JOURNAL

ジョージ・ベンジャミン《小さな丘へ》(Into the Little Hill)とは

ロバート・ブラウニングの『ハーメルンの笛吹き男』のためにケイト・グリーナウェイが描いた挿絵

ベンジャミンが、劇作家マーティン・クリンプ(Martin Crimp)と初めてタッグを組んだ2006年の作品。東京・春・音楽祭2026で日本初演となる本作は、約40分の室内オペラ形式をとっているが、「オペラ」ではなく、「リリック・テイル(Lyric Tale)」と銘打たれている。

◼︎作品の背景と設定
物語のベースは、有名な伝承「ハーメルンの笛吹き男」だが、単なるお伽噺ではなく、現代社会の政治的寓意や心理的恐怖を含んだダークなドラマとして再構築されている。

◼︎登場人物
ソプラノとコントラルト(アルト)の女性歌手2名。 この2人が、代わる代わる「語り手」「群衆」「大臣」「大臣の妻」「見知らぬ男(笛吹き)」「子ども」など全ての役を演じ分ける。


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◼︎あらすじ

第1部

I. 群衆
「ネズミを殺せ。やつらは盗む。俺たちの物をダメにする。ネズミを殺せばあんたに投票してやるぞ」

II. 大臣と群衆
選挙前夜、群衆が大臣にネズミを殺せと要求する。ネズミは自分たちの財産に損害を与えるというのが、群衆の言い分だった。大臣はネズミを擁護し、ネズミにも社会の中に居場所があることを示そうとする――「ネズミは私たちの友だちだ」。

III. 群衆
しかし、群衆は殺せ殺せと繰り返すばかり。

ハーメルンの街並み


IV. 大臣と見知らぬ男
眠れない夜、大臣は娘の寝室で、顔のない見知らぬ男が「わが子の上に身を屈めている」のを発見する。問い詰めると、男は音楽を使って部屋に入ったのだと言う。「俺は音楽の力で心を開かせることができる/扉を開けるようにたやすく/そして手を伸ばす/奴隷たちを工場まで行進させることも/雲を辛抱強く解きほぐすこともできる/音楽の力で死を食い止めることもできる/ネズミだって、なだれを打って世界の縁から落ちていく/どうするか決めるのはおまえだ」。大臣は男に、ネズミを殺して自分が再選されたら大金を支払うと約束する。男は、眠る子どもにかけて約束を守ると誓わせると、仕事に取りかかる。

V. 母と子ども
大臣の子どもが母親と窓辺に立って、ネズミの大群が通り過ぎるのを見ている。「ママ、どうしてネズミは死ななきゃいけないの?」女の子は言う。「私たちが鍵をかけてしまってあるものを盗むからよ」母は答える。「ネズミは人間ではないのよ」。しかし子どもにとっては、ネズミは人間そのものだ。ネズミは、コートを着て赤ん坊を抱いている。大臣の妻は、子どもを安心させようとする。「ネズミが帽子をかぶってコートを着て赤ちゃんを抱いているなんて、絵本の中だけよ」。そして、ネズミたちは「立派に」死ぬのだときっぱり言って、子どもを窓辺から引き離す。

第2部

VI. 大臣の頭の中
大臣は再選される。頭の中では群衆の「感謝の叫び」が聞こえ、心臓が奇妙な音を立てている。

VII. 大臣と見知らぬ男
見知らぬ男が、「駆除」の報酬を受け取るために戻ってくる。大臣は、ネズミは駆除されたわけではなく「自分たちの自由意志で去った」のだと言いたてる。大臣は、見知らぬ男には何も負うところはないと言い張り、音楽は「偶然」で、金を払う必要はないと付け加える。男が、大臣は眠る我が子に誓って約束を守ると言ったではないかと思い出させると、大臣は怒って男を追い払う。

VIII. 母(たち)と子ども(たち)
町中で、母親たちが目を覚ましてみると子どもたちが夜の間に姿を消していた。大臣の妻は取り乱して大臣に尋ねる。「私の子どもはどこ?」。妻には、子どもたちの声が聞こえる。自分たちは「小さな丘の中の」地中で、光に向かって掘り進んでいるのだと。嘘をつくのはやめて帰って来なさいと言うと、子どもたちはここが自分たちの家だと答える。

「ここがぼくらの家。ぼくらの家は土の下。土の下の天使といっしょ。深く掘れば掘るほど、音楽がまぶしく輝く。

見えないの?
見えないの?
見えないの?」


©︎2007 マーティン・クリンプ
翻訳:中村ひろ子
台本作者マーティン・クリンプによるあらすじに一部補筆

関連公演

アンサンブル・アンテルコンタンポラン I

日時・会場

2026年4月4日 [土] 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール

出演

ソプラノ:ジェニー・ダヴィエ
コントラルト:ジョアン・エヴァンス

 

アンサンブル・アンテルコンタンポラン
 指揮:ピエール・ブルーズ

 ヴァイオリン:ジャンヌ=マリー・コンケカン・ヘスン
 ヴィオラ:オディール・オーボワンジョン・ストゥルツ
 チェロ:エリック=マリア・クテュリエルノー・デジャルダン
 コントラバス:ニコラ・クロス
 フルート:ソフィー・シェリエ
 オーボエ:フィリップ・グラウフォーゲル
 クラリネット:ジェローム・コントマルタン・アダメクアラン・ビヤール
 トランペット:ルーカス・リパリ=マイヤークレマン・ソーニエ
 トロンボーン:ルーカス・ウニシ
 ツィンバロン:オーレリアン・ジニュー

曲目

クルターグ:《サイン、ゲームとメッセージ》より
岸野末利加:オーカース
クルターグ:《サイン、ゲームとメッセージ》より
岸野末利加:ノックス(金と銀)II
クルターグ:《サイン、ゲームとメッセージ》より
G.ベンジャミン:《小さな丘へ》(日本初演)

料金

全席指定:¥8,500 U-25:¥2,000

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