JOURNAL

ハルサイ的「世界街歩き」

シカゴ

プラハ、ウィーン、バイロイト 、ラヴェンナ…。
2005年に「東京のオペラの森」としてスタートし、2009年より「東京・春・音楽祭」として新たな幕開けをした音楽祭。
その16年の歩みの中で縁の生まれた、世界の街の数々をご紹介していきます。さあ、一緒に世界旅行へ。

アメリカ合衆国中西部イリノイ州シカゴ

 ヨーロッパから今度は「新世界」アメリカに飛んでみましょう。もっとも私たちにとって、アメリカが新世界だなんて今ではピンときませんが。しかしヨーロッパの植民地時代を経て、ついに独立・建国を果たしたのが18世紀後半ですから、何といっても新しい国です。日本よりはるかに若い。

 さて今回、目を向ける都市はシカゴです。

 皆さん、シカゴというとどんなイメージをもたれますか?もちろん音楽ファンの方々にとって、ここはシカゴ交響楽団のある街!となりますでしょうが、ちょっと年配世代ですとギャング映画?工業が中心の都市?ブルースの漂う街・・・等々でしょうか?

 シカゴがあるのは、アメリカ北部の内陸は五大湖の近く。折しも先日、あまり愉快ではない事件で盛んに報道されたイリノイ州にあります。内陸ですから夏は暑く冬は寒い。アメリカではニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ第3の都市で、写真のようにNYや香港なみの高層ビルが林立する摩天楼が。

 かのエイブラハム・リンカーンがここを地盤として1861年に第16代アメリカ大統領になった、ということでも有名です。そういう面で言うと、同年から始まった南北戦争にも大きく関わった土地ということもできるかもしれません。

 文化では先にも触れましたが、ブルースやジャズのメッカ、というほか、シカゴ響(CSO)に代表されるクラシック音楽の盛んな街です。アメリカには基本的に「官」のオーケストラはなく、「民」の熱意でできるのです。CSOは創設当初こそ、フィラデルフィア管やボストン響に一歩譲る楽団でしたが、20世紀半ばからは押しも押されぬ全米最高、世界でも屈指の存在となりました。シカゴ市民の熱意もきっと後押ししたのでしょうね。

 CSOの現在の音楽監督は、「東京・春・音楽祭」でもおなじみ、今や音楽祭のメンター(師)の一人ともいうべき現代最高の指揮者、リッカルド・ムーティです。彼が率いるCSOの日本公演も何度か行われ、ベルリン・フィルと肩を並べるような、驚くべきシャープでパワフルな技量を見せつけられたものですが、そういえばそれはシカゴの街の摩天楼や精密機械工業をイメージさせるものであったかもしれません。もっともCSOは昔からそうでした。ムーティ以前も、一人一人が長くじっくりと務め上げ、オケの状態を中抜けにはほとんどさせなかったこれまでの歴代の音楽監督たち―― ライナー、ショルティ、バレンボイムら大指揮者たちの功績ももちろんあるでしょう。

 「東京春祭」でムーティが指揮する演奏を聴くとき、皆さまにも彼の強力な統率力、偉大なイタリア的DNAのほかに、今やシカゴという都市の背景が感じられるかもしれません。ぜひ今度の機会にそんな要素の一片を探してみては?

リッカルド・ムーティの最新情報は公式サイトをご覧ください。
リッカルド・ムーティ公式サイト www.riccardomutimusic.com

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