JOURNAL

ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

「祭り」の賑わいを感じながら──音楽を撮る公式フォトグラファーのお仕事

東京の緊急事態宣言は予定どおり3月7日まで継続されるようです。月が明ければ春はもうすぐそこ。東京・春・音楽祭の開幕もいよいよ待ったなしですが、宣言解除後の先行きが見えないなかで、予測できない事態への対応も協議しながらの開幕準備に追われる事務局です。「ふじみダイアリー」では、開幕目前の準備の進捗状況や、音楽祭にまつわるさまざまな話題を綴っています。

 東京・春・音楽祭では、公演写真の撮影を公式フォトグラファーさんにお願いしています。今年で17年目の開催。蓄積された写真は膨大な枚数で、ハルサイの歴史を語る、貴重な資料となっています。2009年からずっと音楽祭を撮り続けてくれているのが青柳聡さん。コンサートの舞台写真や音楽家のポートレイト、新聞・雑誌の取材写真などで活躍する、日本では数少ないクラシック音楽専門の写真家の一人です。

 ハルサイも回を重ねるにつれて公演数が倍以上にふくらみ、別会場で3公演、4公演を並行して開催することも少なくないため、いまはチームを組んで撮影してもらっていますが、以前はほとんどの公演を青柳さんが一人で撮っていたことも。 

「一人で撮ってたよね。ホールで昼の公演を撮って、街に出て「桜の街の音楽会」を撮ってからホールに戻って夜のコンサートを撮って。自分も若かったからね。体力があった。いまはもう無理だよ(笑)」

 と青柳さん。とはいえ、いざ始まると「ハルサイ・モード」になるのだそうで、

「最初はちょっとしんどくても、身体が慣れてくるんだよ。季節も良いし、桜の街とか公園の花見客とかも含めて本当にお祭りという雰囲気。そういう賑やかな気分をそのまま持っていって『よっしゃ、ワーグナー!』となるわけですよ」

 もともと音楽ファンが高じて音楽の仕事をするようになったというだけに、演奏者や会場のお客さまの気持ちに寄り添って撮影してくれるのが青柳さんです。ミュージアム・コンサートでは、客席のあいだで撮影してもらうこともあるのですが、つねに演奏を聴きながら、フォルティッシモの瞬間に合わせて絶妙のタイミングでシャッターを切ってくれるから安心です。

「いまは(シャッター音のしない)ミラーレスのカメラもあるけど、昔はそんなのなかったからね。慣れてるだけですよ」

 そんな青柳さんの撮る写真は、まるで音楽の一瞬を切り取ったかのように生き生きとして雄弁。演奏家からの信頼も絶大です。たとえばリッカルド・ムーティ。世界的巨匠だけに、記録や広報用に残す写真のスタッフ・チェックも厳しいのですが、写真をマエストロの奥様に確認してもらいに行ったら、「あなたは、もうわかってるから大丈夫でしょう?」と言って認めてくれたそう。

 「ハルサイは、大人の本格的なプログラムをカジュアルに聴けるのがいいね」と、自分も楽しみながら仕事をしてくれる青柳さん。下の写真は後ろ姿ですが、黒づくめに黒いキャップがトレードマーク。皆さんも今度会場で探してみてください。気配を消し、息を潜めてカメラを構える、神出鬼没の青柳さんを発見できるかもしれません。





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