PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-

ミュージアム・コンサート東博でバッハ vol.12 郷古 廉(ヴァイオリン)

東京春祭の人気シリーズ「東博でバッハ」。今年もまた多彩な顔ぶれ、実力派たちが並び、それぞれのバッハをお届けします。音楽を愛し、学ぶすべての人を魅了するバッハの様々な魅力を、今年もお楽しみください。

プログラム詳細

2013:03:21:19:00:00

© 堀田力丸
■日時・会場
2013.3.21 [木] 19:00開演(18:30開場)
東京国立博物館 法隆寺宝物館エントランスホール

■出演
ヴァイオリン:郷古 廉

■曲目
J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第2番 イ短調 BWV1003 speaker.gif[試聴]
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002 speaker.gif[試聴]
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV1001 speaker.gif[試聴]
バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ speaker.gif[試聴]
[アンコール]
郷古廉によるバルトークからバッハの即興曲

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


~東博でバッハ~

出演者

ヴァイオリン:郷古 廉 Sunao Goko 1993年12月生まれ。宮城県多賀城市出身。99年、桐朋学園子供のための音楽教室仙台分室に入室。岩井久雄奨学金を授与。2004年ユースクラシックコンクール第1位。同年、第58回全日本学生音楽コンクール全国大会第1位。06年、第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。▼続きを見る ガラコンサートにおいて服部譲二指揮/フランス国立リール管弦楽団と共演。同年、初リサイタルを開く。07年12月のデビュー以来、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、大阪センチュリー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、神戸市室内合奏団、九州交響楽団と共演。指揮者はゲルハルト・ボッセ、秋山和慶、井上道義、円光寺雅彦、山下一史、下野竜也、飯森範親、川瀬賢太郎の各氏。また、上田晴子、加藤洋之の両氏とリサイタルを行う傍ら、プラハ、ドイツにてコンサートに出演。現在、ウィーン私立音楽大学において研鑽に励んでいる。ロームミュージックファンデーション奨学生。また、11年に続き12年も、サイトウ・キネン・フェスティバル松本にてストラヴィンスキー作曲《兵士の物語》へ出演。これまでに、勅使河原真実、ゲルハルト・ボッセ、辰巳明子、パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事。国内外の音楽祭でジャン=ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコの各氏のマスタークラスを受ける。使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリ(Banat)。個人の所有者の厚意により貸与される。 ▲プロフィールを閉じる

ヴァイオリン:郷古 廉 Sunao Goko

■曲目解説

●J.S.バッハ:
 全6曲からなる《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》は、1720年の日付を持つ自筆の清書譜しか残されていないため、おそらくそれ以前に書かれたものと推定されている。たった一挺の単旋律楽器によって、和声や対位法までが奏されるという、これはバッハによる壮大な実験と検証の場でもある。

「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第2番 イ短調 BWV1003」
 6曲のうち3曲を占めるソナタはいずれも4楽章構成をとっており、緩/急/緩/急の教会ソナタの形式である。第2楽章にはバッハの真骨頂ともいうべきフーガが置かれているのも共通している。
 第2番(BWV1003)のイ短調ソナタは、フーガが他の楽章に比べてほぼ倍近くの長さを占め、内容的にも緻密で洗練されたものになっているのが特徴である。第1楽章のグラーヴェは、装飾音や重音を引き従えて旋律が軽やかに流れていく序奏風の曲。第2楽章フーガでは三重音や四重音まで用いられる。第3楽章アンダンテは、重音の中を縫うようにして進む旋律があまりにも美しい。そして第4楽章アレグロは、16分音符の急速なパッセージで繰り出される旋律がエコーのような響きを生み出す曲である。

「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002」
 全6曲の残り3曲を占めるパルティータでは、楽章の大半に舞曲があてられている。基本骨子となるのはアルマンド/クーラント/サラバンド/ジーグという古い舞曲たちである。
 第1番(BWV1002)のロ短調パルティータは、基本骨子となる4つの舞曲にすべて「ドゥブル」という変奏曲が付く。加えてこの曲では、最後にジーグが来るべきところにブーレが来ているのが特徴である。これはジーグが変奏(ドゥブル)に適さなかったためと考えられている。

「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV1001」
 この第1番(BWV1001)のト短調ソナタは、第3楽章が「シチリアーナ」(シチリアの民俗舞曲)と題されているのが特徴である。
 第1楽章アダージョは重音を多用しながら旋律が淀みなく流れていく。無伴奏全6曲の冒頭を飾るにふさわしく深い憂愁を帯びた美しい旋律である。第2楽章フーガでは、まるで2つのヴァイオリンが奏でられているかのような疑似対位法が展開され、第3楽章シチリアーナの牧歌的な旋律を経て、第4楽章プレストは急速な16分音符の単旋律が、無窮動的な展開をみせる。

●バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
 バルトークが祖国ハンガリーを逃れて、亡命先のアメリカで窮乏生活をしていた1944年に、名ヴァイオリニストのユーディ・メニューインの依頼によって書かれた作品。全4楽章からなり、線的な書法に熟達した傑作である。死の前年に書かれており、バルトークの到達した一つの極点を示すものでもある。
 第1楽章はバッハを意識したト短調のシャコンヌだが、バッハのそれとは異なり、非常に現代的かつ幻想的な変奏となっている。第2楽章フーガでは、いわゆる「バルトーク・ピツィカート」(弦を強く引っ張って指板に打ちつける)が聴ける。第3楽章メロディは、緩やかな旋律に乗ったフラジオレットが神秘的で美しい。第4楽章プレストは、急速な16分音符に始まる曲想が、次第にその情熱的な度合を高め、自由闊達に羽ばたいて、空へと消えていくようである。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:東京国立博物館

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