HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2011/03/12

作曲家・林光による自作解説:《3つの映画音楽》

林 光:3つの映画音楽
Hikaru Hayashi: Three Film Scores


《裸の島》(新藤兼人監督、1960年、近代映画協会製作)より「裸の島」のテーマ
 新藤監督とは《第五福竜丸》(1958年)につづく二本目の仕事。1961年、第2回モスクワ映画祭でグランプリを受けたとき、音楽もソ連作曲家同盟が出す作曲賞というのをもらった。
 ハープと2挺のギターが奏でる「波」にゆられるフルート3本のユニゾンの旋律という原曲をむりに移しかえるのはやめて、新しい編曲を試みた。

《真田風雲録》(加藤泰監督、1963年、東映京都製作)より「下剋上のブルース」
 前の年に初演された福田善之の同名の舞台劇の映画化で、十曲あまりの劇中歌もそのまま用いられた。
 人をみたら鬼とおもえ/鬼をみたらわれとおもえ/きのうの友はきょうの敵ぞ/きのうの敵もきょうの敵ぞ/またからのぞけば天地はさかさ/にっこり笑って主を刺さん、とはじまる「下剋上のブルース」は、いわば開幕ソング。映画ではミッキー・カーチスがギターを弾きながら歌った。

《秋津温泉》(吉田喜重監督、1962年、松竹製作)より「新子の死」
 ヒロイン新子を演じ、数年後に吉田喜重監督と結婚することになる岡田茉莉子の自伝(「女優岡田茉莉子」文芸春秋社刊)によれば、打ち合わせの際、監督は「音楽を入れる場所は自由に考えてください」作曲家に言ったという。作曲家はおぼえていなかった。
 弦楽合奏で書かれた、主要を各場面のテーマがつなげられたラストシーンの音楽。99パーセント映画のとおりのスコアである。

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