JOURNAL
ハルサイジャーナル
ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局
ミュージアム・コンサートに欠かせない魔法の音響調整アイテム
目の覚めるような鮮やかな若葉の緑に包まれて、東京・春・音楽祭もいよいよ終盤を迎えました。さまざまな変更を余儀なくされた今年の音楽祭ではありましたが、あとはゴールを目指してラストスパートあるのみ。どうかご声援ください! 「ふじみダイアリー」では、ハルサイにまつわるさまざまな話題をピックアップしてお伝えしています。
上野公園の複数の美術館や博物館を会場に、音楽ホールでのコンサートとはひと味異なる雰囲気でお楽しみいただいて好評のミュージアム・コンサート。各会場で、演奏者の背後に置かれた木製のパーティションのような物体を「なんだろう?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
あれは、Acoustic Grove System(アコースティック・グローヴ・システム=AGS)という、部屋の響きを調整するための専用アイテムです。
カーペット敷きのデッドな音響の会場でも、天井の高いライヴな音響の会場でも活躍するAGSは、太さの異なる複数の木柱を組み合わせて配置したユニットです。理想的な音場と言われる自然の森の音響効果に着目して開発されたといいます。
AGSを開発した日本音響エンジニアリング株式会社の大山宏さんは、その効果をこう説明してくれました。
「フラットな壁面は、入射した楽器の音を一定方向に反射します。その反射音が楽器の直接音と干渉してしまうのです。AGSは反射音をさまざまな方向に拡散することで、干渉を減らして、音をクリアにする効果があります」
吸音材のように音の反射を抑えるのでは、響き自体もなくなってしまうのだそう。AGSは音を足しも引きもせずに、楽器の響きそのままを伝えるように調整する魔法のアイテムと言えそうです。
もちろん、AGSを置くだけで即すべての会場が一流コンサート・ホールの音響に変身するわけではありませんが。でもハルサイで長年制作を担当しているスタッフは、「あるとないとでは全然違う。AGSなしではミュージアム・コンサートは考えられない」と全面的に信頼しています。
日本音響エンジニアリング株式会社は、録音スタジオの設計で豊富な実績のある、室内音響のプロフェッショナル。AGSはスタジオやリスニング・ルーム、練習室などでの使用を想定して作られたものですが、ハルサイのミュージアム・コンサートだけでなく、じつはコンサート・ホールやオペラ劇場のオーケストラ・ピットなど、専用劇場に導入されて効果を発揮している事例もあるそうです。
ちなみに、ミュージアム・コンサートでお借りしている高さ150センチの標準タイプのものを購入すると税込35万円ほど。必要な個数によってはそれなりのお値段になりますが、せっかく自宅にオーディオ・ルームや練習室を奮発したのに、どうも満足できないとお悩みの方は、一度日本音響エンジニアリング株式会社に相談してみてはいかがでしょう。AGSだけでなく、身の回りの「音」に関するさまざまな問題を解決してくれるそうですよ。