PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭2019

エリーザベト・レオンスカヤ (ピアノ)
~シューベルト・チクルス

2015年の来日公演での感動が記憶に新しい円熟のピアニストによる、6日間のシューベルト・チクルス。ウィーンでも絶賛されたプログラムで、夭折の天才作曲家の心のひだと向き合う、またとない時間をお届けします。

プログラム詳細

2018:04:14:14:00:00

■会場
東京文化会館 小ホール

■出演
ピアノ:エリーザベト・レオンスカヤ


【 I 】2018.4.4 [水]19:00開演(18:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第1番 ホ長調 D157 [試聴]
   I. Allegro ma non troppo
   II. Andante
   III. Menuetto. Allegro vivace
  ピアノ・ソナタ 第4番 イ短調 D537 [試聴]
   I. Allegro ma non troppo
   II. Allegretto quasi andantino
   III. Allegro vivace
  ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 D850 [試聴]
   I. Allegro vivace
   II. Con moto
   III. Scherzo. Allegro vivace
   IV. Rondo. Allegro moderato

 [アンコール]
 シューベルト:4つの即興曲 D899 より 第4曲 変イ長調

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【 II 】2018.4.6 [金]19:00開演(18:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第9番 ロ長調 D575 [試聴]
   I. Allegro ma non troppo
   II. Andante
   III. Scherzo. Allegretto
   IV. Allegro giusto
  ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 D840 [試聴]
   I. Moderato
   II. Andante
  ピアノ・ソナタ 第18番 ト長調 D894 《幻想》 [試聴]
   I. Molto moderato e cantabile
   II. Andante
   III. Menuetto. Allegro moderato
   IV. Allegretto

 [アンコール]
 シューベルト:3つのピアノ曲 D946 より 第1曲 変ホ短調

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【 III 】2018.4.8 [日]11:00開演(10:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調 D279 [試聴]
   I. Allegro moderato
   II. Andante
   III. Menuetto. Allegro vivace
   IV Allegretto D346
  ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664 [試聴]
   I. Allegro moderato
   II. Andante
   III. Allegro
  ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 D845 [試聴]
   I. Moderato
   II. Andante poco mosso
   III. Scherzo. Allegro vivace
   IV. Rondo. Allegro vivace

 [アンコール]
 シューベルト:5つのピアノ曲 D459a より 第3曲 Adagio

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【 IV 】2018.4.10 [火]19:00開演(18:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第5番 変イ長調 D557 [試聴]
   I. Allegro moderato
   II. Andante
   III. Allegro
  ピアノ・ソナタ 第3番 ホ長調 D459 [試聴]
   I. Allegro moderato
   II. Scherzo. Allegro
   III. Adagio
   IV. Scherzo con trio. Allegro
   V. Allegro patetico
  ピアノ・ソナタ 第6番 ホ短調 D566 [試聴]
   I. Moderato
   II. Allegretto
  ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D958 [試聴]
   I. Allegro
   II. Adagio
   III. Menuetto. Allegro
   IV. Allegro

 [アンコール]
 シューベルト:4つの即興曲 D935 より 第2曲 変イ長調

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【 V 】2018.4.12 [木]19:00開演(18:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第7番 変ホ長調 D568 [試聴]
   I. Allegro moderato
   II. Andante molto
   III. Menuetto. Allegretto
   IV. Allegro moderato
  ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 D784 [試聴]
   I. Allegro giusto
   II. Andante
   III. Allegro vivace
  ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959 [試聴]
   I. Allegro
   II. Andantino
   III. Scherzo. Allegro vivace
   IV. Rondo. Allegretto

 [アンコール]
 ピアノ・ソナタ 第6番 ホ短調 D566 より 第2楽章 Allegretto

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【 VI 】2018.4.14 [土]14:00開演(13:30開場)

