東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-
東京春祭 歌曲シリーズ vol.10アドリアン・エレート(バリトン)
ティーレマンからの信頼も厚い名バリトンが、こだわった選曲で聴かせるリサイタルは生誕100年のブリテン、生誕200年のワーグナーをはじめ、シューマン、デュティユーという多彩なプログラミングで深奥な世界へと誘います。
プログラム詳細
2013:03:28:19:00:00
2013.3.28 [木] 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール
■出演
バリトン:アドリアン・エレート
ピアノ:ユストゥス・ツァイエン
■曲目
シューマン:《リーダークライス》op.24

1. 私が朝起きると
2. 私はやるせない思いで
3. 私は木陰をさまよい
4. いとしい恋人、君の手を
5. 私の悲しみの美しいゆりかご
6. 待て、たくましい船乗りよ
7. 山々と城が見下している
8. 初めから、私はほとんど生きる気をなくして
9. ミルテとばらの花を持って
ブリテン:《ヘルダーリンの6つの断章》op.61

1. 人類の賛同
2. 故郷
3. ソクラテスとアルキビアデス
4. 若者
5. 人生のなかば
6. 人生の輪郭
シューマン:2人の擲弾兵 op.49-1


ワーグナー:夢(《ヴェーゼンドンク歌曲集》より)

デュティユー:月夜の夢幻劇、牢獄
ワーグナー:すべてはつかの間の幻


[アンコール]
ブリテン:春が過ぎていく
シューマン:君は花のように
ワーグナー:歌劇《タンホイザー》より夕星の歌
【試聴について】

プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。
~関連公演~
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出演者
バリトン:アドリアン・エレート Adrian Eröd オーストリア出身の若手バリトン歌手。本拠地であるウィーン国立歌劇場でロッシーニ《セビリアの理髪師》のフィガロ、グノー《ファウスト》のヴァランティン、ブリテン《ビリー・バッド》のビリー、マスネ《マノン》のレスコー等、実に多彩な役を歌い、観客からもプレスからもすでに絶大な人気を集めている。ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》のベックメッサー役で
ピアノ:ユストゥス・ツァイエン Justus Zeyen ドイツのキール生まれ。コード・ガーベンに最初のピアノレッスンを受け、ハノーファーでカール・エンゲルやベルンハルト・エバートに師事した。ソリストとしてだけでなく室内楽ピアニストとして、また歌手のリサイタル伴奏者として、ヨーロッパやアメリカ、日本でコンサートを行う等、活躍中のピアニストである。これまで共演した有名なアーティストには、ジュリアン・バンセ、
シューマンの歌曲
歌曲の作曲に集中した1840年を、シューマンは自ら「歌の年」と名づけている。クララ・ヴィークとの結婚を成就させるため、クララの父との裁判闘争の真っ最中であったその2月に先陣を切って書かれたのが、全9曲の《リーダークライス》op.24である。詞は当時愛読していた詩人ハイネの『歌の本』所収「若き悩み」の一章「リート」からの9篇である。また、シューマンの数ある歌曲のなかで最も有名な「2人の擲弾兵」も、やはり「歌の年」の春に書かれたものであり、全3曲の《ロマンスとバラード第2集》に収められている。詞は同じくハイネによる。擲弾(てきだん)というのは手りゅう弾のことであり、それを扱うのは勇敢で体格も優れた精鋭部隊だった。ナポレオンを失った擲弾兵の悲しみと誇りを歌う後半には、フランス国歌《ラ・マルセイエーズ》が用いられている。同じくハイネの詞による「浜辺の夕暮れに」は、暮れなずむ海を見ながら遠い国を夢想する歌。この曲を含む作品45は、全3曲の《ロマンスとバラード第1集》で、ドイツ・ロマン派の作曲家フェルディナント・ヒラーに献呈されている。
ブリテン:《ヘルダーリンの6つの断章》op.61
ブリテン自身が「おそらく私のベストの声楽作品」と評する《ヘルダーリンの6つの断章》は、ブリテンにとっても唯一のドイツ語歌詞を持つ歌曲集であり、1958年夏に作曲された。ドイツ・ロマン派初期の詩人ヘルダーリンの詩に付曲された2分前後の短い6曲が連なるが、振幅は幅広く、それぞれにブリテンの音楽が凝縮されている感がある。歌劇も含めてブリテンの声楽曲のほとんどは親友でもあったテノール歌手ピーター・ピアーズの声を念頭に作曲されている。
ワーグナーの歌曲
1857年当時、庇護を受けていた富豪の実業家ヴェーゼンドンクの妻マティルデと道ならぬ恋に陥ったワーグナーが、マティルデから贈られた詩に付曲した歌曲集がすなわち《ヴェーゼンドンク歌曲集》である。この歌曲集は最初の楽劇《トリスタンとイゾルデ》の習作ともなっており、第5曲(終曲)の「夢」は、《トリスタンとイゾルデ》第2幕の二重唱にも用いられている。かなわぬ愛を、せめて夢へと託す切なさを歌う曲となっている。管弦楽版で歌われることが多いが、元々はピアノ伴奏版で書かれたものである。また、ジャン・ルブールの詞による「すべてはつかの間の幻」が書かれた1839年秋頃のワーグナーは、まだ成功を夢見る26歳の青年であり、ほとんど無一文の身上で念願のパリにたどり着いていた。しかし結局パリでは成功することがなかったのである。「2人の擲弾兵」もやはりパリ時代の作品。シューマンと同じハイネの詩のフランス語訳に付曲したものだが、実はワーグナーの方が数ヵ月早く、趣はずいぶん異なっている。より悲愴感が強い印象だが、後部にラ・マルセイエーズが流れるのは共通している。一説にはこの曲を手紙で知ったシューマンが同じ素材を使ったきっかけになったとも言われている。
デュティユーの歌曲
現代フランスの作曲家、アンリ・デュティユーの作品は、管弦楽が主であり、声楽曲は少ない。第二次世界大戦中の1942年に作曲された「月夜の夢幻劇」は、デュティユーの最初期の作品《4つの歌》の第1曲である。また1944年作曲の「牢獄」は、第二次大戦中、収容所に入っていた兄に捧げられた作品であり、デュティユー自身はこの頃、国営フランス放送(ラジオ放送)の音楽監督を務めていた。
主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:日本ワーグナー協会