JOURNAL
ハルサイジャーナル
ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局
子どものための《パルジファル》、はじまりました!
3月20日に開幕した東京・春・音楽祭も2週目に突入しました! 上野公園の桜は満開です。公園内のメインストリート「桜通り」は一方通行に規制され、ウォークスルー方式のお花見が要請されていますが、皆さんきちんとルールを守って、整然と「新しいお花見様式」を楽しんでいます。残念ながらゆっくり桜を楽しむ余裕のないハルサイ事務局ですが、相次ぐ公演中止に翻弄されながらも、ゴールまで無事に完走できるように日々頑張っています!「ふじみダイアリー」では、ハルサイにまつわるさまざまな話題をピックアップしてお伝えしています。
バイロイト音楽祭との提携公演「子どものためのワーグナー《パルジファル》」が、3月27日(土)に初日を迎えました。4時間超の原曲を約70分全1幕に凝縮したハイライト版。
本家バイロイトでは祝祭劇場の稽古場を利用して上演しているプロダクションですが、日本での会場は三井住友銀行東館ライジング・スクエアの広々としたロビー空間「アース・ガーデン」。今年は感染対策のために、客席数は定員の50%に制限して56席限定。専用劇場とはひと味異なる、雰囲気のある空間が生まれました。
前奏曲冒頭の弦と木管のおごそかなユニゾンが深々と響き、銀行ロビーの高い天井に吸い込まれていきます。コンサートホールにひけを取らない澄んだアコースティック。石坂宏指揮の東京春祭オーケストラはこの公演のための特別編成で、総勢28人と、ワーグナーとしては小規模ながら、迫力や説得力は十分です。
すぐ目の前で繰り広げられるオペラ歌手の歌と演技に、子どもたちは興味津々です。歌唱はドイツ語で字幕はありませんが、日本語の台詞を巧みに挿入して、物語がわかる工夫が施されています。「(聖杯の秘密を)誰にも教えないと約束できるかな?」などと客席への問いかけも交えたりするので、飽きてしまう子は見当たりません。みんな食い入るように舞台を見つめています。
ただ、照明の暗転や、魔法使いクリングゾルの悪魔メイクはちょっと怖いみたいで、お母さんの背中にしがみついて、こわごわ眺めている幼いお子さんもいます。
大人向けの上演だと官能的に描かれるクンドリや花の乙女たちの誘惑シーンも、色仕掛けではなく、キャンディやケーキでパルジファルのスイーツ欲に訴える作戦なので安心です(笑)。
パルジファルが新しい王となって静かに音楽が終わると、子どもたちは満面の笑顔。小さな手で一生懸命拍手を贈ってくれました。未来のワグネリアンの誕生です。
公演終了後の幼い姉妹の会話。
「マイク使わないのにあんなに大きな声が出るなんてすごい!」
「マイク使ってないの? じゃあ、やる気出さないとダメじゃん」
「やる気」って、とても可愛い視点ですね。キャスト、スタッフ一同、やる気、出してます!
出演は、アムフォルタス(バリトン):大沼徹、ティトゥレル(バス):河野鉄平、グルネマンツ(バス):斉木健詞、パルジファル(テノール):片寄純也、クリングゾル(バリトン):友清崇、クンドリ(ソプラノ):田崎尚美、ほか。
子どものための《パルジファル》は、4月4日(日)まで残り3公演。ぜひご家族でお楽しみください。子ども(18歳以下)と保護者の方のための公演ですが、残席のある場合には大人のみでもご覧いただけます。
なお、カーペットを敷いたフロアに靴を脱いで直に座ってご覧いただく形式です。ご希望の方には未使用のクッションやフェイスガードを無料でお配りしていますので、どうぞ安心してご来場ください。