PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2011-

ヴィヴァルディ《四季》 長岡京室内アンサンブル

東京春祭の風物詩ともなったヴィヴァルディの「四季」。今回は、全員が背を向けても演奏できるほどの精緻なアンサンブル力、世界的にも評価の高い長岡京室内アンサンブルが登場。カップリングには武満徹と林光の美しい日本映画音楽を。

プログラム詳細

2011:04:09:16:00:00

Photo: Rikimaru Hotta
■日時・会場
2011.4.9 [土] 16:00開演(15:30開場)
東京文化会館 小ホール

■出演
長岡京室内アンサンブル
  音楽監督・ヴァイオリン:森 悠子
  ヴァイオリン:高木和弘、佐藤一紀、舘野ヤンネ、谷本華子、
         青谷友香里、岡田鉄平、森岡 聡
  ヴィオラ:成田 寛、中田美穂
  チェロ:金子鈴太郎、小川和久
  コントラバス:長谷川順子
  チェンバロ:森岡奈留子

■曲目
武満 徹:3つの映画音楽speaker.gif[試聴]
     《ホゼー・トレス》より「訓練と休息の音楽」
     《黒い雨》より「葬送の音楽」
     《他人の顔》より「ワルツ」
林 光:3つの映画音楽 (作曲家・林光による自作解説)
     《裸の島》より「《裸の島》のテーマ」
     《真田風雲録》より「下剋上のブルース」
     《秋津温泉》より「ラストシーン・新子の死」
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》speaker.gif[試聴]
曲目解説はこちら



【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


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出演者

長岡京室内アンサンブル Nagaokakyo Chamber Ensemble in Kyoto 「ヨーロッパには地域ごとに独自の音色を持つオーケストラがあるように、長岡京独自の音色・思想を持った演奏団体を育てたい」という理念のもと、1970年代より欧米を中心に教育・演奏両面で国際的に活躍してきたヴァイオリニストの森悠子を音楽監督に迎え、国内外から優秀な若手演奏家が集い、1997年3月に結成された。指揮に頼らず互いの音を聴く「耳」を研ぎ澄ませる独自のスタイルを特長とし、緻密で洗練された技術と凝集力の高さ、独自の様式感覚を備えた高度な表現法と音楽性の高さは、日本でも希有な存在と高く評価される。
1997年3月に第1回コンサートを開催。以降、毎年2回を基本に定期的にコンサートを開いている。2002年4月、2003年4月と2年連続で「大阪国際フェスティバル」に出演。2003年1月には、フランスのナント市で開催された音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」に日本の演奏団体として初出演。ヴィヴァルディ《四季》は6団体の競演となったが、長岡京室内アンサンブルの演奏・解釈は聴衆に大きな衝撃を与え、「鳥のさえずり、風の音、陽の光……自然の風景がそのまま音になっている」と絶賛された。また同年2月、パリのユネスコ本部とトルコのイスタンブールで開催された「平和の序曲」をテーマにした演奏会に出演。9月にはシカゴにおける「日米通商150年記念・ジャパンフェスティバル」に招かれ、好評を博す。2006年、総合地球環境学研究所主催第1回国際フォーラム「水と未来可能性」でオープニング演奏する等、演奏活動の場を広げている。
2007年7月、京都と東京でCD第5弾『ブリテンとラテン』のリリースを記念したコンサート「心魂を洗う弦の響き 長岡京室内アンサンブル~ヒナステラCD/SACD発売記念~」を開催。長岡京ならではのサウンドと若手演奏家の好演は大きな評価を得た。現在までに5枚のCDをリリース。高度な最新技術を駆使したレベルの高い演奏により、音楽評論家や音楽専門誌・新聞等でも高く評価されている。

