HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2014/03/14

アーティスト・インタビュー
~山田武彦(ピアノ)

バンドネオン奏者・三浦一馬さんとの共演、そしてミュージアム・コンサート「ピアノ音楽紀行~パリ」にてリサイタルを開催する山田武彦さんに、お話を伺いました。


ミュージアム・コンサート ピアノ音楽紀行~パリ 山田武彦■
ミュージアム・コンサート 三浦一馬 バンドネオン・リサイタル■
clm_takehikoyamada.png clm_q.png  リサイタルではバラエティに富んだプログラムが並んでいますね。聴きどころを教えてください。
僕にとってパリは東京のような街という印象で、今も昔も都会というイメージがあります。古くから多民族が行き来していて人が多く、色んなところから文化や情報が集まる場所。そのバラエティに富んだいろいろなものがあるよ、というプログラムをお届けしたいと思っています。
最初の2曲は17世紀後半から18世紀のフランスを感じていただけるような作品です。都心から少しはずれると田園風景が広がり、週末になれば郊外の公園へ遊びに行く、そんなイメージが前半の始まりです。またこの時代は料理をふるまう際にその日しか聴けない即興的な音楽でおもてなしをしていました。この頃の前奏曲は「次の調はこれで始めますよ」と伝える、まさに前奏の役割をしていたこともあり、1曲目の「前奏曲」を2曲目の「かっこう」と同じ調で演奏するという、僕なりのこの日だけのおもてなしをしたいと考えています。
次はロマン派と言われる時代の作品。この頃のパリは少し問題を抱えていました。ヴァルス(ワルツ)のように華やかできらびやかな作品はお客さんに喜ばれるのですが、それだけではなくちょっとした威厳や誇れる何かを創らなくてはならない。流行という勢いに左右され忘れられてしまうものではなくきちんと残っていく作品を、フランクやフォーレという作曲家たちが苦労して創っていきますが、その2面性をきらびやかなフォーレのワルツとフランクの厳かな作品で表そうと思います。

clm_q.png  後半は20世紀以降の作品が並び、前半とイメージが変わりますね。
ドビュッシーの「牧神の午後のための前奏曲」はピアノ曲ではありませんが、フランスが全世界へ向けて発信する新しい世界への扉を開いた作品です。今までと違ったことをやるということは、映画を創ったり飛行機を飛ばしたり、新しい技術で自己主張をする人たちを含めて、人に理解してもらうには共通点を見いださないと独りよがりになってしまいます。私はこう考えていると言っても、ほかの誰も考えていないと何も伝わらない。僕にとってドビュッシーはそれを果敢に挑んだところが魅力だと考えているので、前半と後半の違いをお聴き頂けたらと思っています。それと「喜びの島」は同じ音で始まりますが全然異なる作品なので、その違いも面白いと思います。
メシアンの「喜びの聖霊のまなざし」は《幼子イエスにそそぐ20のまなざし》の10曲目にあたり、非常にパワフルで壮大な、一種の宇宙をつくるような表現というのでしょうか。また前半最後のフランクとメシアンはともにオルガニストで、オルガンの音楽には、宗教的で人間の想像を超える壮大なものを強く感じることがあるのです。それを表現できたらと思っています。
メシアンで終わろうと思いましたが、もう一つ最後にクラシックではなくピアノ作品ではない、歌の作品を演奏します。ジャズバラードのちょっと懐かしい感じのする音楽です。作品自体は反戦をうたったメッセージ性のある作品ですが、その音楽の主張や表現ということだけではなく作品の持っている美しさに触れられたらいいなと思います。

clm_q.png  聴きごたえのある2時間ですね。
こういった音楽祭ではいろいろなお客さんがいらっしゃると思うんです。音楽に詳しい人もそうでない人も。そんなに詳しくない、という人にとっては「もっと知っている作曲家やメロディがあったらいいのに」と思われるかもしれません。例えば今日はパスタを食べたいからあの店に行く、と思って行ったお店で自分の食べたことのないメニューがあったら興味が出て来るんです。音楽でも知っている曲を目的に足を運んで知らない曲を聴いたときに、出会いだと思って頂ければいいなと思います。

clm_q.png  ありがとうございます。 そして、三浦さんとの共演では、世界初演の作品があるとか。
三浦さんと最初に共演したのは、映画音楽の巨匠ニーノ・ロータの作品をアンサンブルで演奏するという企画のコンサートでした。編成が特殊だったので楽譜がなく、みんなで持ち寄ってアレンジして演奏したのですが、三浦さんはタンゴの世界にとどまらず、何か新しいものをつくることにとても熱心に取り組んでいました。これから先、三浦さんのオリジナルがどんどん生まれていくんだろうとすごくワクワクしているんです。本人は「オリジナルはまだまだ」と言うので、ある時「じゃあ、『東京』『春』というのをキーワードにそれぞれ作って発表したら面白いんじゃない?」と言ったら本当にやることになってしまい(笑)、今回作って発表するということになったんです。

clm_q.png  作品はもう出来ているのですか?
これからです。東京の、桜の咲いている様子だったり、夜桜だったり。春の少し緩んだ空気や匂い、そして東京らしいネオンやスカイツリー、そんなアイテムも取り入れて作りたいと思っています。出来上がりは当日のお楽しみです。

clm_q.png  最後にメッセージをお願いします。
音楽祭全体を楽しんでいただきたいですね。
この2つの演奏会はどちらもこの日にしか聴けないプログラム、この場所でしか聴けない演奏を心がけていますので、いらしていただいたらそれはとてもラッキーです!


~出演公演~

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