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2023/03/03
【山田五郎おすすめ!!】
文化のコンソメに音楽のトリュフを添えて
【山田五郎おすすめ!!】文化のコンソメに音楽のトリュフを添えて
文・山田五郎(評論家)
©︎Koji Iida
上野恩賜公園の広さは約54ha。広大な印象がありますが、例えばニューヨークのセントラルパークと比べると6分の1にも満たず、世界の大都市にある公園の中ではむしろ狭い方です。けれどもその限られた敷地の中に、摺鉢山古墳や寛永寺五重塔や東照宮など長い歴史を物語る遺構が点在し、4つの美術館と2つの博物館、2つの音楽ホールに動物園や大学、図書館、資料館など、あらゆる文化施設が密集。その多くは収蔵品だけでなく建物自体も文化財なので、ただ散策するだけで歴史と文化に触れられます。これほど文化密度の高い公園は、世界にも例がないでしょう。
国立西洋美術館では「憧憬の地ブルターニュ展」が開催中。フランスのブルターニュは独自のケルト文化が残り、19世紀後半にゴーガンら多くの画家が訪れた土地。大竹奏さんのフィドルによる同地方の舞踏曲のコンサートにはダンサーも参加して、知られざるフランスのケルト文化を垣間見せてくれそうです。 抜群の音響を誇る東京文化会館で開かれる大コンサートの素晴らしさは言うに及ばず、美術と音楽の関わりを通じて文化への理解を深めてくれる「ミュージアム・コンサート」もまた、美術館や博物館が世界一密集する上野恩賜公園でしか味わえない贅沢な体験だと思います。
山田五郎 やまだ・ごろう(編集者・評論家)
1958年 東京都生まれ
上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し西洋美術史を学ぶ。
卒業後、㈱講談社に入社『Hot-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。
現在は時計、西洋美術、街づくりなど、幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。