PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014-

ミュージアム・コンサートピアノ音楽紀行~ウィーン
加藤洋之

プログラム詳細

© ヒダキトモコ
■日時・会場
2014.3.22 [土] 14:00開演(13:30開場)※ この公演は終了いたしました。
東京都美術館 講堂

■出演
ピアノ:加藤洋之

■曲目
ヴェーベルン:ピアノのための変奏曲 op.27 speaker.gif[試聴]
ブラームス:3つの間奏曲 op.117 speaker.gif[試聴]
シューベルト:3つのピアノ曲 D.946 speaker.gif[試聴]
ベートーヴェン:
 ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 op.106《ハンマークラヴィーア》 speaker.gif[試聴]
[アンコール]
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第8番 プレリュード
シューベルト:即興曲op.142-2

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


~ピアノ音楽紀行~

出演者

ピアノ:加藤洋之 Hiroshi Kato 東京藝術大学器楽科を卒業。在学中に「安宅賞」を受賞。ハンガリー国立リスト音楽院でイシュトヴァン・ラントシュ氏に師事した後ケルンに移り、パヴェル・ギリロフ氏の下でも研鑽を積む。1990年ジュネーヴ国際音楽コンクール第3位入賞。これまでブルガリア国立放送響、ブダペスト・フィル、ヘルシンボリ響、ハンガリー国立響と協演するほか室内楽、リサイタル等の演奏活動を▼続きを見る ヨーロッパ各地で行っている。
特にウィーン・フィルのライナー・キュッヒル氏とは長年に渡り共演を重ね、2002年のウィグモアホール(ロンドン)へのデビューは"THE TIMES"紙上にて絶賛を博す。2010年にはウィーン・ムジークフェラインにてベートーヴェンのピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会が行われ、大成功を収めた。 ▲プロフィールを閉じる

ピアノ:加藤洋之 Hiroshi Kato

■曲目解説

ヴェーベルン:ピアノのための変奏曲
 本曲は、新ウィーン楽派のなかでも最も現代的な作風を持つヴェーベルンが、1936年に作曲した3つの楽章からなるソナタ風の短い作品で、厳格な12音技法によって書かれている。「完成された楽章(=第3楽章)は変奏曲ですが、作品全体は組曲のようなものになるでしょう」とヴェーベルン自身が手紙に書いているように、変奏曲とも組曲ともソナタとも見ることができる。音楽には、「点描主義」とも言われるヴェーベルンの特徴がよく出ており、空間に付置された一つひとつの音が、伝統に対峙するかのようなラディカルな意識を呼び覚ます。「変奏曲」という伝統的な形式を用いることで、ウィーン音楽の歴史を読み替え、20世紀の音楽がウィーンの伝統につながっていることを示した作品といえる。

ブラームス:3つの間奏曲
 ブラームス晩年の1892年の作品。内省的な情感を歌うブラームスにヴェーベルンのラディカルさはないが、そこには伝統の受容に対する機微が感じられる。ブラームスは時代の精神に形を与えるというベートーヴェンが理想とした形式と内容の融合を目指した。それは、ただ過去の伝統を遵守するのではなく、19世紀半ば以降に芽生えた過去と現在という二重の歴史感覚のなかで音楽を創造するという歴史観である。実は、新ウィーン楽派の作曲家が過去の歴史を読み替える際に参照したのがブラームスの手法だった。この作品の訥々とした語り口からは、ロマン主義の残照が時代のなかで変容していく様が聞こえてくるようだ。作品は、第1曲「アンダンテ・モデラート」(変ホ長調)、第2曲「アンダンテ・ノン・トロッポ・エ・コン・モルタ・エスプレッシオーネ」(変ロ短調)、第3曲「アンダンテ・コン・モート」(嬰ハ短調)という3つの小品からなる。

シューベルト:3つのピアノ曲
 本曲は、ブラームスが半ば忘れ去られていたシューベルトの遺産のなかから掘り起こして出版したもので、シューベルトが世を去る1828年の作品。シューベルトもまた、ベートーヴェンが掲げた理想を受け継いだが、その独自性は転調を重ねながら主題を変形させていく手法にあった。近年、シューベルトの音楽と新ウィーン楽派の音楽を並置して取り上げる演奏家が増えてきたのも、音楽に仮託された伝統の受容の仕方とそうした変形の手法にある種の共通性が見出せるからだろう。作品は、第1曲「アレグロ・アッサイ」(変ホ短調)、第2曲「アレグレット」(変ホ長調)、第3曲「アレグロ」(ハ長調)という構成で、いずれも複合三部形式(ロンド形式)を採っている。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番《ハンマークラヴィーア》
 第17番《テンペスト》、第21番《ヴァルトシュタイン》、第23番《熱情》といった中期ピアノ・ソナタの傑作群を作曲し、ソナタ形式の“粋”に達したベートーヴェンが、その後の一時的な停滞期を打ち破り、演奏時間40分をゆうに超える大作として世に送り出したのがこの《ハンマークラヴィーア》だった。後期のベートーヴェンは弁証法的な音楽の発展形式に頼らず、フーガや変奏曲などソナタ形式以外の手法を積極に用いたが、ここでも第1楽章の展開部や第4楽章にフーガを採り入れている。それは、彼自身が完成した音楽の理想的な規範を、自ら変容させ新しい規範ヘと導いていくための変革と考えられる。作品は、第1楽章「アレグロ」(変ロ長調)、非常に短い第2楽章「スケルツォ、アッサイ・ヴィヴァーチェ」(変ロ長調)、長大かつ深遠な内容を有した第3楽章「アダージョ・ソステヌート」(嬰ヘ短調)、「ラルゴ」の序奏を持つ3声のフーガによる第4楽章(変ロ長調)という4つの楽章からなる。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:東京都美術館
協力:タカギクラヴィア株式会社/日東紡音響エンジニアリング株式会社

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