギドン・クレーメル、チェロのミッシャ・マイスキー。指揮ではマリス・ヤンソンスに、彼の弟子でかつて「東京・春・音楽祭」にも出演するはずだったアンドリス・ネルソンス(東日本大震災直後で、来日が不可能となったのです)。そして歌手ではメゾソプラノのエリーナ・ガランチャに、「東京・春・音楽祭」でワーグナー・オペラの諸役を歌ったバス・バリトンのエギルス・シリンス。この人はまさしくリガにあるラトヴィア国立歌劇場の総監督でもあります。(ワーグナーといえば、彼もまた19世紀中頃、この地のオペラハウスに赴き、自らのオペラをいくつも上演していました)

 前回のモスクワ編でどうしてロシアからはこんなに天才がたくさん出現するんだろう?と書きましたが、近くのリガから出る音楽家もこのようにすごいものです。

 そんな凄さとは裏腹に、冒頭に書いたようにリガの街は歩くと色とりどりで可愛らしい。プラハがおとぎの国のようなら、ここはおもちゃの国? インスタ映え間違いなしですね。
 その中にオペラハウスや博物館のある重厚古風な旧市街もありますし、こうした新しさと古さの共存は魅力です。リガは「バルト海の真珠」と呼ばれ、旧市街は世界遺産に選ばれているのです。

 振り返るとリガは、中世13世紀にはドイツのハンブルクなどと同じく、自由都市としてハンザ同盟の一つとなって繁栄を迎えた都市でした。その後スウェーデン王国やロシア帝国に支配され、第1次世界大戦中にはドイツ領となり、第2次大戦では再びロシア(ソ連)領に。独立したのはソ連が解体したのと同時の1991年です。しかしこれだけ宗主が変わっても人民はバルト系ドイツ人。だから文化圏としてはドイツ寄りなのですね。

中央市場の花屋/©Jorge Franganillo via photopin

 ちなみにバルト三国のほかの2つ・・・エストニアはフィンランドと、リトアニアはロシアと文化的に近しいものがあります。
 バルセロナ編のときに出てきた司馬遼太郎さんの「ネーションとステートは違う」という言葉を思い出します。文化はネーションの方に連動するものだと。

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