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ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

機動力抜群!衰え知らぬ80代パワー

10都府県に発令中の緊急事態宣言の延長が決まり、第3波が引くのはまだ少し遠そうです。海外からの入国規制がどうなるのかなど、先行きが見えないなかで、予測できない事態への対応も協議しながらの開幕準備に追われる東京・春・音楽祭事務局。「ふじみダイアリー」では、現在直面しているさまざまな課題や、準備の進捗状況などをお知らせしています。

 毎年たくさんの外国人アーティストが来日する東京・春・音楽祭。現在の全面的な入国停止措置は、とても悩ましい問題です。仮に3月7日に緊急事態宣言が解除されたとして、外国人の入国措置はどうなるのか……。もちろん根気強く状況を見きわめていきますが、演奏家やお客様への影響が最小限に抑えられるタイミングで、入国の可能性について判断しなければならないのも現実です。

 来日の可否には、相手国の事情も関わってきます。じつは先月、近年の東京春祭「ワーグナー・シリーズ」でずっと合唱指揮を務めてもらっているウィーン国立歌劇場の合唱指揮者トーマス・ラングが来日できなくなったという連絡が入りました。本人の事情というよりは、どうやら先方の劇場や政府の判断らしいのですが、今年上演する《パルジファル》は、ワーグナー作品の中でもとくに合唱が重要な作品。感染防止の観点から通常よりも人数を減らしたコーラスでどう対処するかなど、指揮者のマレク・ヤノフスキとも相談を重ねてもらっていただけに、たいへん残念な知らせでした。

 しかし捨てる神あれば拾う神あり。ハンブルク歌劇場の合唱指揮者エベルハルト・フリードリヒが、劇場との調整もついて、急きょ来日してくれることが決まりました! ワーグナー・ファンならご存知のとおり、フリードリヒはバイロイト音楽祭の現在の合唱指揮者でもあります。予期せぬうれしい展開に、ほっと胸をなで下ろしているところです。

 音楽祭のこの「緊急事態」の解決に大きく力を発揮してくれたのが、1939年生まれのヤノフスキと、ウィーン国立歌劇場前総裁で、長年アドバイザーをお願いしている1935年生まれのイオアン・ホレンダー。80歳代の大ベテランの二人でした。ラングの降板を伝えるやいなや、二人はさっそくフリードリヒに狙いを定めたようで、すぐにヤノフスキから「いまエベルハルトに声をかけておいたから大丈夫だ」と電話がありました。急を要することなので、スルーの打診もやむを得ないし、実際とてもありがたかったのですが、「ついてはギャラなどの条件を連絡するんだが、いくら払えるんだ?」とまでお尋ねになるマエストロ。いやいや、それはこちらでやりますから……。

 ちなみにヤノフスキは、リモート・ミーティングはもちろん、メールも使いません。少し前まではFAXを使っていたのですが、どうやら機械が壊れてしまったようで、最近は連絡はもっぱら電話だけになっています。

 それにしても、絶対にあきらめないマエストロたちの姿勢とその素早い行動には、本当に頭が下がります。ヤノフスキはいつも口癖のようにこう言っています。

「大切なのはじたばたしないこと。正しいことを行なっていれば、人は必ずついてくる」

 この状況の今だからこそ、私たちも毎日を正しく過ごしていたいものです。
 愛すべきマエストロ・ヤノフスキについては、また別の機会に、あらためてエピソードをご紹介したいと思います。




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