PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-

ミュージアム・コンサート東博でバッハ vol.14 川本嘉子(ヴィオラ)
~無伴奏チェロ組曲(ヴィオラ版)全曲演奏会

東京春祭の人気シリーズ「東博でバッハ」。今年もまた多彩な顔ぶれ、実力派たちが並び、それぞれのバッハをお届けします。音楽を愛し、学ぶすべての人を魅了するバッハの様々な魅力を、今年もお楽しみください。

プログラム詳細

2013:04:05:18:30:00

© ヒダキトモコ
■日時・会場
2013.4.5 [金] 18:30開演(18:00開場)
東京国立博物館 平成館ラウンジ

■出演
ヴィオラ:川本嘉子

■曲目
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(ヴィオラ版)speaker.gif[試聴]
       組曲 第1番 ト長調 BWV1007
       組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
       組曲 第4番 変ホ長調 BWV1010
       組曲 第3番 ハ長調 BWV1009
       組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
       組曲 第6番 ニ長調 BWV1012
[アンコール]
J.S.バッハ:
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータより ソナタ第3番 3楽章ラルゴ

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


~関連コラム~

~東博でバッハ~

出演者

ヴィオラ:川本嘉子 Yoshiko Kawamoto 1992年ジュネーヴ国際音楽コンクール・ヴィオラ部門で最高位(1位なしの2位)。96年、村松賞受賞。97年、第7回新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞受賞。東京都交響楽団首席奏者を経て、現在ではソリスト・室内楽奏者として最も活躍しているヴィオラ奏者の1人。京都アルティ弦楽四重奏団、AOI・レジデンス・クヮルテットのメンバー。▼続きを見る 3歳より才能教育研究会にてヴァイオリンを始める。桐朋学園子供のための音楽教室、桐朋女子高等学校音楽科を経て、同大学に入学。これまでに、ヴァイオリンを江藤俊哉、鈴木愛子、室内楽を末吉保雄、原田幸一郎の各氏に師事。在学中より演奏活動を開始。89年イグレック・クァルテットで第6回東京国際コンクール室内楽部門優勝。89/90年にはタングルウッド音楽祭に招待を受けて参加。Grace B.Jackson賞を受賞。91年、東京都交響楽団への入団をきっかけにヴィオラに転向。99年より2002年退団まで首席奏者を務める。アメリカのマールボロ音楽祭、スイスのダボス音楽祭、〈東京の夏〉音楽祭、霧島国際音楽祭等に参加。サイトウ・キネン・オーケストラ、小澤征爾音楽塾、水戸室内管弦楽団、別府アルゲリッチ音楽祭等にも定期的に参加しアルゲリッチやユーリ・バシュメット等、世界一流のソリスト達と共演し絶賛を博している。ソリストとしても高い評価を得ており、95年11月「新日鉄コンサート」、第59回“プロミシング・アーティストシリーズ”でのリサイタル、97年7月から一年間カザルスホールで行ったリサイタル・シリーズ『HASEKO CLASSIC SPECIAL/川本嘉子ザ・ヴィオリスト』はいずれも好評を博した。これまでにガリー・ベルティーニ、ジャン・フルネ、ペーター・マーク等の著名な指揮者と共演している。指揮者/ピアニスト、チョン・ミョンフンの提唱する「セブンスターズ・ガラ・コンサート」にも参加し、2000年、日本・韓国公演を行う。03年7月にも再び共演し、『臨機応変、他のパートに寄り添いつつ、しっかり支えたビオラの川本は達人』(朝日新聞・白石美雪氏評)との評価を得た。CD録音はチェンバロの中野振一郎との『ヴィオラ・バロック・ミュージック』(マイスター・ミュージック MM-1028)『J.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロのためのソナタ』(マイスター・ミュージックMM-1075)がリリースされている。 ▲プロフィールを閉じる

ヴィオラ:川本嘉子 Yoshiko Kawamoto

■曲目解説

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(ヴィオラ版)
 組曲全6曲が書かれた年代については、ケーテンの宮廷楽長時代(1717~23年)の前期と推定されている。組曲の構造はバッハのクラヴィーア曲(例えば《イギリス組曲》等)と同様に、定型であるアルマンド/クーラント/サラバンド/ジーグの4つの舞曲形式を基本として、加えて第1曲に前奏曲、最後のジーグの前の第5曲にメヌエット・ガボット・ブーレのいずれかの流行舞曲を取り入れた形に統一されている。今回演奏されるヴィオラは、調弦もチェロより単に1オクターブ高いだけであるため、チェロとまったく同じ調性で弾くことが可能である。無論、チェロのように深い低音域は望めないが、その代わりに柔らかさ、細やかさ、機動性といった点でチェロより優れた面を引き出すことができる。その新鮮な響きをぜひ堪能していただきたい。

