春祭ジャーナル 2015/12/30
ポリーニ・プロジェクトについて vol.2
べリオ、ブーレーズ、ベートーヴェン~ポリーニ・プロデュースによる室内楽
二夜に亘ってお届けするポリーニ・プロデュースによる最高峰で最先端の室内楽公演。爆発的なヴィルトゥオーゾと名高いジャック四重奏団と一級奏者が演奏するべリオ「セクエンツァ」の魅力に迫ります。
文・野平多美(作曲、音楽評論)
「セクェンツァ」とは、キリスト教カトリック教会の聖歌の一つで、「続唱」という意。聖歌の中では通常「アレルヤ」に引き続いて歌われる、とものの本にある。
ベリオの「セクェンツァ」シリーズは、全14曲を数える。さまざまな楽器の構造やその歴史的背景を知り尽くしたベリオが、さらにそれぞれの器楽奏者たちへの親愛の情を込めて作曲された。献呈者をご覧に入れれば、きっとうなずくことしきりであろう。
ルチアーノ・ベリオは、1925年10月24日イタリア半島の北西、オネリアで生まれた。作曲家でオルガニストであった祖父と父に早くから音楽教育を受け、ミラノで研鑽を積む。その後タングルウッド音楽祭に参加し、ニューヨークで電子音楽を知る。1956年に初めてダルムシュタット現代音楽夏期講習会に足を踏み入れ、ブーレーズやシュトックハウゼンに出会い、それぞれから大きな刺激を受けた。作曲家としてそして機が熟した頃、「セクェンツァ」(以後SEQ.)シリーズの作曲が始まる。

工藤重典 篠崎和子クリストフ・デジャルダン
SEQ.I(フルートのための)は、同音楽祭に再訪した58年に、20世紀イタリアの現代フルート奏法の先駆者、セヴェリーノ・ガッツェローニによって初演され、献呈された。ランパルの高弟で、フレンチ・フルートの流麗な旋律線と伸縮自在のパワフルな音楽表現で聴く者を惹きつける工藤重典が、どのように攻めるかが聴きどころ。SEQ.II(ハープのための)も同音楽祭で63年にフランシス・ピエールにより初演、献呈されている。ピエールは、パリ管首席奏者を永らく務めた名ハーピストで、指揮者でハーピストのファブリス・ピエールの父君。今回は、ニース音楽院で研鑽を積み、その的確なテクニックに定評がある若手ハーピストの篠崎和子が魅せる。SEQ.VI(ヴィオラのための/67)はニューヨークでワルター・トランプラーによって初演されたが、献呈者はセルジュ・コロ。コロは、20世紀のフレンチ・ヴィオラ室内楽奏者の代名詞で、現代音楽も得意とした。コロは、ブーレーズ「弦楽四重奏のための書」の初演者でもある。それを、20年の間、ブーレーズの手兵アンサンブル・アンテルコンタンポランに在籍して、数々の新作初演に携わったデジャルダンが卓抜のテクニックを聴かせる。デジャルダンは、すでにポリーニ・パースペクティヴにも登場。

古部賢一パスカル・ガロワ アラン・ダミアン
名手たちの超絶技巧が、今から楽しみである。
~関連公演~
ポリーニ・プロジェクト ベリオ、ブーレーズ、ベートーヴェン~ポリーニ・プロデュースによる室内楽 第二夜