PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014-

ミュージアム・コンサート「ジャック・カローリアリズムと奇想の劇場」展 記念コンサート
vol.1 花ひらく調べ
~メディチ家統治下のフィレンツェゆかりの音楽

プログラム詳細

2014:04:08:14:00:00

© 青柳 聡
■日時・会場
2014.4.8 [火] 11:00開演(10:30開場)/14:00開演(13:30開場)[各回約60分]
国立西洋美術館 講堂

■出演
リコーダー:太田光子
チェンバロ:戸﨑廣乃
ヴィオラ・ダ・ガンバ:櫻井 茂
お話:中田明日佳(国立西洋美術館 研究員)

■曲目
フレスコバルディ:カンツォン 第19番「ラ・カプリオラ」
ウッチェッリーニ:シンフォニア 第1番「アマリッリ」
フィリップス:ローマ人ジュリオ(・カッチーニ)によるアマリッリ
(《フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック》より)
ガリレイ:サルタレッロ
フレスコバルディ:カンツォン 第2番「ラ・ベルナルディーナ」
ファルコニエーリ:
 ラ・クエッラ
 甘き旋律
 メーロのブランド
 アウエッリーナ(《コレンテ集》より)
デ・ローレ:「何度も別れたい」の主題によるディミニューション
ヴィヴィアーニ:ソナタ 第2番
[アンコール]
ガリレイ:サルタレッロ


~「ジャック・カローリアリズムと奇想の劇場」~

出演者

リコーダー:太田光子 Mitsuko Ota 上野学園大学卒業、ミラノ市立音楽院をディプロマを得て卒業。第16回国際古楽コンクール<山梨>第一位受賞。現在各地で活発なコンサート活動を行う。故G.ボッセの指揮のもと神戸市室内合奏団、名古屋フィルハーモニー交響楽団に客演、H.リリング指揮シュトゥットガルト・バッハ・コレギウムに参加。イタリアの“Arcomelo”にソリストとして参加、▼続きを見る 表現力と高度なテクニックにおいて高い評価を得て、イタリアのレーベル「ラ・ボッテガ・ディスカンティカ」よりCD『ヴィヴァルディ/リコーダー協奏曲集』を2013年にリリース、レコード芸術誌にて特選盤に選出。音楽の友誌「35人の音楽評論家・音楽記者が選んだコンサートベストテン」に、ソロ・リサイタル「リコーダーの飛翔~Il volo del flauto」がノミネート。CDに『イタリアへの夢』(コジマ録音/レコード芸術誌特選盤)、『イタリアへの夢 II』(コジマ録音/レコード芸術誌特選盤、2011年度第49回レコード・アカデミー賞ノミネート)等がある。キングレコードよりソロアルバム『グリーンスリーブス~笛の楽園』をリリース(全国電気事業連合会TV-CM曲、エバラ食品「韓国風鍋シリーズ」TV-CM曲)、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」「小堺一機のサタデー・ウィズ」等にゲスト出演カール・ジェンキンス指揮「アディエマス」にソリストとして参加、青葉台東急スクエア春のキャンペーン・イメージキャラクター、CS放送(スカパー)ベネッセチャンネル「実践!プロが教える実技教科・音楽」に講師として出演等、さまざまなアプローチによるリコーダーの普及活動にも努めている。現在上野学園大学講師。 ▲プロフィールを閉じる

リコーダー:太田光子 Mitsuko Ota

チェンバロ:戸﨑廣乃 Hirono Tozaki 上野学園大学卒業。同大学専攻科修了。英国王立音楽大学に留学。ソリスト・ディプロマを取得し卒業。在学中、チェンバロ最優秀賞及び数々の賞を得る。ドイツ国立ケルン音楽大学にて最高栄誉賞付芸術家ディプロマを取得。2000年、国家演奏家資格を取得し活動の拠点を日本へ移す。チェンバロを渡邊順生、ロバート・ウーリー、ケティル・ハウグサン、スキップ・センペ、▼続きを見る オルガンを廣野嗣雄、小林英之の各氏に師事。日本各地でのソロリサイタルに加え、御前演奏会(赤坂御所)出演。これまでにバッハ・コレギウム・ジャパン、チェコ・フィル八重奏団、ロンドン室内管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、静岡交響楽団と共演。各地音楽祭等に出演。ムジカ・パシフィカJPN主宰。ソロCD『アルマンド』をリリース。ソリスト及び通奏低音奏者としてイギリス、ドイツ、フランス、ブルガリア等、国内外において広く活躍。2011年7月、ロンドンにおける東日本大震災復興支援演奏会に出演。「平成21年度静岡市芸術文化奨励賞」受賞。上野学園大学、名古屋芸術大学講師。 ▲プロフィールを閉じる

