JOURNAL

上野街歩き
2009/12/03

芸術のまち、上野

「東京・春・音楽祭-東京のオペラの森-」の舞台である東京・上野。
文化の薫りとレトロな風情が漂う、多彩な表情を持つこの街についてご紹介します。

上野公園のはじまり

Photo: Michiharu Okubo

上野公園のはじまり

上野は、江戸時代から徳川将軍家の菩提寺である上野寛永寺の門前町として栄えました。かつての寛永寺の大伽藍は江戸時代末期の戌辰戦争により焼失し、その後焼け野原になった一帯の跡地に病院と医学校が建設される予定でしたが、この地を視察に訪れたオランダ人医師ボードワン博士が、台地であるこの上野の山の素晴らしい景観を賞賛し、ぜひ近代的な「公園」として残すようにと明治新政府に嘆願したことから、上野の山は芝、浅草、深川、飛島山とともに日本で最初の公園として指定されました。

最初は寛永寺社殿と霊廟、東照宮、境内の桜のみでした。また、上野の山は、江戸時代から桜の名所として知られ、現在、およそ1200本ある桜の木は、当時、吉野山から移植させたといわれています。それから博物館、動物園、美術館などが構築されるようになり、現在の文化の薫り高い上野公園へと生まれ変わりました。

文化・芸術の中心地

110万平方メートルの広大な土地には、春の名物、桜とともに、夏には一面が蓮で覆われる不忍池などの名所や、旧寛永寺五重塔、上野東照宮、彫刻家高村光雲作の西郷隆盛の銅像などの歴史的建築、旧跡、そして東京文化会館をはじめ、法隆寺宝物館、平成館を含む東京国立博物館、ロダンの前庭彫刻を有する国立西洋美術館、東京都美術館、国立科学博物館、日本最古の木造洋式による音楽ホールで移築後、重要文化財に指定、かつて滝廉太郎、山田耕筰、三浦環らが演奏した旧東京音楽学校奏楽堂などの芸術文化施設や、東京藝術大学、東京都立上野高等学校、東京藝大付属音楽高校などの教育施設、またファミリー向けに上野動物園や建築家の安藤忠雄の参画を得て2000年に増築が行なわれた日本で始めての国際こども図書館が点在する日本でもめずらしい文化芸術の地として高い人気を誇っています。

さまざまな表情が魅力の街

こうして明治維新以降、上野は公園のある街として、また、東京の北の玄関口として栄えてきました。近年めまぐるしく移り変わる東京という地の中で、上野は、世界中から観光客が訪れる観光地としても高い人気を誇り、また、第一線の音楽家によるコンサートや世界的なオペラハウスの引越し公演などが行なわれる東京文化会館をはじめとする様々な芸術文化の中心となる界隈であると同時に、にぎわいを見せる上野駅周辺、アメ横など商人気質も豊かで、江戸情緒、明治大正、昭和の風情も色濃く残る、多彩な顔をもつ魅力いっぱいの街です。

Copyrighted Image