JOURNAL

ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

マエストロもリモート出席── 開催中の音楽祭についての記者会見を開きました

桜の季節があっという間に駆け抜けていった上野公園。今は鮮やかな新緑に包まれて初夏のような清々しさです。中盤戦の東京・春・音楽祭。のこり期間の公演を充実した内容でお贈りできるよう、今できることに全力で取り組んでまいります。どうかご声援ください! 「ふじみダイアリー」では、ハルサイにまつわるさまざまな話題をピックアップしてお伝えしています。

 約1か月の開催期間の折り返し地点を回った東京・春・音楽祭2021。4月8日には、鈴木幸一実行委員長、芦田尚子事務局長らが出席して、記者会見を行ないました。

会期中の会見は異例ですが、いつもは前年の秋に開いている発表会見を見送ったこともあり、実行委員長・鈴木からご挨拶申し上げるとともに、今年新たにスタートした全プログラムのライブ・ストリーミング配信などについてご説明させていただきました。

 会見には、翌9日からスタートする「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2」に備えて都内の宿泊施設で隔離待機中だった指揮者リッカルド・ムーティもリモート出席。

「世界が大きな危機を迎えている時期に、この素晴らしい音楽祭を開催し、困難を乗り越えて私たち外国人を迎えてくださった勇気に感謝します。私は50年も、ヴェルディに対する裏切りと戦ってきました。(このアカデミーが)《マクベス》の真髄を説く機会になることを願っています」

 と、「ムーティ節」も交えながら、アカデミーに対する並々ならぬ思いを熱く語りました。

 

 巨匠がイタリア・オペラの真髄、ヴェルディの魂を次世代に伝えるイタリア・オペラ・アカデミー。今年は《マクベス》をテーマに、4月9日(金)のムーティによる作品解説から、4月19日(月)21日(水)の演奏会形式上演まで13日間にわたって開催中です。奮ってご参加ください。


【ムーティのコメント要旨】

 

 世界が大きな危機を迎えている時期に、この素晴らしい音楽祭を開催し、困難を乗り越えて私たち外国人を迎えてくださった勇気に感謝します。

 音楽家というのはただの職業ではなく、使命であると思っています。音楽は、若い人たちを成長させるために重要な芸術です。その意味において、日本は世界の模範となる存在です。この音楽祭は、世界の人々に称賛されるべき仕事だと思います。

 この待機期間が早く終わって、皆さんと一緒に勉強できるときが待ち遠しくてなりません。

 私は50年も、ヴェルディに対する裏切りと戦ってきました。この素晴らしい機会が、《マクベス》の真髄を説く、そしてヴェルディという作曲家がこれまでいかに誤って理解されてきたかを深く追求する機会になることを願っています。幸運なことに、若い人たちに私のメッセージが伝わってきているのを感じています。
 多くの国々で、強い大きな声で叫んだり、アクート(高音)で伸ばしたりするのが、「イタリア・オペラ」の表現だと思われています。これは本当に間違いです。

 強い意志を持って、ヴェルディという作曲家を、モーツァルトやワーグナーのように大事にしてくれる機会を作っていきたいと思っています。だからこの機会に、オーケストラとともにモーツァルトの作品を演奏することを提案しました。日本のオーケストラ、合唱団は本当に素晴らしいと思っています。

(Q:《マクベス》は1847年の初演版と1865年の改訂版、どちらで演奏するのか?)
 現在、通常用いられているのは1865年の改訂版です。とくにオーケストラ・パートが非常に洗練されています。マクベス夫人のアリア〈光は萎えて〉や合唱が改稿され、バレエ音楽が加えられました。ヴェルディはもちろんこちらを気に入っていました。ただちょっと皮肉なことに、フィレンツェの初演は大成功だったのに、パリで初演されたこの改訂版は残念ながらあまり大きな成功を得ることができませんでした。
 私がフィレンツェ五月祭劇場の音楽監督だったときの話を加えさせてください。《マクベス》が初演されたフィレンツェのペルゴラ劇場で、そのときにヴェルディが座って指揮したという木製の椅子が残されているのを見ました。けっしてきれいな椅子ではなく、素朴な木のイスでしたよ。

(Q:コロナ禍で演奏機会を失っている若い音楽家にどんな言葉をかけたいか?)
 この恐ろしい期間が去ったとき、社会は必ずや、精神を育成する糧を必要とするでしょう。ですからその将来に向けて、頑張って音楽を続けていきましょう。
 聖アゴスティーノはこう言っています。
「Cantare amantis est. (歌うことは愛する行いである)」

(Q:理想のマクベス役は? 今回のキャスティングの基準は?)
 私たちが忘れてはいけない最高の《マクベス》は、ヴィクトル・デ・サバタの指揮でマリア・カラスが歌ったスカラ座のライヴです(編注:1952年録音。マクベス役はエンツォ・マスケリーニ)。
 マクベスとマクベス夫人は非常に難しい役です。というのは、ヴェルディ自身が、あまり美しい声でない声を求めているのです。初演のとき、マクベス夫人を歌うはずだったソプラノのエウジェーニア・タドリーニを、ヴェルディは声が美しすぎるからこの役には使いたくないと拒否したほどです。
 言っておきますが、今回私が選んだ歌手たちの声が美しくないという意味ではありませんよ。間違えないでくださいね。
 私がほしいのは知的な人です。

[通訳:田口道子]




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