音楽監督・ヴァイオリン:森 悠子 Violin: Yuko Mori 教育哲学者・森昭の次女として、高槻市に生まれる。6歳より才能教育でヴァイオリンを始め、吉富周吉、山本剛史、東儀祐二、鷹見三郎、齋藤秀雄の各氏に師事。桐朋学園大学卒業後、齋藤秀雄教授の助手を務めた後、チェコスロバキア、フランスに留学。マリア・ホロニョヴァ、ミシェル・オークレールの各氏に師事。1972年にパイヤール室内管弦楽団入団、ヨーロッパ各地をまわる。同時期、古楽器演奏が黎明期を向かえたパリで、本格的な古楽器の演奏にも係わる。1977~87年、フランス国立新放送管弦楽団(現・フランス国立放送フィル)に在籍。1988~96年、リヨン国立高等音楽院助教授。
1990年、京都フランス音楽アカデミーを創立し、以来、音楽監督を務める。1997年、“若い音楽家の育成と実践の場”と“常に世界に発信する演奏団体”を目指し、長岡京室内アンサンブルを設立。1999~2004年、ルーズベルト大学シカゴ芸術大学音楽院教授。2005年、キャパシティビルディング講習会を開講し、以後定期的に開催。1991年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ章」授与。2002年「京都府あけぼの賞」受賞。2003年、フランス政府より芸術文化勲章「オフィシェ章」授与。2009年より、くらしき作陽大学音楽学部特任教授。

音楽監督・ヴァイオリン:森 悠子 Violin: Yuko Mori

ヴァイオリン:高木和弘 Violin: Kazuhiro Takagi フランス国立リヨン高等音楽院を首席卒業。南メソディスト大学、ルーズベルト大学シカゴ芸術大学音楽院に学ぶ。これまでに森悠子、E.ウルフソンに師事。1997年、エリザベート王妃国際音楽コンクール入賞、1998年、ジュネーブ国際音楽コンクール第3位(1位なし)。2001年、フィショップ室内楽コンクール第1位受賞。2005年度文化庁芸術際新人賞、大阪文化際賞大賞受賞。2007年度第19回ミュージック・ペンクラブ音楽賞オーディオ部門録音作品賞を受賞。ドイツのヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスター、大阪センチュリー交響楽団首席客演コンサートマスターを経て、現在、東京交響楽団コンサートマスター、山形交響楽団特別首席コンサートマスター。長岡京室内アンサンブル、いずみシンフォニエッタ大阪、Eusia弦楽四重奏団等のメンバーとしても活躍中。

© Naomi Kawakami

ヴァイオリン:高木和弘 Violin: Kazuhiro Takagi

ヴァイオリン:佐藤一紀 Violin: Kazunori Sato 1994年、京都市立芸術大学音楽学部卒業。1995年、パリで現代音楽の研鑽を積む。1998年、京都市立芸術大学大学院音楽研究科修了。2004年、関西日仏学館とパリ・シャンゼリゼ管弦楽団の共同奨学金を得て、フランス・サント古楽フェスティバルに参加、フランス各地で演奏。2005~08年、兵庫県立芸術文化センター管弦楽団に在籍。2009年、パリ・フガート・アソシエイション主催のヴァイオリンマスタークラス教授として招かれる。2010年より、くらしき作陽大学音楽学部非常勤講師として後進の指導にあたる。これまでに景山誠治、岸邊百百雄、森悠子、R.パスキエ、M.オークレール、M.le.ディゼス、A.モッチアの各氏に師事。長岡京室内アンサンブル、いずみシンフォニエッタ大阪のメンバー。

ヴァイオリン:佐藤一紀 Violin: Kazunori Sato

ヴァイオリン:舘野ヤンネ Violin: Tateno Janne ヘルシンキ音楽院でオルガ・パルハメンコ、ルーズベルト大学シカゴ芸術大学音楽院で森悠子に師事。ヘルシンキを拠点とする、ラ・テンペスタ室内管弦楽団のコンサートマスター、山形交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者、森悠子主宰の長岡京室内アンサンブル、ユーシア・クァルテット、Tangueros Árticosでの出演等、フィンランドと日本の二つの祖国において幅広い活動を展開。2007年、オウルンサロ音楽祭(音楽監督は舘野泉)の日本版をプロデュース。以来、全体を見渡せる広い視野と感覚を活かし、プロデューサーとしても活躍している。

