JOURNAL

ふじみダイアリー 今日のハルサイ事務局

カタリーナ総監督もリモートで参加して、子どものための《パルジファル》着々準備中!

さあ、東京・春・音楽祭開幕です! タイミングを合わせるかのように、緊急事態宣言の解除も発表されました。解除後の興行の規制や入国制限緩和についてはまだ不明なため、ゴールの見えないマラソンを走り始めたランナーのような気持ちではあるのですが、とにかく完走を信じて、前へ進みたいと思います。「ふじみダイアリー」では引き続き、音楽祭のバックステージで起きているさまざまな話題をピックアップしてお伝えしてまいります。

 2019年にスタートした「子どものためのワーグナー」は、本家バイロイト音楽祭でも上演されている、カタリーナ・ワーグナー総監督肝煎りのプロジェクト。2度めの開催となる今年の演目は《パルジファル》です。会場となる丸の内の三井住友銀行東館ライジング・スクエアでリハーサルが始まりました。

 ドイツ語圏以外でも上演されて、ワーグナー作品のさらなる普及にひと役買っているこのプロジェクト。総監督として自ら立ち上げた新企画を、カタリーナはとても大切にしています。ハルサイの上演では芸術監督として全体を監修し、前回2019年の《さまよえるオランダ人》のときには、3週間近く滞在して、音楽稽古から舞台稽古まで丁寧にアドヴァイスしてくれました。今回もギリギリまで日本に来ようと粘ったのですが断念。Zoomで「リモート演出」をすることになりました。

 稽古はバイロイトが作成した綿密な演出ノートをもとに進められ、折々でカタリーナや演出助手たちがドイツから修正点を指摘し、意見を交わしていきます。現場で作り上げた動きに、カタリーナが魂を入れていくようなやり方です。

「演出ノートには動き方が書いてあるけれど、大事なのは、なぜそう動くのか。私たちが想像していたのと全然違う意図が隠れていたりします」と、日本側演出助手の太田麻衣子さん。

 カタリーナ自身はリモート稽古は初めてだそうですが、「こんなにスムーズに行くとは思わなかった」と、とてもポジティヴです。

 バイロイトとは会場の条件や歌手の個性も異なるため、また今回は感染防止のために、プランを変更しなければならない部分もあります。そんなときカタリーナはじつにフレキシブルで、原プランに頑なにこだわるのではなく、事情をちゃんと理解したうえで、「じゃあ、こうしたらどうかしら」と新たな提案を示してくることも。非常にインテリジェンスを感じる対応ですし、それは日本チームを信頼してくれているからこそなのでしょう。

 昨年は残念ながら公演中止。今回もさまざまな制限の下での上演となりますが、「ともかく、できることをやりましょう」というのがカタリーナのスタンス。条件が整わないのならやめるなどという選択肢はありません。それでいて無茶な注文はいっさいなく、とても協力的。世界的な音楽祭の総裁は、それぐらい柔軟でなければ務まらないのでしょう。その姿勢に非常にシンパシーを感じるとともに、私たちも勇気を分けてもらえる気がします。

 子どものための《パルジファル》は、ワーグナーの長大な原曲を約60分に抜粋して編曲。歌詞はドイツ語で字幕はありませんが、日本語の台詞を巧みに挿入して、子どもたちにも物語がわかる工夫が施されています。

 子ども優先が主眼ですが、3月21日からは残席の大人向け販売も始まりました。ハイライト上演ながらオーケストラ伴奏の演出付きプロダクションですので、じつは大人でも見応えは十分。オペラ通、筋金入りのワグネリアンの皆さんもぜひお楽しみください。

 なお今回の客席は、パンチカーペットを敷いたフロアに直接座ってご覧いただく形になります。ご入用の方は、携帯用のクッションなどご持参ください。また、座りやすい服装でおいでになることをお勧めします。

 


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