PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014-

ミュージアム・コンサート「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」展 記念コンサート
vol.2 カロが描いたハーディ・ガーディ、そしてミュゼットを聴く
~17・18世紀フランス音楽のディヴェルティスマン(気晴らし)

プログラム詳細

2014:04:09:14:00:00

© 青柳 聡
■日時・会場
2014.4.9 [水] 11:00開演(10:30開場)/14:00開演(13:30開場)[各回約60分]
国立西洋美術館 講堂

■出演
ハーディ・ガーディ、バロックミュゼット:上尾直毅
チェンバロ:戸﨑廣乃
お話:中田明日佳(国立西洋美術館 研究員)
※当初発表の出演者より変更になりました

■曲目
ボルジョン・ド・セレリ:《ミュゼット概論》より
 ブランル ト調、エアとブランル ハ調
オトテール(ル・ロマン):《ミュゼットのためのメソード》op.10 より
 メヌエット、竜騎兵の行進曲、コントラダンス「ファラオ」、カプリス 
作者不詳(スザート編):ベルジュレット・サン・ロッシュ
作者不詳:メヌエット(《ヴィエール(ハーディ・ガーディ)のためのメソード》より)
J.オトテール:《ミュゼットのための小品集》より
 前奏曲、序曲、サラバンド、行進曲
シェドヴィル:ソナタ 第2番 ハ長調(《忠実な羊飼い》op.13より)

~「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」~

出演者

ハーディ・ガーディ、バロックミュゼット:上尾直毅 Naoki Ueo 東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を1991年に卒業。在学時ピアノを辛島輝治氏、チェンバロを山田貢、鈴木雅明、渡邊順生の各氏に師事。1992年第6回古楽コンクールで「通奏低音賞」を受賞。オランダにてチェンバロをグスタフ・レオンハルト、アンネッケ・アウテンボッシュ、フォルテピアノをスタンリー・ホーホランド各氏に師事しソリストディプロマを得て卒業。▼続きを見る オランダではデン・ハーグ王立音楽院古楽器科の伴奏員、オランダ室内管弦楽団のチェンバロ奏者などを勤めた。
現在、日本国内を中心に鍵盤楽器奏者、および18世紀フランス宮廷バグパイプ「ミュゼット」奏者としてCD録音や数々のコンサートで活躍している。近年は特にクラヴィコードの演奏にも力を注いでいる。2010年に発売されたフォルテピアノによるCD『ベートーヴェン61鍵の時代』は「レコード芸術」誌において「特選盤」「優秀録音」に選ばれた。 ソリストとしてのみではなく、「レ・ボレアード」(指揮:寺神戸亮)、「オーケストラ・リベラ・クラシカ」(指揮:鈴木秀美)、声楽アンサンブル「ラ・フォンテヴェルデ」などのオーケストラやアンサンブルでの通奏低音奏者としても高い評価を得ている。桐朋学園大学音楽学部講師。 ▲プロフィールを閉じる

ハーディ・ガーディ、バロックミュゼット:上尾直毅 Naoki Ueo

チェンバロ:戸﨑廣乃 Hirono Tozaki 上野学園大学卒業。同大学専攻科修了。英国王立音楽大学に留学。ソリスト・ディプロマを取得し卒業。在学中、チェンバロ最優秀賞及び数々の賞を得る。ドイツ国立ケルン音楽大学にて最高栄誉賞付芸術家ディプロマを取得。2000年、国家演奏家資格を取得し活動の拠点を日本へ移す。チェンバロを渡邊順生、ロバート・ウーリー、ケティル・ハウグサン、スキップ・センペ、▼続きを見る オルガンを廣野嗣雄、小林英之の各氏に師事。日本各地でのソロリサイタルに加え、御前演奏会(赤坂御所)出演。これまでにバッハ・コレギウム・ジャパン、チェコ・フィル八重奏団、ロンドン室内管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、静岡交響楽団と共演。各地音楽祭等に出演。ムジカ・パシフィカJPN主宰。ソロCD『アルマンド』をリリース。ソリスト及び通奏低音奏者としてイギリス、ドイツ、フランス、ブルガリア等、国内外において広く活躍。2011年7月、ロンドンにおける東日本大震災復興支援演奏会に出演。「平成21年度静岡市芸術文化奨励賞」受賞。上野学園大学、名古屋芸術大学講師。 ▲プロフィールを閉じる

チェンバロ:戸﨑廣乃 Hirono Tozaki

■曲目解説

解説:上尾直毅

 今回の演奏会で使われるバグパイプは、ルネサンス・バグパイプとバロック・ミュゼットである。
 バグパイプは「Bag(袋)」を備える「Pipe(管楽器)」ということで、ある一種類のタイプの楽器を示す言葉ではなく、「袋を持つ管楽器」全般に使われる言葉である。
 スコットランドの民族楽器であるグレート・ハイランド・バグパイプが特に有名であるが、この大音量のバグパイプもバグパイプの一種類であるにすぎない。
 ドローン系の楽器のほとんどが民族音楽で使われているが、今回この演奏会で演奏するバロック・ミュゼットは、クラシック音楽で使われる唯一のバグパイプである。
 17世紀中頃に従来のバグパイプを改造し、口で空気を送り込む代わりに、腰に結わえた「ふいご」で空気を送る機能を持つようになったこのバグパイプは、18世紀に入るとフランスで大流行し、ソナタや二重奏、協奏曲に至るまで多くの作品が作曲された。
 ボルジョンのエアやブランルはリヨンで1672年に出版された《ミュゼット概論》の中に収められている。この本が出版された半世紀以上も後、1737年にはより一層実践的な教則本が「ローマの」オトテールによって出版される。メヌエット、「竜騎兵の行進曲」、コントラダンス「ファラオ」、カプリスは、作品10として出版されたオトテールの《ミュゼットのためのメソード》に収められている。
 18世紀フランスでのバロック・ミュゼットの大流行は、同じドローン楽器であるハーディ・ガーディへの人気も促した。ハーディ・ガーディのためのメソードも出版され、その中から小さなメヌエットを採り上げた。
 「ローマの」オトテールによって1722年に出版された、彼の早世した兄弟ジャン・オトテールによる《ミュゼットのための小品集》は、この楽器の田園風(パストラル)のイメージがよく表された作品である。
 バロック・ミュゼットはドローンを持つことから、様々な調性に対応することが困難であるにもかかわらず、18世紀半ばになると他の旋律楽器と同様に「ソナタ」と題される作品が多数作曲されるようになる。
 N.シェドヴィルのソナタ集《忠実な羊飼い》は、初版のタイトルにA.ヴィヴァルディが作曲したと明記されていたことから、長らくヴィヴァルディの作品だと考えられてきたが、近年はミュゼットの名人であったシェドヴィルが、当時パリでヴィヴァルディの作品として知られていた曲の一部を使ったり、自作を織り交ぜて、作曲出版した作品集であることが判明している。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:国立西洋美術館
協力:上野学園大学/日東紡音響エンジニアリング株式会社

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