 シューベルト:
  ピアノ・ソナタ 第11番 へ短調 D625 [試聴]
   I. Allegro
   II. Scherzo. Allegretto
   III. Adagio
   IV. Allegro
  幻想曲 ハ長調 D760 《さすらい人幻想曲》 [試聴]
   I. Allegro con fuoco ma non troppo
   II. Adagio
   III. Presto
   IV. Allegro
  ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960 [試聴]
   I. Molto moderato
   II. Andante sostenuto
   III. Scherzo. Allegro vivace con delicatezza
   IV. Allegro ma non troppo

 [アンコール]
 シューベルト:4つの即興曲 D899 より
  第2曲 変ホ長調
  第3曲 変ト長調

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【試聴について】
[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


~春祭ジャーナル~


チケットについて チケットについて

■チケット料金(税込)

席種 6公演通し券 S席 A席 U-25
料金 ¥30,000 ¥6,200 ¥4,600 ¥1,500

※ 6公演通し券(S席相当)は東京・春・音楽祭チケットサービスのみで取扱い


 ■発売日
  先行発売:2017年11月12日(日)10:00  2017:11:12:10:00:00:2017:11:23:23:59:59
  (先行対象の席種:6公演通し券、S席 A席)

  ※ 先行発売はお電話では11月22日(水)18:00まで、インターネットでは11月23日(木・祝)23:59までの受付となっております。


  一般発売:2017年11月26日(日)10:00
  ※ U-25チケットは、2018年2月9日(金)12:00発売開始
   (公式サイトのみでの取扱い)

チケット予約・購入 チケットれすQ お買い物カゴ トリオ・チケット 25

※ 6公演通し券はチケットれすQおよびトリオ・チケットの対象外です。

■曲目解説

【 I 】

ピアノ・ソナタ 第1番

1815年シューベルトが18歳のときに書いた、記念すべきピアノ・ソナタの初作。若書きとはいえ、すでにシューベルトは交響曲にも弦楽四重奏曲にも着手している。また1815年と言えば、あの有名な「魔王」が書かれた年でもあり、歌曲に関しても創作意欲が高揚していた。自筆原稿では3つの楽章が残されており、第1楽章は健やかな若さがみなぎるアレグロ・マ・ノン・トロッポ。第2楽章は陰影の味わいがあるアンダンテ。第3楽章は繊細なトリオを持つメヌエット。最後の楽章がメヌエットで、しかも主調ではないところから、本曲は未完と見なされている。

ピアノ・ソナタ 第4番

1817年シューベルト20歳のときの作品。この年、7曲のピアノ・ソナタが書かれている(うち2曲は未完成)が、その第1作である。イ短調はシューベルトの好んだ調性でもあり、現存するピアノ・ソナタという名称を持つ21曲(未完成含む)のなかにも、イ短調作品は3曲ある。第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポは、勢いのある打鍵に分散和音が応える第1主題に始まり、休符をはさんで伸びやかな第2主題へと移る。第2楽章アレグレット・クワジ・アンダンティーノは、素朴な歌謡風の旋律。これは調性を変えて、ピアノ・ソナタ第20番の終楽章にも使われている主題旋律である。第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。本曲はこの終楽章が主調(イ短調)となっており、3楽章構成ながらも、完成品と考えられている。

ピアノ・ソナタ 第17番

1825年オーストリアにある保養地バート・ガスタインで完成し、シューベルトの生前1826年にウィーンで出版された。幻の「ガスタイン交響曲」の直後に書かれたとされる、シューベルトの意欲がみなぎった作品で、4楽章構成を採用した、約40分にも及ぶ大曲である。第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェはソナタ形式。第1主題は和音の連打に3連符の連なりが応えるかたち、それに第2主題が軽快なステップを踏んで愛らしい対照をみせる。第2楽章コン・モートにおける独特のリズム展開や、穏やかで切々と心に響く旋律はシューベルトの本領とも言える。第3楽章は生き生きとした長大なスケルツォ。中間部のトリオでは、独特の和声感覚が鳴り響く。ロンド形式の第4楽章は華麗なるフィナーレとは行かず、意表を突いた面白さが用意されている。ちなみに、シューマンはこの楽章に「ひどくおどけたもの」という評価を与えた。