ヴァイオリン:舘野ヤンネ Violin: Tateno Janne

ヴァイオリン:谷本華子 Viola: Hanako Tanimoto 桐朋学園大学を経て、カナダ・プランドン大学へ留学。全日本学生音楽コンクール中学、高校の各部で全国第1位、カナダ・ナショナルヴァイオリンコンクール第2位、シェーンヴァイオリンコンクール第1位、大阪府知事賞、クリティッククラブ音楽賞等、受賞多数。これまでに森田玲子、東儀祐二、東儀幸、森悠子、田村知恵子、江藤俊哉、N.セデルケニの各氏に師事。1999年より長岡京室内アンサンブルメンバーとして国内外の公演・録音に参加。現在、ソロや室内楽を中心に活躍する他、県立西宮高校音楽科非常勤講師として後進の指導にあたっている。

ヴァイオリン:谷本華子 Viola: Hanako Tanimoto

ヴァイオリン:青谷友香里 Violin: Yukari Aotani 2003年、名古屋大学教育学部附属高等学校在学中に、ザルツブルク・モーツァルテウム大学イーゴリ・オジムクラスに入学。2009年、同大学を首席卒業。現在大学院ベンヤミン・シュミットクラス在籍。渡欧以来、ソロ、室内楽演奏活動をスタート。平成15年度及び平成17年度文化庁芸術家在外研修員。ロームミュージックファンデーション奨学生。これまでに国内外のコンクールで受賞歴多数。2006、07、09、10年「小澤征爾スイス国際音楽アカデミー」に招待される。

ヴァイオリン:青谷友香里 Violin: Yukari Aotani

ヴァイオリン:岡田鉄平 Violin: Teppei Okada 4歳よりヴァイオリンとピアノを始める。桐朋学園大学卒業後、同研究科修了。これまでに三木妙子、石井志都子、江藤アンジェラ、江藤俊哉の各氏に師事。CMのBGM演奏や作曲・編曲も手がけ、幅広いジャンルで活動中。ピアニストの杉浦哲郎氏とのデュオ“杉ちゃん&鉄平”で『電クラ』等のCDを6枚リリース。長岡京室内アンサンブル公演に定期的に出演している。

ヴァイオリン:岡田鉄平 Violin: Teppei Okada

ヴァイオリン:森岡 聡 Violin: Satoshi Morioka 6歳よりヴァイオリンを始める。第59回全日本学生コンクール入選。第17回日本クラシックコンクール全国大会高校の部5位。第26回草津国際音楽祭アカデミーでスチューデントコンサートに出演。第3回招待演奏会に出演。リゾナーレ音楽祭2008にリゾナーレ・フェスティヴァルオーケストラとして参加。第20、21回京都フランス音楽アカデミーで森悠子、A.モッチアに師事し、受講生コンサートに出演。長岡京メンバーとカルテット共演。「JTが育てるアンサンブルシリーズ」に出演。これまでに室内楽を岡山潔、佐々木亮、花崎淳生、松原勝也、森悠子の各氏に師事。ヴァイオリンを服部芳子、森悠子に師事。現在、岡山潔,青木高志、寺岡有希子に師事。東京藝術大学音楽学部3年に在学中。紀尾井シンフォニエッタ東京2010-2011シーズンメンバー。

ヴァイオリン:森岡 聡 Violin: Satoshi Morioka

ヴィオラ:成田 寛 Viola: Hiroshi Narita 山形交響楽団首席を務める他、オーケストラ・リベラ・クラシカ、バッハ・コレギウム・ジャパン、クラシカル・プレイヤーズ・トウキョウ、レ・ボレアード等のオリジナル楽器によるオーケストラのメンバーや、鈴木秀美、若松夏美、寺神戸亮、有田正広、ロレンツォ・コッポラらとの室内楽等、オリジナル楽器奏者としても幅広く活動している。

ヴィオラ:成田 寛 Viola: Hiroshi Narita

ヴィオラ:中田美穂 Viola: Miho Nakata 相愛大学音楽学部卒業。桐朋学園オーケストラアカデミー修了。これまでにヴァイオリンを西村順吉、田川佐麻里、小栗まち絵、ヴィオラを大島路子の各氏に師事。パリ・スコラカントロムで森悠子に師事。京都フランス音楽アカデミー、ブルージュ、フィンランド他、国内外の音楽祭やセミナーに参加。尾高忠明、大山平一郎指揮相愛大学オーケストラと共演。2004年より長岡京室内アンサンブルメンバーとして公演・録音に参加。

