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超ビギナーのための配信楽しみ方指南〈前編〉

超ビギナーのための配信楽しみ方指南〈前編〉

開幕まであと3日!東京春祭では 、会場に足を運ぶのが難しい方にも楽しんでいただけるよう、2022年も高音質・高画質のライブ・ストリーミング配信を行います。
コロナ禍でぐっと身近になった配信ですが、皆さんはどのように楽しんでいますか?せっかくなので、ちょっとの工夫でよりよい音を楽しむ術があるなら知りたい!という春祭スタッフが、超初心者むけ・配信の楽しみ方をサウンドエンジニアの上村さんに脱線も交えつつゆるりと指南していただきました。

**教えてくれた人:上村一人(かみむら・かずと)さん**
株式会社アポロ代表取締役。コンサート、イベント、ミュージカル、ダンスなど様々な音響コーディネート・オペレートを行っている他、22.2サラウンドシステムや、収録、ストリーミング再生事業や放送事業なども手がけている。

**推奨環境**
今回の東京・春・音楽祭LIVE Streaming2022は、一般的なYouTube動画 よりもデータ量の多い高画質(4K、一部2K)・高音質(256Kbps)で配信を行います。Wi-Fi環境のあるところでお楽しみいただくのをお勧めします。

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——オーディオのことは全く素人ですが、どんなものがあれば気軽にもっと良い音を楽しめるのか、今日はいろいろ教えてください。
例えばスマホの本体から直接音を出した時、 それなりに音量を大きくしても、はっきり聞こえなかったり、ちょっと「うるさく」なっちゃいますよね。 これはなぜかと言うと、低音域が足りないのに中音域と高域だけが大きくなっていて、周波数的に低音から高音までのバランスが悪くなるので「うるさく」感じるんです。よりよい音で楽しむには、まずスピーカー、イヤホンなどを通じて聴くのをお勧めします。

一番手っ取り早くて安く済むのが Bluetooth のイヤホンだと思います。最近多い密閉型(耳にぎゅっと入れるタイプ)は周りの雑音が入りにくく音漏れも少ないです。僕が使ってるのは5000-6000円のものですが、ライブやリハーサルの音源を確認するのもほとんどこれでほぼ問題ないです。あとはスピーカーでも、Bluetooth スピーカー、Wi-Fi スピーカーなど種類がありますね。

——そもそもBluetooth 接続と Wi-Fi 接続、何が違うのですか?
Wi-Fiの方がスピードがあります。Wi-fiは届く範囲が広くて速度も速いのでデータのやりとりには有利ですが、電気も食うんです。だからイヤホンだと長時間使えないのであまり向いかないですね。Bluetoothは近い距離での一対一が基本で、省電力です。スピーカーもイヤホンも、Wi-Fi 接続用、Bluetooth接続用は別物なので、使う時はどちらに対応しているのかを確認する必要があります。今はBluetooth スピーカーの方が一般的ですね。だいたいBluetooth でこと足りるし、種類も多いし、価格帯も結構下がってきて手頃なものが多いです。

——検討するにあたって、予算「松・竹・梅」でおすすめのアイテムをうかがいたいのですが、例えばこの金額を出すと、グッとステージが上がる、というような価格ラインはありますか?
Bluetoothイヤホンでいくと3,000円位から10,000円位が梅、10,000円からが竹ですかね。音をチェックする時は、低域から高域まで綺麗にバランス良く再生されてるか、を見ます。高価なイヤホンになると、低域もすごく綺麗に再生されて、高域もハイエンドが伸びて一番上の高い所も綺麗に出るようになります。

——ハイエンドというのは、高い音のことですか?
人間の耳はだいたい20hz から20khz まで認識できるというデータがあります。高域は、ハイエンドってよく言うんですけど、例えば20 khz 位だとほとんど音としては認識できないけれど、実はちゃんと耳で感じているんです、無意識のうちに聞こえているというか。このハイエンドが割と(再生が)難しくて、良いものになるほどどんどん綺麗になってきて、それが「いい音」につながってきます。あと、イヤホンを作っている人たちは「耳のどこを刺激すれば低音が感じられる」という研究もしていますね。

それから、フルレンジ、2 way、3 wayなどの言い方がありますが、フルレンジは一つのスピーカーで低音から高音まで全部の音が出るという意味です。2 wayはウーファーとハイ、の二つに分かれています。周波数の中域あたりで切って、ウーファーは低音の下から1khz まで、ハイは1khzから20khz まで出す、というように分けているんです。ちなみに高音を出すのは小さくていいんですが、低音を出すのはパワーが必要なのでどうしてもウーファーは大きくなります。これらが一つの箱に入っている場合もあるし、それぞれが別の箱になっていて重ねる場合もあります。同様に3 waysは、低域を担当するウーファーと、中域を担当するスピーカーと、高域を担当するスピーカーというように音域を3つに分けて、3種類のスピーカーが一つになっているという訳です。こうして各帯域を分散させることによって各々の効率を上げるんですが、そこではハイ・ミッド・ローの境界が綺麗に混ざっているか、が大事になってきます。スピーカーだけじゃなくイヤホンの世界でも実は2 way、3 wayというのがあって、そうなってくると値段がガンガン上がってきます。20万とか。

——イヤホンで20万!すごいですね……。
耳鼻科で耳の型をとってメーカーに持っていくと、自分だけのオリジナルのイヤホンが作れるんです。安くて15万位から、高いのは30万とか。よくテレビやライブでアーティストが付けているイヤモニはこのクラスです。

——想像を超える世界でした……(笑)。では、もう少し現実的な松の境界ラインはどのあたりでしょう?
まあ30,000円台ですかね。何が変わるかというと……音はもちろん良くなります。さっき言ったような低音が綺麗になるとか高音まで綺麗に聞こえるとか、周波数のバランスが良くなっていく。ただここから先は好みが結構出てきて、実際に聴いてみないとなんとも言えないところもあります。イヤホンの場合は、密閉型がおすすめです。耳に入れて密閉することで外の音をシャットアウトできるので、そんなにめちゃくちゃ良くなくてもある程度良く聞こえます。

——密閉型というのは、よく聞くノイズキャンセリングとは違うんですか?
ノイズキャンセル機能がついているのもありますが別ですね。ノイズキャンセルは邪魔な外の音をシャットアウトして、イヤホンだけの音を楽しもうというものです。このイヤホンには実はマイクがついていて、拾った外の音の波長に、位相を反転させた波長をくっつけると音が消えるという仕組みです。十分効果あると思います。

——Bluetoothのイヤホンではどのメーカーがおすすめでしょうか?
ソニーとか、JBL、ゼンハイザー(SENNHEISER)、オーディオテクニカ、あとマイクロフォンのメーカーのシュアー(SHURE)あたりでしょうか。僕が買う時は、まずメジャーなメーカーから絞り込んでいきます。全然知らないメーカーは絶対買わないですね(笑)。変なメーカーのものはわりと短期間で壊れます。音は好みが分かれるので、できれば試聴してみるといいですね。今はコロナなのでできるかわかりませんが。それから密閉型のイヤホンを買うとだいたい3種類ぐらいの大きさのゴムがついてくるので、それで自分の耳に合うものを選んでもらうと良いと思います。

——なるべく耳に密着するように、ちゃんとゴムも調節すると。

……後編(スピーカー&ヘッドホン、まとめ)に続きます。

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