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【 II 】

ピアノ・ソナタ 第9番

1817年シューベルト20歳の年は多作だった。半年ほどのあいだに7曲ものピアノ・ソナタに着手し、5曲が完成した。この第9番はそのなかで最後に書かれたもの。第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポは、リズムの展開に重きを置いた第1主題と、愛らしい第2主題からなる。第2楽章は三部形式のアンダンテ。歌謡調の主題はシューベルトの得意とするところ。第3楽章は舞曲的な性格の強いスケルツォで、中間部のトリオはおっとり流れるような主題になっている。第4楽章アレグロ・ジュストはソナタ形式。元気に跳びはねる第1主題と、優雅なワルツのような第2主題とのコントラストが鮮やかだ。

ピアノ・ソナタ 第15番 《レリーク》

ピアノ・ソナタの初作からちょうど10年目の1825年に書かれた作品。この年は3つのピアノ・ソナタに着手したが、この作品のみ未完である。第3楽章は完成間近、第4楽章は途中で筆が折られている。ユニゾンで奏でられる第1楽章冒頭の美しい主題は、同時期に書かれたピアノ・ソナタ第16番と共通の楽想を持っている。第2主題の切々と歌う抒情も深く心に残る。ベートーヴェン《運命》の動機を想起させる音型が表れるのも特徴的。訥々と語り始められる第2楽章アンダンテは、自由な構成ながらロンドのようなソナタ形式に近い。ここでもオクターブのユニゾンが多用され、旋律美が強調されている。副題の「レリーク(遺品)」は、1861年に楽譜が出版された際、シューベルト最後の作品と誤認されたことによる。ちなみに1839年、シューベルトの遺品のなかから本曲を発見したのはロベルト・シューマンだった。

ピアノ・ソナタ 第18番 《幻想》

1826年に1曲だけ書かれた作品。1827年、本曲は4つの小品として楽譜が出版され、第1曲(第1楽章)は「幻想曲」とされた。それがピアノ・ソナタとして扱われるようになってからも《幻想》という副題で呼ばれる所以である。最晩年の3つのピアノ・ソナタへの扉を開く作品として位置づけられ、シューマンは「最も完璧な作品」と絶賛した。第1楽章モルト・モデラート・エ・カンタービレは、厳かな雰囲気さえ漂う冒頭の第1主題から夢見るシューベルトが全開。そこに軽やかに舞うような第2主題のメロディが現れる。第2楽章アンダンテは、暖かく穏やかな主題で始まり、変奏が加えられてロンド風の形式になっている。第3楽章メヌエットの主部は、メヌエットというより骨太なレントラー調の舞曲に近い。対照的にトリオは、繊細な美しさを放っている。第4楽章アレグレットは明確なロンド形式で、用いられる主題はどこか親しげで懐かしさを感じさせるが、そこに時折、憂愁の影が差す。そして最後に別れを惜しむかのようにその主題が奏でられる。

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【 III 】

ピアノ・ソナタ 第2番

シューベルトは18歳でピアノ・ソナタというジャンルに着手した。本曲が書かれたのは第1番から半年後で、自筆譜には1815年9月の日付がある。未完に終わった第1番を経て、再び挑戦を試みたわけだが、この第2番も(1888年出版の初版譜では)終楽章を欠いており、完成には至らなかったと考えられている。第1楽章アレグロ・モデラートは、勢いのある第1主題にベートーヴェンの影響が感じられる。他方、第2主題はシューベルト本来の優しい旋律である。第2楽章アンダンテは、まるでシューベルトがピアノに向かっている光景が垣間見えるような、訥々とした素朴な響き。第3楽章メヌエットは、舞曲らしからぬ畳みかけるような調子だが、印象的な主題旋律が使われている。なお、今回は第4楽章としてハ長調のアレグレットD346が演奏される。