ヴィオラ:中田美穂 Viola: Miho Nakata

チェロ:金子鈴太郎 Cello: Rintaro Kaneko 桐朋学園ソリスト・ディプロマコースを経て、ハンガリー国立リスト音楽院に学ぶ。
コンセール・マロニエ21第1位、国際ブラームス・コンクール第3位、カルロ・ソリヴァ国際室内楽コンクール第2位受賞。イタリア・シエナのキジアーナ音楽祭にて、名誉ディプロマを受賞。2004年、松方ホール音楽賞大賞受賞。2008年1月のバッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏会が高く評価され、音楽クリティック・クラブ奨励賞を受賞。仙台フィルハーモニー管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、大阪シンフォニカー交響楽団、長岡京室内アンサンブル等とコンチェルトを共演。NHK「名曲アルバム」、NHK-FM「名曲リサイタル」に出演。ソロの他にも室内楽に意欲的に取り組み、安永徹、市野あゆみ、大山平一郎、上田晴子氏等、世界的に活躍するアーティストと多数共演。バロックから現代曲までの幅広いレパートリーを演奏し、これまでに日本やハンガリー、オーストリアにおいて数々の世界初演を行なう。2001年、ハンガリーで現代音楽グループshyraを結成。2003~07年 大阪シンフォニカー交響楽団首席チェロ奏者、2007~08年、大阪シンフォニカー交響楽団特別首席チェロ奏者。現在は、各オーケストラにゲスト首席として招聘される他、いずみシンフォニエッタ大阪、トウキョウ・モーツァルト・プレイヤーズ、ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニーオーケストラ、サイトウ・キネン・オーケストラ等で活躍中。Super Trio 3℃、長岡京室内アンサンブル、The Chamber Players各メンバー。

© MIN-ON

チェロ:金子鈴太郎 Cello: Rintaro Kaneko

チェロ:小川和久 Cello: Kazuhisa Ogawa 桐朋学園大学音楽学部卒業。フランス国立ボルドー音楽院へ留学。高等科、室内楽科、現代室内楽科、研究科を首席で卒業。ボルドー市栄誉賞受賞。第4回「若手奏者の為のコンペティション」(名古屋国際コンクール)ソロ部門にて優勝、最優秀者賞、朝日新聞社賞を受賞。国立ボルドーオペラ座、ラムルー管弦楽団等と特別契約を結び共演。アンサンブル・インストルメンタル・ドゥ・コルス(コルシカ)の首席奏者を務める。現在、ソロ、室内楽、オーケストラ等で幅広く活躍中。2008年より、長岡京室内アンサンブル公演に参加。これまでに千本博愛、エチエンヌ・ペクラーの各氏に師事。2010年9月より山形交響楽団首席チェロ奏者に就任。

チェロ:小川和久 Cello: Kazuhisa Ogawa

コントラバス:長谷川順子 Contrabass: Junko Hasegawa 相愛大学卒業。長岡京室内アンサンブル設立時からのメンバーとして森悠子音楽監督のもと研鑽を積む。ルーズベルト大学シカゴ芸術大学音楽院に留学。留学中はシカゴシビックオーケストラに所属、ミルウォーキー交響楽団のサブメンバーとなる等、精力的に合奏を学ぶ。これまでに奥田一夫、林俊武、内藤謙一、ステファン・レスターの各氏に師事。京都フランス音楽アカデミー受講時には奨学生に選出され、シギスヴァルト・クイケン指揮、JOA、フランス・ベルギーツアーに参加。神戸市室内合奏団、いずみシンフォニエッタ大阪メンバー。室内楽、オーケストラ、バロックアンサンブル等で古楽音楽から現代音楽まで広く演奏している。

