春祭ジャーナル 2013/09/26
生誕200年!選り抜きの名曲と最高の指揮者で、ヴェルディ体験はいかが?
「ムーティconductsヴェルディ」の魅力 その1
文・加藤浩子(音楽評論家)
オペラは、敷居が高い。
そう思っている方は、少なくないだろう。
たしかにオペラは「お高い」。外国語で歌われるし(字幕は出るが)、長いし、何より海外から来日する一流のオペラ公演は値段が高い。「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」(古いですね)チケットを買いました、と言う声を何度もきいたけれど、もっともだと思う。
けれど一方で、オペラには色んな楽しみ方がある。初めから、オペラの全曲を聴かなくたってかまわない。「さわり」だけでもオペラの醍醐味が味わえることは、よくある。人気が高いオペラの演目には、必ずといっていいほどヒットメロディがある。パーティの定番、《椿姫》の「乾杯の歌」
[試聴]や、サッカーの応援歌になっている《アイーダ》の「凱旋行進曲」
[試聴]など、誰でも知っている超有名曲も少なくない。
そんなヒットメロディを連発したのが、イタリア人作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)。ちょうど200年前に生まれたヴェルディは、ある統計によれば、世界で一番その作品が上演されているオペラ作曲家だ。彼はそれまでスター歌手の歌合戦状態だったイタリア・オペラを、登場人物に共感できる泣けるドラマへと書き換え、口ずさみやすく親しみやすい旋律を添えて世に送った。ヴェルディのオペラが高い人気を誇るのは、よくわかる。
10月末に開催される「ムーティconducts ヴェルディ」は、そんなヴェルディの音楽のエッセンスを体験できる素晴らしいコンサートだ。プログラムに並ぶのは、彼が得意とした合唱の名曲や、オペラの序曲。なかでもオペラ《ナブッコ》の合唱「行け、わが想いよ、黄金の翼にのって」[試聴]は、イタリアの第2の国歌と呼ばれるほど愛されている曲で、聞き覚えのある方も多いのではないだろうか。しみじみと心に沁みるシンプルな旋律に耳を傾けていると、彼を「国民的作曲家」として尊敬するイタリア人の気持ちがわかるような気がする。日本人に「荒城の月」
[試聴]があるように、イタリア人には「黄金の翼にのって」があるのだ。
イタリア人の魂、ヴェルディ。その真髄を体験させてくれる指揮者の最高峰といえば、リッカルド・ムーティをおいて他にいない。ヴェルディを愛してやまない筆者が今回のコンサートをどうしても聴いていただきたいと思う理由は、そこにある。そのわけは、次回。
「ムーティconductsヴェルディ」の魅力 その1 | その2
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