ピアノ・ソナタ 第13番

この可愛らしいソナタは作曲年代がはっきりしていないが、1819年の作という説が有力である(1825年という説もある)。上部オーストリア・シュタイアの旅先で知った若い娘ヨゼフィーネのために書かれたと言われており、いかにもそれらしい愛情あふれる曲調となっている。同じ調性のピアノ・ソナタ第20番に比して「イ長調の小ソナタ」とも呼ばれている。第1楽章アレグロ・モデラートは、ただひたすら素朴な調べを愛でるように、終始優美な楽想に包まれている。気持ちの高揚はあるものの、ここではシューベルトの厭世的な側面は顔を見せない。第2楽章アンダンテはシンプルな三部形式で、穏やかな調べのなかにも、楚々とした佇まいが感じられる。ソナタ形式の第3楽章アレグロは、軽やかに音階を駆け下りるような第1主題に対し、第2主題は落ち着いた歩調で現れ、展開部では16分音符が駆けめぐり、目まぐるしく転調を繰り返しながら華々しいフィナーレへと至る。

ピアノ・ソナタ 第16番

1825年に書かれた第16番は、中期の傑作と言える。生前に出版された最初のピアノ・ソナタであり、ベートーヴェンのパトロンでもあったルドルフ大公に献呈されているところからも、シューベルトの自信のほどがうかがえる。そして、本曲以降のピアノ・ソナタは4楽章構成となり、全て完成されている。第1楽章モデラートはソナタ形式。第1主題冒頭から洗練の度合いが深まっており、第2主題は軽いタッチの流れるような旋律。主題の変容や転調にも熟達した書法が見られ、最後は堂々たるクライマックスを築く。第2楽章アンダンテ・ポーコ・モッソは、主題と5つの変奏からなり、シューベルトの全ソナタ中唯一の変奏曲楽章である。素朴な主題旋律が味わい深く、変奏をくり返すたびに輝きを増していく。第3楽章スケルツォは、シンコペーションのような動きと強弱のコントラストを生かして後乗りのリズムを作り、素朴な田園調のトリオをはさむ。第4楽章ロンドは、ロンド主題の流れるような8分音符が終始貫かれ、所々にアクセントが加えられる。移り気な心のように長調と短調が軽やかに入れ替わるところがシューベルトらしい。

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【 IV 】

ピアノ・ソナタ 第5番

1817年シューベルト20歳のときの作品。この年には7曲のピアノ・ソナタが書かれているが(うち2曲は未完成)、本曲はその第2作。3楽章構成で、終楽章が主調でないことから、未完もしくは終曲が失われたと考えられている。第1楽章アレグロ・モデラートは、明快かつ単純なソナチネのような曲調。第2楽章アンダンテでは、中間部とのコントラストは描き分けられているが、シューベルト独自の歌謡性は濃厚でなく、あくまでも淡々と進んでいく。第3楽章アレグロは、明るい躍動感のあるロンド形式。主題の下行音階が印象に残る。

ピアノ・ソナタ 第3番

1843年に出版された初版譜では「5つのピアノ曲」となっていたことや、シューベルトには本曲以外に5楽章構成のピアノ・ソナタが存在しないことなど、謎の多い作品である。作曲は1816年。第1楽章アレグロ・モデラートの第1主題は、ベートーヴェンの影響を感じさせる洗練された響き。第2主題は、宝石のような輝きと愛おしさを持つ。第2楽章スケルツォは三部形式。一風変わった導入の仕方で、楽曲自体もユニーク。第3楽章アダージョは、単純さのなかに秘められた心情がほとばしり出るような音楽。第4楽章は、明るく軽快に踊るスケルツォ・コン・トリオ。中間部のトリオは、独特のアンビバレントな雰囲気を漂わせる。第5楽章アレグロ・パテティコは、ユニークな曲想にあふれ、堂々としたフィナーレを形づくる。

