JOURNAL
ハルサイジャーナル
ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局
マエストロ、やる気満々! ムーティとWebミーティング
緊急事態宣言が延長された早春の東京。海外からの入国規制がどうなるのかなど、先行きが見えないなかで、予測できない事態への対応も協議しながらの開幕準備に追われる東京・春・音楽祭事務局です。「ふじみダイアリー」では、現在直面しているさまざまな課題や、準備の進捗状況などをお知らせしています。
テレワークが拡大して、Web会議の機会も増えました。海外とのやりとりが多い東京・春・音楽祭にとっても便利なツールであるのは間違いなく、1月にはイタリアのラヴェンナにいるリッカルド・ムーティともWebで打ち合わせをしました。
ラヴェンナはムーティの自宅のある街です。ミーティングはその自宅からほど近いRMM(Riccardo Muti Music)のオフィスと東京をつないで行われました。じつはマエストロ、無観客で行われた今年のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを指揮することについてイタリアの日刊紙からオンラインで取材を受けて以来、ビデオ通話がけっこうお気に入りらしいのです。画面越しではありますが久しぶりに会うマエストロはとてもご機嫌で、やる気満々、東京に行く気満々の様子でした。
東京からは鈴木幸一実行委員長も出席。「挨拶だけ。5分で帰るから」…。のはずだったのですが、いざ話し始めるとお互いに止まらないようで、モーツァルトやハイドンの音楽について、たっぷり1時間は話し込んでいました。東京春祭へ向けて情熱的に語るムーティを見ていると、わたしたちもますます前向きになれます。
ムーティは今年、2019年にスタートした「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の《マクベス》のほかに、東京春祭オーケストラとのオーケストラ・コンサートでモーツァルトを指揮します。今年7月に80歳を迎えるマエストロですが、コロナ禍がより深刻な昨夏のイタリアにあっても、地元で開催しているラヴェンナ音楽祭を(安全対策を講じたうえで)敢行し、その後も手兵のルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団と無料配信コンサートを開催するなど、世界中が困難な状況のなかで、音楽を止めないために精力的に働き続けています。50年以上にわたってつねに仕事に追われるように活動してきたムーティですから、自分のやりたいことに集中できる現在の環境を、案外楽しんでいるのかもしれません。ライフワークである「イタリア・オペラ・アカデミー」はそのやりたいことのひとつですし、今年の東京春祭オーケストラとのコンサートも、ムーティ自身のたっての希望で急きょ追加された公演です。
「オペラ以外でも彼らと向き合いたい」
2019年の「イタリア・オペラ・アカデミー」の《マクベス》で共演した際に、国内の若手腕利き奏者で編成されたこのオーケストラ(当時の名称は「東京春祭特別オーケストラ」)をすっかり気に入ったムーティ。「次回もぜひこのオーケストラとやりたい」と残していったひと言を、より発展した形で実現させたのです。
オーケストラ・メンバーたちの気持ちもマエストロに共振しています。当初の予定になかった追加公演にも、「ムーティとやるのなら」と、ほぼ全員がスケジュールを調整してくれました。さらに、じつはホール探しにも、メンバーが協力してくれたのです。ムーティから提案があった時点ですでに東京文化会館は埋まっていたため、ホームの上野を飛び出しての開催を模索しなければなりませんでした。するとほどなく、一人のメンバーが、仕事で訪れていたホールが偶然空いていることを確認して知らせてくれたのです。
ミューザ川崎と紀尾井ホール。定評ある音響の、規模もキャラクターも異なる2つのホールでのコンサートは、モーツァルトの《ハフナー》と《ジュピター》という同一プログラム。指揮者とオーケストラ、互いのリスペクトが交差する公演は、間違いなく今年のハルサイの目玉のひとつです。