チェンバロ:戸﨑廣乃 Hirono Tozaki

ヴィオラ・ダ・ガンバ:櫻井 茂 Shigeru Sakurai 学習院大学及び東京藝術大学卒業。コントラバスを江口朝彦、ヴィオラ・ダ・ガンバを大橋敏成、ローレンス・ドレイフュスの各氏に師事。東京藝術大学バッハカンタータクラブにおいて小林道夫氏の薫陶を受ける。独奏者として国内各地、ヨーロッパ、アメリカ、韓国等で活動。東京藝術大学及び高知大学講師を経て、上野学園大学准教授。延世大学(ソウル)音楽研究所古楽専門課程特別招聘教授。

ヴィオラ・ダ・ガンバ:櫻井 茂 Shigeru Sakurai

■曲目解説

解説:太田光子(リコーダー奏者)

 ジャック・カロが若き頃滞在していたフィレンツェ。そこは芸術が花ひらいた都市でした。ルネサンス期より同地を統治し、トスカーナ大公となっていったメディチ家は、フィレンツェの活発な芸術活動を支えていました。多くの芸術家のパトロンとなり、その財力を生かして芸術家の活動を支援していました。トスカーナ地方の政治のみならず、この地で栄えた文化になくてはならない存在、それがメディチ家です。
 カンツォーナ第2番「ラ・ベルナルディーナ」、カンツォーナ第19番「ラ・カプリオーラ」を含む、「器楽合奏用カンツォーナ集」が出版された1628年、ジローラモ・フレスコバルディはローマを訪れた若きトスカーナ大公、フェルディナンド・デ・メディチ2世に会ったと思われます。そして同年よりフィレンツェに居を移し、メディチ家の宮廷オルガニストとして活躍しました。
 メディチ家宮廷の有力な地位にあった、ジュリオ・カッチーニの最も有名な作品「麗しのアマリッリ」は、現在でも「イタリア歌曲集」の第1曲に置かれていることで大変有名です。当時も各地の音楽家たちに大きな影響を与え、「アマリッリ」をもとにした曲が多く作曲されました。本日演奏するマルコ・ウッチェッリーニ作曲のシンフォニア第1番「アマリッリ」では、「アマリッリ」の冒頭のメロディを核に曲が展開されていきます。一方、イギリスの作曲家ピーター・フィリップスによる「ローマ人ジュリオによるアマリッリ」は、原曲の旋律をもとに、さらに入り組んだ和声や装飾音をふんだんに使った鍵盤楽器用のソロ曲として、より色彩豊かに仕上げられています。
 メディチ家の支援は、芸術、音楽にとどまりません。かの有名な物理学者、天文学者であるガリレオ・ガリレイのパトロンとして、彼の研究のために資金を出していました。ガリレオの父親は音楽家として当時フィレンツェで活躍していたヴィンチェンツォ・ガリレイです。リュート・ソロのための「サルタレッロ」を、本日はチェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リコーダーによるアレンジでお聴きいただきます。
 アンドレア・ファルコニエーリの人生を紐解く時、主にナポリやパルマ等で活躍した音楽家であったことが分かりますが、フィレンツェにてメディチ家の結婚式に参加したり、一部の作品をメディチ家に献呈したりする等、メディチ家との関連をうかがわせるエピソードを複数持っています。彼が1650年にナポリで出版した器楽曲集には、コッレンテを含む舞曲が多く収められています。当時の「コレンテ」は、定型のステップと即興的な部分とで構成された、大変陽気な性格を持つ求愛の踊りでした。
 ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の楽長となったチプリアーノ・デ・ローレは、パルマ公妃となるカール1世の娘マルゲリータがアレッサンドロ・デ・メディチと結婚する以前、彼女に仕えていたようです。ローレの作品は対位法、旋律の作り方、和声において大変優れており、特にマドリガーレにおける言葉の特徴を生かした手法は、当時の音楽家たちの賞賛の的でした。先述のヴィンチェンツォ・ガリレイも論文のなかでローレの対位法の技法を絶賛しています。本日は彼の代表的なマドリガーレ「何度も別れたい」にもとづいた、演奏者自身によるディミニューション(装飾的変奏)をお聴きいただきます。
 トスカーナ地方アレッツォ出身でメディチ家の庇護を受けていたアントニオ・チェスティは、フィレンツェ生まれのジョヴァンニ・ブオナヴェントゥーラ・ヴィヴィアーニに多大な影響を与えました。ヴィヴィアーニは、共にインスブルックにて宮廷音楽家として活躍していた頃、オペラの大家として名を馳せるチェスティに師事していたと見られています。1678年に出版された彼の作曲集にあるソナタ第2番は、自由でドラマチックな展開を見せ、まるでオペラのいくつかのシーンとその劇的な場面転換を感じさせる作風に仕上がっています。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:国立西洋美術館
協力:上野学園大学/日東紡音響エンジニアリング株式会社

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