ピアノ・ソナタ 第6番

1817年、第5番に次いで書かれたが、未完に終わった。3つの楽章が遺されていた自筆譜は、長らく個人所有となっていたが、その後、紛失している。スケルツォ風の第3楽章は、実演ではカットされることが多い。第1楽章モデラートは、心に訴えかけてくる哀しみの冒頭主題が、しみじみとした詩情へと受け継がれていく。第2楽章アレグレットでは、シューベルトの本領である歌謡性が十二分に発揮されている。

ピアノ・ソナタ 第19番

1828年9月、死のわずか2ヵ月前に書かれた作品。ベートーヴェンのピアノ・ソナタを意識しつつも、シューベルトならではの豊かな和声進行を持ち、作曲家としての矜持が感じられる。第1楽章アレグロは、第1・第2主題ともにベートーヴェンのピアノ作品との類似性が指摘されているが、四分の三という拍子や展開部の音型などに、自身の音楽を追求する姿がうかがえる。第2楽章アダージョは、穏やかな主題で始まるが、自由な転調により遠隔調に至るなど、ロマン派的な楽想を見せている。第3楽章メヌエットは、簡素な主題がオクターブ奏法で奏される。第4楽章アレグロは、シューベルト最晩年の終楽章に特有なロンド・ソナタ形式を採用しており、飛び跳ねるような、流麗かつ生き生きとしたフィナーレとなっている。

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【 V 】

ピアノ・ソナタ 第7番

1817年に作曲されたシューベルト初期のソナタで、変ニ長調のソナタD567に調性変更やメヌエットの追加といった修整を施して、改作したもの。第1楽章アレグロ・モデラートはソナタ形式。冒頭からユニゾンで印象的な第1主題が奏され、第2主題はレントラー風の愛らしい旋律。そこに第3主題が加わることで、より多彩な楽想を呈している。第2楽章アンダンテ・モルトは、愁いを帯びた第1主題をひとしきり歌うと、三連符で刻まれる伴奏にのって第2主題が少しく熱を帯びて現れる。第3楽章は三部形式のメヌエット。冒頭に奏される主題旋律が心に残る。第4楽章アレグロ・モデラートは、ソナタ形式の充実したフィナーレ。生き生きとして可愛らしい第1主題に始まり、第2主題は短調に表情を変えて、それほど激しいコントラストは作らずに、目まぐるしく変わっていく気分のように軽やかに流れていく。

ピアノ・ソナタ 第14番

1823年2月に書かれた作品。以前のソナタに比べると、より深く己の内面へと視線が向けられている。第1楽章アレグロ・ジュストは、何か恐ろしいことが始まりそうな予感さえする暗鬱な第1主題から、重厚な和声による第2主題へと受け継がれ、両主題のコントラストが緊張をはらんだ劇的な効果を生んでいる。第2楽章アンダンテは、シューベルトらしい歌謡とはひと味違った叙情を歌う主題に、ソルディーニ(弱く)と記された短い付随動機が付けられている。第3楽章アレグロ・ヴィヴァーチェはロンド・ソナタ形式。第1主題は冒頭から疾走する3連符が切迫した気持ちを畳みかけ、その気分を解きほぐすかのように第2主題は長調に変わって抒情的な旋律を奏でる。最後は主調であるイ短調のコーダで締めくくる。

ピアノ・ソナタ 第20番

第19番、第20番、第21番という3つのピアノ・ソナタは1828年9月、死のわずか2ヵ月前に作曲された。敬愛するベートーヴェンの作品を意識しつつも、シューベルトならではの豊かな旋律と和声進行を備え、最晩年の作品において際立つ雄大なスケールとシンフォニックな響きを獲得している。本曲は、前作にあたるハ短調の第19番とは対照的に、暖かく明朗な響きを有していると同時に、その長大さゆえに、同じ調性のピアノ・ソナタ第13番に比して「イ長調の大ソナタ」とも呼ばれる。第1楽章は明るく力強い導入部を持つが、中間部では平明なメロディが用いられている。物静かな主題で始まる第2楽章は、速いパッセージが絡み合いながら情熱的に展開する中間部を経て、最後の鈍い後打音が不思議な余韻を残す。第3楽章のスケルツォでは右手・左手の交差により、快活な旋律が奏される。第4楽章は、ピアノ・ソナタ第4番の緩徐楽章の主題を引用したロンド・ソナタ形式で、最後はテンポをあげて華やかに曲を閉じる。