《第1番 ト長調 BWV1007》

 ト長調というチェロの指使いに合った調性が、伸びやかな響きを生み出す。第1曲プレリュードは、本組曲を代表するほど有名な曲であり、間断なく続く16分音符の流れが、その背後で進む和声を浮き彫りにする。第2曲安らぎのアルマンド、第3曲イタリア型の急速な3拍子によるクーラント、第4曲優雅なサラバンド、第5曲には2つのメヌエットが用いられている。第6曲軽快に短いジーグで最後を飾る。

《第5番 ハ短調 BWV1011》
 ハ短調というチェロでは弾きにくい調性のため、最高弦A線の1音下げ指定のある曲だが、現代では通常の調弦で演奏することが多い。全曲に渡ってフランス風の性格を持つ難曲である。第1曲はフランス序曲形式のプレリュード。このスタイルはバッハの《管弦楽組曲》冒頭楽章でも用いられている。第2曲も、やはりフランス風のアルマンド。第3曲は本組曲で唯一の繊細なフランス型クーラント。第4曲は、8分音符の分散和音が深い思索へと誘うようなサラバンド、第5曲では対照的な2つのガボットを挿入舞曲としている。第6曲は強拍部に付点リズムを用いた短いジーグで締めくくる。

《第4番 変ホ長調 BWV1010》
 本組曲の中でも一番地味だが、削ぎ落とされたようなシンプルさを持つ名品。第1曲は分散和音が織りなす音の色合いの変化が美しいプレリュード。第2曲は素朴なアルマンド、第3曲のイタリア型クーラントは、リズムに新しい可能性を模索している。第4曲のサラバンドでは、清らかな旋律が和音をともなって歌われる。第5曲は同じ調性による対照的な2つのブーレ。第6曲はほとんど重音を用いず、速いテンポで流れていくジーグ。

《第3番 ハ長調 BWV1009》
 ハ長調はチェロの重音に適した調性であり、低音がよく響く。第1曲プレリュードは淀みなく流れる16分音符がスケールの大きい音楽を具現する。第2曲は軽やかな愛らしさを感じさせるアルマンド。第3曲は音階的な分散和音とスラーで奏されるイタリア型のクーラント。第4曲は典型的なサラバンドのリズムに旋律が勝っていく瞬間が美しい。第5曲ブーレは、演奏会用の小品として奏される機会も多い。第6曲は終曲にふさわしい堂々としたジーグ。

《第2番 ニ短調 BWV1008》
 ニ短調という調性は、音楽を内省的な方向へと誘う。第1曲プレリュードは、和声よりも旋律そのものに重点が置かれる。第2曲は高度な技巧が要求されるアルマンド、第3曲シンプルなイタリア型のクーラントを経て、第4曲は、引き伸ばされた旋律に和音が重なる典雅なサラバンド。第5曲2つのメヌエットでは、主調の第1メヌエットはニ短調、第2メヌエットはニ長調となり、古風な響きがある。第6曲フランス風のジーグは、規則正しい8小節の楽節構成。

《第6番 ニ長調 BWV1012》
 本来、5弦チェロのために書かれたため、通常のチェロでは演奏が非常に困難な曲である。しかし本組曲の中では、技巧的にも内容的にも最もスケールが大きい。第1曲は2本の弦にまたがって同音高を弾く等、弦楽器ならではの様々な可能性が試された難度の高いプレリュード。第2曲は叙情的な美しいアルマンド、第3曲は軽やかで心地よいイタリア型クーラント、第4曲のサラバンドでは、非常に難易度の高い重音の合間を縫うように優美な旋律が生まれる。第5曲は素朴な雰囲気を持つガボットだが、ヴァイオリン編曲でもよく弾かれる曲である。しかし要求される技巧はきわめて高度。第6曲ジーグは、様々な音型が入念に組み合わされた見事なジーグで本組曲のフィナーレともなる。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:東京国立博物館

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