コントラバス:長谷川順子 Contrabass: Junko Hasegawa

チェンバロ:森岡奈留子 Cembalo: Naruko Morioka 桐朋学園大学でピアノを雨田のぶ子、チェンバロを鍋島元子に師事。卒業後、渡仏し、ユゲット・ドレフュスに師事。スコラカントルム及びパリ国立高等音楽院で学ぶ。パリ国立高等音楽院ではチェンバロをR.V.ラクロワ、通奏低音奏法をL.ブーレイの各氏に、室内楽をC.ラルデに師事。同校でクラヴサン、通奏低音法と室内楽で1等賞を得て卒業。室内楽第三課程も修了。マルメゾン音楽院においてもクラヴサン科の最優秀賞を獲得。パリ国際コンクール、ナント国際コンクール入賞。アングレム国立音楽院とリモージュ国立音楽院で講師を勤める。1988年に帰国後、ソリストや室内楽奏者として、新日本フィルハーモニー交響楽団、K.H.ツェラー、P.マイゼン、C.ラルデらと共演する等、幅広い演奏活動を行なっている。

チェンバロ:森岡奈留子 Cembalo: Naruko Morioka

■曲目解説

武満 徹:3つの映画音楽
 映画音楽の世界でも多くの名作とコラボレートした武満徹(1930-96)が、1994年から翌年にかけて自ら編曲した弦楽合奏のための作品。
 第1曲《ホゼー・トレス》より「訓練と休息の音楽」は、勅使河原宏監督の作品(1959)に寄せられたもの。映画はボクシングの元ライトヘビー級世界チャンピオン、ホゼー・トレスを追ったドキュメンタリーで、この音楽には「ジャジーに、ブルースのように」と但し書きが添えられている。第2曲《黒い雨》より「葬送の音楽」は、井伏鱒二の小説をもとにした今村昌平の名作(1989)のために作曲された。原爆投下の悲惨さを表現した映画に相応しい、重い曲調の哀歌となっている。第3曲《他人の顔》より「ワルツ」は、安部公房の原作・脚本で、勅使河原宏が監督した作品(1966)のための音楽。流麗で、いささか退廃的な雰囲気を醸し出したハ短調のワルツである。

林 光:3つの映画音楽
 合唱曲《原爆小景》や数々の舞台作品で知られる林光(1931-)もまた、映画音楽を多数手がけた作曲家である。今回はそのなかから、瀬戸内海の孤島で暮らす4人の家族を描いた新藤兼人監督の国際的出世作《裸の島》(1960)、福田善之原作・加藤泰監督で、真田十勇士の物語に、学生運動が激しかった時代の空気を取り入れた怪作《真田風雲録》(1963)、心身共に荒みきった青年と純真な温泉場の娘の愛を美しく描いた吉田喜重監督の《秋津温泉》(1962)という3本の映画のための音楽が、作曲者自身による編曲版で演奏される。いずれも1960年代の作品であるが、作曲者にとって映画音楽の仕事がもっとも充実していた時期の作品群と言えよう。

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》
 協奏曲集《和声と創意への試み》op.8は全12曲からなる作品であるが、なかでも第1番から第4番にあたる通称《四季》は、ヴィヴァルディのなかでももっとも著名な音楽。第1番「春」、第2番「夏」、第3番「秋」、第4番「冬」は全て3楽章構成で、ヴァイオリン独奏と通奏低音付きの弦楽合奏により演奏される。
 各楽章にはそれぞれの季節をイメージした短いソネット(作者不明)が付いていて、ヴィヴァルディはその内容を忠実に表現するために、さまざまな技法を採り入れている。具体例を挙げると、「春」の第1楽章最初のヴァイオリン・ソロに現れる「鳥の歌」ではトリルを効果的に用いており、「冬」では寒さで歯の根が合わぬ様をトレモロで、第2楽章では雨がしとしと降る様をピッツィカートで表している。
 この作品が作曲された18世紀前半、ヨーロッパでは啓蒙主義による自然賛美の風潮が強く、《四季》の楽譜に書かれたソネットにも、神などの超自然的な存在はいっさい出てきていない。これは、純然たる自然の描写を主とした当作品の楽想と、切っても切り離せない時代背景と言えるだろう。




主催:東京・春・音楽祭実行委員会

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