JOURNAL
ハルサイジャーナル
ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局
日本の若手実力派歌手の皆さんが出演する、若い音楽家による《マクベス》を絶対にお見逃しなく!
目の覚めるような鮮やかな若葉の緑に包まれて、東京・春・音楽祭もいよいよ終盤を迎えました。さまざまな変更を余儀なくされた今年の音楽祭ではありましたが、あとはゴールを目指してラストスパートあるのみ。どうかご声援ください! 「ふじみダイアリー」では、ハルサイにまつわるさまざまな話題をピックアップしてお伝えしています。
4月9日(金)のリッカルド・ムーティによる《マクベス》作品解説で幕を開けた「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」が、早くも後半戦に入りました。日程後半の演奏会形式上演に向けて進んでいるのが、アカデミーの本体ともいえる指揮受講生のレッスンを兼ねた白熱のリハーサル。残念ながら今年に限っては聴講生なしのため、私たちも無料配信の映像で見学しています。
指揮受講生は4人。チヤ・アモスさん(シンガポール)、ヨハネス・ルーナーさん(アメリカ/ドイツ)、そして日本の高橋達馬さんと湯川紘惠さん。アモスさんとルーナーさんは、2019年の第1回「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京(リゴレット)」からの連続受講ですが、日本の2人は、じつは10日のアカデミー講義の前に行なわれたオーディションで受講が決まったばかり。二人とも、昨年のラヴェンナの「イタリア・オペラ・アカデミー」の一次審査を通過したものの、コロナ禍で二次審査に参加できなかったという悔しい経験をされていて、今回はまさに念願かなってのアカデミー参加です。
場面ごとに交代で指揮する4人に、マエストロがスコアの解釈や指揮のジェスチャなどを細かく指導していきます。
「ちょっと硬くなっていますか? 私は世界で一番やさしいでしょう? 教えることなど何もないのです。経験を伝えているだけ。リラックスしてください」
初日、2日目は、受講生たちの緊張感が画面を通しても伝わってくるような気がしましたが、レッスンが進むにつれてマエストロとのコミュニケーションも深まっているようで、会場の雰囲気がやわらかくなっているのを感じます。レッスン中はムーティが自ら指揮してやり方を示すことも頻繁で、オーケストラがそれに反応して、途端に表現が変わるのもありありとわかります。若い指揮者たちにとっても、得難い貴重な体験のはずです。
アカデミーのプログラムには今回新たに、その受講生たちが指揮する公演「リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》(抜粋/演奏会形式/字幕付)」が加わりました[4月20日(火)・ミューザ 川崎シンフォニーホール]。この公演で歌うのが、9日の作品解説のステージにも登場した日本人歌手の皆さんです。
彼らにも連日、ムーティの丁寧で厳しい指導が飛びます。イタリア語の発音や、言葉の背景にある文化や歴史、そしてそれらをヴェルディがどのようにスコアにしているのか。ムーティの教えにいっさいの妥協はありません。でも、すでに実績もキャリアもある躍進中の若手歌手の皆さんだけあって、アドヴァイスの結果が、どんどん高いレベルで形になっていく様子は見ものです。とくに出番も多い主役の二人、マクベス夫人の谷原めぐみさん(ソプラノ)とマクベスの青山貴さん(バリトン)の素晴らしさ! 日本の声楽界の底力に、マエストロも内心驚いているのではないかなどと妄想して、ほくそ笑むような頼もしさを感じています。本番が待ち遠しいです。
ムーティの指揮する4月19日(月)、21日(水)の公演(東京文化会館)はもちろん、マエストロがみっちり鍛え上げた若手実力派の歌手たちが出演する「若い音楽家による《マクベス》」にも、大いにご期待ください。