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【 VI 】

ピアノ・ソナタ 第11番

1818年に書かれた未完の作品で、作曲が完了したのは第2楽章スケルツォのみと考えられている。第1楽章アレグロは、特に表情豊かな第2主題が印象的で、美しい3連符が心に残る。第2楽章スケルツォは、充実した和音の響きに3連符のリズムが軽やかな動きをみせる。なお、本曲は緩徐楽章を欠いた3楽章の作品として取りあげられることも多いが、今回は第3楽章に変ニ長調のアダージョD505を充てて演奏される。第4楽章アレグロは、ショパンを思わせる楽想で始まり、やがてシューベルトらしい穏やかな第2主題へと緊張がほどけていく。スケールの大きさを感じさせる楽章である。

《さすらい人幻想曲》

1822年の作品で、シューベルトの他のピアノ・ソナタ作品とは形式・内容の面で全く異なるピアノ独奏曲である。副題にある「さすらい人」は、第2楽章の主題が、若き日に書かれた歌曲「さすらい人」(D493)の一部から採られていることに由来するが、他の楽章においてもこの旋律に関連したリズムが用いられるなど、全体がひとつの動機によって有機的にまとめられている。速度表示の別から一応4楽章構成とされているが、楽章間に休止はなく、続けて演奏される。第1楽章は、冒頭の豊饒な和音による第1主題のリズムが楽曲を束ねる素材となる。続いて現れる第2主題も同じ動機によるもので、再現部を欠いたソナタ形式とも言える。第2楽章では「さすらい人」の旋律を主題として5つの変奏が行なわれる。第3楽章は、躍動感に満ちたスケルツォにあたる楽章で、トリオの部分では穏やかな優しさが垣間見える。第4楽章は、第1楽章の冒頭主題と密接に関連した重厚なフーガで始まり、やがて目眩めくヴィルトゥオージティあふれるフィナーレへと突入していく。

ピアノ・ソナタ 第21番

1828年9月シューベルトの死のわずか2ヵ月前に作曲された三部作の掉尾を飾る、生涯最後のピアノ・ソナタである。第1楽章モルト・モデラートは、優しく親しみやすい第1主題で歩み出し、くぐもるようなトリルの後、変ト長調の印象的な主題が浮かび上がってくる。続いて穏やかな第2主題が始まり、自由な転調を経てへ長調のコデッタ(小結尾)に至るが、牧歌的な平穏を断ち切るように低音のトリルが現れ、提示部が静かな力強さで反復される。展開部は嬰ハ短調で開始されるが、複雑な転調をともなって現れる様々な音型が陰影に満ちた幻想的な世界を形づくる。第2楽章のアンダンテ・ソステヌートは、穏やかな抒情に彩られており、中間部では明るく暖かな響きを聴くことができる。第3楽章スケルツォは、快活なテンポで優美な主題を奏でながら、トリオでは一転して変ロ短調に転調する。第4楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポは、提示部を繰り返さないソナタ形式で、冒頭および随所で強奏されるG音が耳に残る。途中、少々性急なテンポを保って複雑な転調を重ねながら、最後はプレストで短く締めくくる。長きにわたる模索を経てシューベルト固有の様式というべきものが結晶化した本作は、彼の全ピアノ・ソナタにおける最高傑作と言えるだろう。

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主催:東京・春・音楽祭実行委員会


※掲載の曲目は当日の演奏順とは異なる可能性がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※やむを得ぬ事情により内容に変更が生じる可能性がございますが、出演者・曲目変更による払い戻しは致しませんので、あらかじめご了承願います。
※チケット金額はすべて消費税込みの価格を表示しています。
※ネットオークションなどによるチケットの転売はお断りいたします。

(2018/04/13更新)

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